江戸の猫を描く、女性時代作家競演のアンソロジー

ねこだまり 〈猫〉時代小説傑作選細谷正充さん編による時代小説セレクション、『ねこだまり 〈猫〉時代小説傑作選』を入手しました。

選者は、時代小説を中心に優れた作品に対して、自身の名を冠した「細谷正充賞」を制定して表彰している、時代小説の目利きの文芸評論家・書評家です。

本書は、細谷さんの編による時代小説アンソロジー、『あやかし 〈妖怪〉』『なぞとき 〈捕物〉』『なさけ 〈人情〉』『まんぷく 〈料理〉』と続く、PHP文芸文庫の時代小説傑作選シリーズの一つです。

お店の守り神である木彫りの猫がなくなり、その行方を捜す「猫神さま」(西條奈加)、長屋で一番偉い猫の“サバ”が、夫婦の揉め事を解決する「包丁騒動」(田牧大和)、臆病な火消しの男へ按摩が与えた猫頭巾に込められた恐るべき謎「だるま猫」(宮部みゆき)など、愛らしくも摩訶不思議な存在である江戸の猫にまつわる短編六作を収録。令和を代表する女性時代作家の共演による珠玉のアンソロジー。
(表紙裏の内容紹介より)

本書は、『鯖猫長屋ふしぎ草紙』シリーズでお馴染みの田牧大和さんをはじめ、宮部みゆきさん、諸田玲子さん、西條奈加さん、折口真喜子さん、森川楓子さんといった、猫が登場する時代小説作品をもつ、女性時代小説家の競演が楽しめます。

「おや、先生は猫を養っておいでですか」
「いや、これはな、近所のばあさんが飼っていた猫や。先日そのばあさんが亡くならはってな。わしはどこかへ引き取られた思うとったんやけど、さっきの雨がぱらついてきたとき、雨の中、空き家になったばあさんの家の戸口に向かってちょこんと座っておってなぁ」

(『ねこだまり 〈猫〉時代小説傑作選』「踊る猫」P.129より)

画家で俳人の与謝蕪村のもとに、ある絵師が訪ねてきて、酒を酌み交わしながら絵を競作するのが、折口真喜子さんの「踊る猫」のお話です。最後にはこの絵師の名前が明らかになります。友と美味しい日本酒が飲みたくなるような余韻のある作品です。

森川楓子さんの「おとき殺し」には、無類の猫好きである、絵師の歌川国芳が登場します。

今宵は、江戸の猫たちと楽しいひと時を過ごしたいと思います。

装丁:芦澤泰偉
装画:卯月みゆき

●目次
お婆さまの猫 諸田玲子
包丁騒動 田牧大和
踊る猫 折口真喜子
おとき殺し 森川楓子
猫神さま 西條奈加
だるま猫 宮部みゆき
解説 細谷正充

■Amazon.co.jp
『ねこだまり 〈猫〉時代小説傑作選』(細谷正充編・PHP文芸文庫)
『あやかし 〈妖怪〉時代小説傑作選』(細谷正充編・PHP文芸文庫)
『なぞとき 〈捕物〉時代小説傑作選』(細谷正充編・PHP文芸文庫)
『なさけ 〈人情〉時代小説傑作選』(細谷正充編・PHP文芸文庫)
『まんぷく 〈料理〉時代小説傑作選』(細谷正充編・PHP文芸文庫)

第二回「細谷正充賞」発表 | 文人墨客
細谷正充編|時代小説ガイド
細谷正充|ほそやまさみつ|文芸評論家・書評家 1963年生まれ。 時代小説、ミステリーなどのエンターテインメントを対象に、評論・執筆。 自宅に17万冊という膨大な書庫を持ち、「細谷正充賞」を表彰。 ■時代小説SHOW 投稿記事...