『しろがねの葉』|千早茜|新潮文庫
2025年6月21日から6月30日に刊行予定の文庫新刊情報として、「2025年6月下旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回、特に注目したい作品は、千早茜(ちはや・あかね)さんによる歴史時代小説『しろがねの葉』(新潮文庫)です。著者にとって初めての歴史小説であり、2023年1月に発表された第168回直木賞受賞作でもあります。
あらすじ
愛する人を何度失っても、わたしは生きる。
銀山に生きる少女・ウメの生涯を描いた圧巻の長編です。
銀の光を見つけた者だけが、この地で生きられる――。父母と生き別れ、稀代の山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、石見銀山の坑道で働き始めます。山に穿たれた深い闇に恐れと憧れを抱きながらも、そこに女の居場所はありません。熱く慕う喜兵衛や、競うように育った隼人を羨むウメでしたが、勢いを増すシルバーラッシュは、男たちの身体を蝕んでいきます……。生きることの苦悩と官能を描いた大河長編です。(『しろがねの葉』(新潮文庫)Amazon紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
著者の千早茜さんは、2008年『魚神』で第21回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビューされました。翌2009年には、同作で第37回泉鏡花文学賞も受賞されています。さらに、2013年には『あとかた』で第20回島清恋愛文学賞を、2021年には『透明な夜の香り』で第6回渡辺淳一文学賞を受賞されています。そして、初の歴史小説となる本作『しろがねの葉』で、2023年に直木賞を受賞されました。
本作は、戦国末期のシルバーラッシュに沸く石見銀山を舞台に、孤児の少女・ウメが「銀山の女」として過酷な運命を生き抜く物語です。常に死と隣り合わせの坑道で、短い命を燃やしながら働く男たちとの愛と官能を描き出しています。
歴史小説を専業とされていない著者だからこそ描けた、骨太で鮮烈な物語といえるでしょう。
世界遺産・石見銀山を舞台にした歴史小説では、澤田瞳子さんの『輝山(きざん)』(徳間文庫)もおすすめです。

今回ご紹介した本
