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この国の礎を築いた、天下の嫌われ者石田三成の生涯を描く

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治部の礎吉川永青(よしかわながはる)さんの長編時代小説、『治部の礎』(講談社文庫)を入手しました。

タイトルから想像がつく通り、治部少輔(じぶのしょうゆう)こと石田三成を描いた戦国時代小説です。

武田信玄配下の戦国最強部隊「赤備え」と赤鬼と呼ばれる井伊直政を描いた『誉れの赤』や、天下をかき回す「化け札」=ジョーカーになぞらえて真田昌幸を描いた『化け札』など、新感覚の戦国時代小説を次々と発表している著者が取り上げる三成に注目しています。

あの嫌われ者は、何のために闘い続けたのか。覇王信長の死後、天下人を目指す秀吉のもと、綺羅星のごとく登場し活躍する武将を差し置いて、最も栄達した男・石田三成。秀吉の備中高松城攻めに従軍した若き日から、関ヶ原の戦い後まで、己の信念を最期まで貫いて、大義に捧げた生涯を丹念、かつ大胆に描く。
(本書カバー裏紹介より)

物語は、秀吉の近習として大谷吉継とともに、備中高松城攻めに参加した若き日の三成が、秀吉から、水攻めの軍略を立案した黒田官兵衛を紹介されるシーンから始まります。

「ひとつお伺い致しとう存じます。奉公人たるもの、己に下されたものを全て使い、主君に尽くすべし。それがしは左様に心得ております。されど主君の懐まで空にするというのは、如何なものでしょうか」
 黒田の眉間に皺が寄る。傍らの吉継が「三成」と泡を食った囁きを寄越した。
 秀吉が「ひゃっ、ひゃっ」と笑った。
「官兵衛が申すのよ。戦に負けたら、財など残しておっても意味はなかろうと」
 矛を収めよという、言外の叱責であった。三成は深々と頭を下げた。
「僭越な物言いにござりました」

(『治部の礎』P.11より)

百姓衆から土を詰めた俵(土嚢)一つを米一升と銭百文で買い取って、水攻めのための堤を築くという黒田の軍略に疑問を呈する三成。イメージ通りの三成の登場に思わずニヤリとさせられます。

多くの武将たちの反感や嫉妬を買いながらも、大義のために己の信念を貫く三成の生涯を追ってみたいと思います。

●目次
第一章 天下
第二章 決意
第三章 混迷
第四章 決戦

■Amazon.co.jp
『治部の礎』(吉川永青・講談社文庫)
『誉れの赤』(吉川永青・講談社文庫)
『化け札』(吉川永青・講談社文庫)

吉川永青|時代小説ガイド
吉川永青|よしかわながはる|時代小説・作家 1968年、東京都生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。 2010年、「我が糸は誰を操る」で第5回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞。 2012年、『戯史三國志 我が槍は覇道の翼』で第33回吉川英治文学賞...