2023年時代小説ベスト10【文庫書き下ろし部門】

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時代小説ベスト10【文庫書き下ろし部門】

2023年おすすめの時代小説ベスト10(文庫)

「時代小説SHOW」による、2023年時代小説ベスト10【文庫書き下ろし部門】を発表します。

対象は、Amazonでの発売日もしくは奥付表記が2022年11月1日から2023年10月31日発行の時代小説作品(シリーズ)で、文庫書き下ろし(文庫オリジナル)作品になります。単行本の文庫化は対象外です。

2023年も多くの素晴らしい時代小説が発行されました。
直木賞でも永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』、垣根涼介さんの『極楽征夷大将軍』と時代小説作品が受賞し、時代小説に広く注目が集まっています。

が、一方で、本を取り巻く環境はますます厳しくなり、時代小説の中心読者層も高年齢化による読者人口の減少が課題になっています。
今回のベスト10は、時代小説の新しい読者の獲得という視点も入れて選んでいます。

1位 「北の御番所 反骨日録」シリーズ
北の御番所 反骨日録【六】-冬の縁談 (双葉文庫)

芝村凉也(しばむらりょうや)
双葉社・双葉文庫

対象期間中の作品は『(六)冬の縁談』(2022年12月刊)、『(七)辻斬り顚末』(2023年4月刊)、『(八)捕り違え』(2023年8月刊)の3作。

♪ 北町奉行所で奉行の秘書役である内与力に対して、その下役として、御用部屋に詰め、各種文書の草案作成や案件の下調べを行って、内与力を補佐する、用部屋手附同心・裄沢広二郎を主人公に、奉行所内外の出来事や人間関係をリアルに描く「奉行所小説」。正義感があって論理的な話ができる裄沢は、奉行所内では上役にへつらわず同僚からも煙たがられる、反骨同心で、不正には厳しく、弱き者への温かさをもった人情派の一面もある。鬼神のような推理と奉行所組織の群像劇が堪能できる、江戸の「警察小説」シリーズ。

2位 『イクサガミ 地』
イクサガミ 地 (講談社文庫)

今村翔吾(いまむらしょうご)
講談社・講談社文庫

対象期間中の作品は『イクサガミ 地』(2023年5月刊)の1作。

♪ 前作『イクサガミ 天』よりも一段とパワーアップしたシリーズ第2作。自らの命を賭け札に、バトルロイヤルに挑む剣客たちの闘いは、京八流の継承者を狙う者たちの争い、さらには殺し屋幻刀斎まで加わり、デスゲームの行方はさらに混沌としていく。全編通じてアクションシーンの連続で、ハラハラドキドキ、手に汗握る展開。後半では文明開化の世に仕掛けられた恐るべき陰謀と対決、そして有名な事件まで描かれ、エンタメ度はMAXに。

3位 「北近江合戦心得」シリーズ
姉川忠義 北近江合戦心得(一) (小学館文庫)

井原忠政(いはらただまさ)
小学館・小学館文庫

対象期間中の作品は『(一)姉川忠義』(2022年12月刊)、『(二)長島忠義』(2023年7月刊)の2作。

♪ 殿堂入りレベルのランキング常連の「三河雑兵心得」シリーズに代わり、今回は姉妹編の「北近江合戦心得」を推す。浅井長政の主命で、嫡男万福丸を託されて落城寸前の小谷城から脱出する遠藤与一郎。供は元山賊の頭目である武原弁造一人。忠義者ゆえに翻弄される運命。戦いあり、裏切りあり、恋あり、駆け引きありで、最強の忠義者バディが乱世を駆ける、井原ワールド全開の痛快戦国時代小説です。

4位 『編み物ざむらい』
編み物ざむらい (角川文庫)

横山起也(よこやまたつや)
KADOKAWA・角川文庫

対象期間中の作品は『編み物ざむらい』(2022年12月刊)の1作。

♪ 刺繡や縫箔、仕立物などの職人が登場する時代小説はこれまでもあったが、編み物(メリヤス)を得意とする武士を主人公にした作品は初めて。編み物作家らしく、編み物シーンがリアルでわかりやすく、編み物をしたことが全くない門外漢ながらも物語の世界にスッと引き込まれた。本書の魅力の一つは、時代小説が初めてという人、何から読んだらいいかわからないという人におすすめできる、とっつきやすさにある。時代小説の新しい読者を広げる作品だ。それでいて、人生の真理に触れられるような深い話が読める。

5位 『土下座奉行』
土下座奉行 (小学館文庫)

伊藤尋也(いとうひろや)
小学館・小学館文庫

対象期間中の作品は『土下座奉行』(2023年5月刊)の1作。

♪ 土下座には、謝意、謝罪、屈辱、屈服、敗北、卑下などといった負の意味合いの一切が注ぎ込まれていて、忌避すべき行為。体面や矜持が重視されていた江戸時代に、土下座を最大の武器に戦った男がいた。牧野駿河守成綱。しゅうとめのように細かく口うるさいながらも、捕物で悪党を捕らえていく廻り方同心小野寺重吾と、土下座の奥義を披露して江戸城内の大悪を退治していく「どげざ駿河」。二人の人情味あふれる痛快な活躍が楽しめる捕物小説は、キャッチ―で、読みやすく時代小説が苦手という方にもおすすめだ。

6位 『ダ・ヴィンチの翼』
ダ・ヴィンチの翼 (創元推理文庫)

上田朔也(うえださくや)
東京創元社・創元推理文庫

対象期間中の作品は『ダ・ヴィンチの翼』(2023年9月刊)の1作。

♪ ミケランジェロやダ・ヴィンチ、マキアヴェッリらが生きた、15世紀イタリアを舞台にした歴史ファンタジー。特別な力をもつことに悩みと葛藤を抱えた少年コルネーリオの冒険と成長を描き、エンターテインメント時代小説として大いに楽しめた。ダ・ヴィンチの秘密兵器を探す旅を描く物語は、信頼と正義、冒険心を育み、知的好奇心を満たし、読書を愛する大人はもちろん、10代の子どもたちにぜひ読んでほしいおすすめの一冊だ。

7位 「ごんげん長屋つれづれ帖」シリーズ
【六】菩薩の顔 (双葉文庫)

金子成人(かねこなりと)
双葉社・双葉文庫

対象期間中の作品は『(六)菩薩の顔』(2023年3月刊)、『(七)ゆめのはなし』(2023年9月刊)の2作。

♪ 女手一つで3人の子供を育てる質舗の番頭お勝を中心に、根津権現門前町の裏店『ごんげん長屋』の住人たちが繰り広げる、人情長屋小説シリーズ。珍騒動あり、捕物あり、恋愛あり、一話一話、趣向の異なる話で、江戸の四季の中に、個性豊かなごんげん長屋の住人たちの人情が描かれている。時代劇の名脚本家による連作時代小説は、読み味がよくて誰かに優しくしたくなる一冊だ。

8位 『義経じゃないほうの源平合戦』
義経じゃないほうの源平合戦 (文芸社文庫)

白蔵盈太(しろくらえいた)
文芸社・文芸社文庫

対象期間中の作品は『義経じゃないほうの源平合戦』(2022年12月刊)の2作。

♪ 非情な知略家の兄頼朝と天賦の軍略家の弟義経、二人の天才に挟まれた平凡な男、源範頼をユーモアたっぷりに描いた歴史時代小説。範頼の視点(というか愚痴のようなモノローグ)で綴られていく鎌倉殿の時代の物語は、気難しい上司と困ったちゃんの同僚に囲まれた会社員の日常にも似て、共感必至だ。範頼のイメージは、NHKドラマ「鎌倉殿の13人」で迫田孝也さんが演じた役柄にも近くて、大河ファンも納得。

9位 「福猫屋」シリーズ
福猫屋 お佐和のねこだすけ (講談社文庫)

三國青葉(みくにあおば)
講談社・講談社文庫

対象期間中の作品は『(一)お佐和のねこだすけ』(2022年11月刊)、『(二)お佐和のねこかし』(2023年2月刊)、『(三)お佐和のねこわずらいし』(2023年7月刊)の3作。

♪ 錺職人の夫を亡くし、子どももいないお佐和。喪失感を抱えて気持ちも落ち込んでいたところに、迷い込んだのが野良猫。福と名づけたその猫の面倒を見るうちに心が癒やされて、お佐和は立ち直った。ふとしたきっかけで、江戸のペットショップを始めることになったお佐和の奮闘と可愛い猫たちを描いた連作時代小説。かわいい猫たちといっしょに、猫を愛する人々の不安や喜びが描かれている。猫好きならずとも、読むと、心がじんわりと温かくなる。

10位 『大江戸墨亭さくら』
大江戸墨亭さくら (祥伝社文庫)

吉森大祐(よしもりだいすけ)
祥伝社文庫・祥伝社文庫

対象期間中の作品は『大江戸墨亭さくら』(2023年7月刊)の3作。

♪ 不良を気取りながらも病弱な妹のために我流で無茶をする代助と、真面目でヘタレな小太郎という対照的な二人が繰り広げる騒動の数々。噺家の修業をする小太郎の先の見えないことへの苦悩、そして一途に芸に打ち込む姿に感動を覚える。厳しくも情のある師匠夫婦も温かくて読み味抜群だ。江戸・天保時代を舞台にし、当時の医療や政治事情を織り交ぜながらも、軽快で現代的なタッチで楽しる落語青春時代小説となっている。

時代小説ベスト10【単行本部門】はこちら

2023年時代小説ベスト10【単行本部門】
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