主役を操り歴史を動かす、古代から江戸までナンバー2の列伝

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『ナンバー2の日本史』|榎本秋|MdN新書

ナンバー2の日本史作家で文芸評論家、出版プロデューサーの榎本秋(えのもとあき)さんの歴史読み物、『ナンバー2の日本史』(MdN新書)を紹介します。

本書は、歴代の征夷大将軍、つまりナンバーワンを追いかけた本『将軍の日本史』の姉妹篇です。ナンバーワンとナンバー2では、同じ出来事でも見え方が違います。

古代・卑弥呼の時代から平安、鎌倉、室町、戦国、江戸時代まで、歴代の政治的ナンバー2を取り上げていくことで、日本史を概観できる、歴史入門書です。

軍師、側近、参謀、侍従、大番頭、黒幕、フィクサー、腹心、右腕、切れ者、懐刀、股肱の臣……。ナンバーワンを陰で支えるナンバー2の存在。
しかしながら、日本の歴史において、二番手が真のトップであることも多い。摂政、関白、執権、管領、老中、あるいは副将軍。
日本史の様々な場面で活躍するナンバー2とは何者か? 彼らはけっして影の存在ではない。

(『ナンバー2の日本史』カバー帯の紹介より)

新しいものがつくられていく創業の時代や、社会のあり方が大きく変わったり、動乱が続いたりする時代には、強力なリーダーシップを持つナンバーワンが活躍します。

しかし、組織や政治体制が安定してくると、権威と実権を兼ね備えたナンバーワンは敬遠され、「ナンバーワンは強力な権威を持つけれど、自らは政治をしない」というタイプが歓迎され、政治の実権はナンバー2に委ねられます。

朝廷における摂政、関白や鎌倉幕府の執権、室町幕府の管領、江戸幕府の老中などがこれに当たります。

 創業の時代にはありがちなことだが、鎌倉時代の黎明期、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝の時代には明確なナンバー2が特に見あたらない。

(『ナンバー2の日本史』P.96より)

頼朝が倒れて、源頼家が二代将軍に就くと、まだ若く能力も実績もない将軍を助け、幕政の舵取りを担うナンバー2をめぐる激しい暗闘・政変が繰り広げらました。有力武士たちが次々に滅ぼされ、ついには頼家までも滅ぼされてしまいます。

この戦いに勝ち残ったのが北条氏で、頼朝の舅・時政が頼家の弟・実朝を三代将軍に据え、自らは「執権」の地位に就き、幕府の実権を握りました。

鎌倉時代のナンバー2の地位は、以後、北条家の世襲となります。

 とはいえ、執権も最初に政権を掌握した義時やその子・泰時の時代は、その権力も絶対的なものではなく、合議的な性格の強いものだったことは見逃してはならない。これがやがて時頼の時代以降、北条氏本家・得宗家のもとへ権力が集中するようになり、ついには「得宗家が執権をやめた後も権力を持ち続ける」ことになった。権力の主体が執権ではなく得宗になったわけで、得宗専制政治と呼ぶ由縁だ。

(『ナンバー2の日本史』P.143より)

北条本家を得宗家と言いますが、鎌倉末期になると、得宗が将軍のように強力な権威を有し、ある意味ナンバーワンのような存在になりました。そうなると、北条家のナンバー2として、執事の長崎円喜・高資親子が権力を独占し、得宗の高時は将軍のごとき傀儡となってしまいます。
歴史のメカニズムが働いているように思われます。

本書で、各時代のナンバー2のことを知り、その人物像を把握することは、歴史時代小説を読書の際に大いに役立ちます。

ナンバー2の日本史

榎本秋
発行:エムディエヌコーポレーション MdN新書
発売:インプレス
2022年4月11日初版第1刷発行

Book belt design:tokyo synergetics
帯画像 国立国会図書館(『前賢故実』より)/国文学研究資料館(『豊臣昇雲録』より)

●目次
はじめに
第一章 大王・天皇の補佐役
〈一〉卑弥呼の弟
〈二〉神功皇后
〈三〉武内宿禰
〈四〉聖徳太子
〈五〉蘇我馬子
〈六〉藤原鎌足
〈七〉藤原不比等
〈八〉長屋王
〈九〉藤原四兄弟
〈十〉橘諸兄
(十一)藤原仲麻呂
(十二)道鏡

第二章 摂関政治と院政期のナンバー2
〈一〉藤原百川
〈二〉藤原良房
〈三〉藤原基経
〈四〉菅原道真
〈五〉藤原時平
(六)藤原忠平
(七)藤原実頼と藤原師輔
(八)藤原兼通と藤原兼家
(九)藤原道隆と藤原道兼
(十)藤原道長
(十一)藤原頼通
院政の始まりと藤原摂関家

第三章 鎌倉幕府は執権のものか
強力なナンバーワン・頼朝の時代
〈一〉北条時政
〈二〉北条義時
〈三〉北条泰時
〈四〉北条経時
〈五〉北条時頼
〈六〉北条時宗
〈七〉北条貞時
〈八〉北条高時
権力が移り変わった鎌倉時代

第四章 室町幕府、持ち回りの管領
〈一〉足利直義
〈二〉高師直
〈三〉細川清氏
〈四〉斯波高経
〈五〉細川頼之
(六)斯波義将
(七)細川頼元
(八)三管領家の成立
(九)畠山満家
(十)足利氏満と足利満兼
(十一)足利持氏
(十二)細川持之
(十三)畠山持国と伊勢貞親
(十四)細川勝元
(十五)足利成氏
(十六)足利政知
(二二)三好長慶
(二三)三好三人衆
(二十四)織田信長
不安定な時代のナンバー2

間章 戦国大名とナンバー2
戦国大名とナンバー2
(一)武田信繁
(二)豊臣秀長
(三)朝倉宗滴
(四)島津四兄弟
幼少から共に過ごした側近
(五)片倉景綱
(六)島左近
(七)直江兼続
(八)鍋島直茂
大名のブレーンといえば僧侶
(九)太原雪斎
天下人にナンバー2はいたか
(十)明智光秀
(十一)石田三成
(十二)徳川家康

第五章 巨大官僚組織・江戸幕府の舵を取った幕閣
江戸時代の始まり
〈一〉本多正純と土井利勝
〈二〉酒井忠勝
〈三〉松平信綱
〈四〉徳川光圀
〈五〉保科正之
〈六〉酒井忠清
(七)堀田正俊
(八)牧野成貞と柳沢吉保
(九)間部詮房
(十)新井白石
門閥譜代も子飼いも活用した吉宗の政治センス
(十一)水野忠之と松平乗邑
(十二)大岡忠相
(十三)大岡忠光
(十四)田沼意次
(十五)松平定信
(十六)寛政の遺老と水野忠成
(十七)水野忠邦
(十八)阿部正弘
(十九)堀田正睦
(二十)井伊直弼
(二一)安藤信正と久世広周
(二二)一橋慶喜と松平慶永
(二三)慶喜の側近たち
江戸時代のナンバー2それぞれ

おわりに
参考文献

本文287ページ

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『ナンバー2の日本史』(榎本秋・MdN新書)
『将軍の日本史』(榎本秋・MdN新書)

榎本秋|歴史読み物リスト
榎本秋|えのもとあき(福原俊彦)|作家・文芸評論家・出版プロデューサー1977年、東京都生まれ。書店員、編集者を経て、作家事務所・榎本事務所を設立。2014年より、福原俊彦名義で時代小説を発表する。■時代小説SHOW 投稿記事明治維新の原動...