『三河雑兵心得(16)-関ケ原仁義(中)』|井原忠政|双葉文庫
2025年6月11日から6月20日に刊行予定の文庫新刊情報として、「2025年6月中旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回、特に注目したい作品は、井原忠政さんによる文庫書き下ろし時代小説『三河雑兵心得(16) 関ケ原仁義(中)』(双葉文庫)です。天下人を目指す徳川家康に仕える、植田茂兵衛の戦場での活躍と出世を描いた物語は、これまでほとんどなかった戦国時代を舞台にした文庫書き下ろしシリーズとして大人気で、本書で第16巻を数えます。
あらすじ
九死に一生を得た茂兵衛の傷も癒えたころ、会津征伐の陣触れが諸大名に下されました。上杉景勝の戦支度を糺す家康の書状に対し、上杉家家老の直江兼続が無礼千万な返書を送りつけたのです。
しかし、江戸を経て会津に迫ろうとした矢先、石田三成挙兵の報が舞い込みます。家康はただちに北上を中止し、畿内へと引き返して三成討伐を決意します。茂兵衛率いる鉄砲百人組は、先鋒を務める福島正則、黒田長政といった猛将たちとともに、東海道を西へと奔走します。
戦国足軽出世物語、風雲急を告げる第十六弾です。(『三河雑兵心得(16) 関ケ原仁義(中)』(双葉文庫)Amazon紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
最下層の雑兵である足軽から出発し、主君・徳川家康とともに戦国を駆け抜けてきた茂兵衛。
第1巻『足軽仁義』(2020年2月刊)では、乱暴者ながらも家族思いで誠実な雑兵として登場した茂兵衛が、いまや鉄砲百人組を率いる侍大将となり、家康からの信頼も厚い存在へと成長しました。
太閤・秀吉の薨去をきっかけに、世情は大きく揺らぎます。さらに前田利家の死去、武断派七将による石田三成襲撃事件などを経て、家康はついに天下取りへの野心を露わにしていきます。悪巧みにこき使われる茂兵衛は、東奔西走の日々を送ることとなり、その働きによって今や五千石の大身にまで出世しています。
慶長五年(1600)二月、越後・春日山城主の堀秀治が、「上杉景勝に謀反の疑いあり」として家康に直訴し、複数の証拠を提示しました。家康が上杉家の戦支度を糺す書状を送ると、家老・直江兼続は無礼極まりない返書「直江状」を返し、ついに上杉討伐が決定します。
その動きに呼応するかのように、石田三成が挙兵。関ヶ原の決戦が間近に迫る中、戦国の緊張が高まっていきます。
本作では、家康に仕える一将・植田茂兵衛の視点から、関ヶ原合戦への道筋が、彼の活躍とともに描かれていきます。
次巻では、ついに関ヶ原の本戦が描かれると思われ、今から非常に楽しみです。
楽しみといえば、本作に挟み込まれていたPRチラシ「井原忠政 戦国心得」第12号(2025年6月)にて、〈戦国心得〉シリーズの第3弾となる新シリーズ「真田武士(もののふ)心得」が文春文庫より刊行されることが発表されました。
第1巻は2025年9月上旬発売予定とのことで、著者のファンのみならず、多くの時代小説ファンにとっても注目の一冊となりそうです。
まずは本作『三河雑兵心得(16) 関ケ原仁義(中)』をじっくりと堪能したいところです。

今回ご紹介した本
