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蝦夷をテーマにした時代小説短篇集

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6月2日(月)から、勤務先が御茶ノ水になった。江戸時代の切絵図でみると、神田川を挟んでちょうど昌平坂学問所の対岸に位置する。書店の丸善が近く、本の町、神保町へも歩いてすぐという時代小説好きには絶好のロケーションである。とはいえ、引越しやら新しい仕事が増えたこともあり、落ち着いて本屋で憩うという感じにはなれていない。

最近、読書のペースが落ちてしまったが、勤務地が変わったことで通勤時間が20分ぐらいかかるようになった。まあ、その分だけ本が読めるようになったと思えば苦にならならないか。

宇江佐真理さんの『蝦夷拾遺 たば風』を読んだ。作者の故郷である北海道(蝦夷)を舞台にした6つの短篇を収録した時代小説集。

蝦夷拾遺 たば風 (文春文庫)

表題作の「たば風」とは、松前地方に吹く北北西の季節風のこと。この風に揺らされる男女の愛を叙情豊かに描いた佳品。背景に藩内の抗争が描かれていて、藤沢周平さんの作品にも通じる魅力がある。

「恋文」は四人の子どもたちが元服したり嫁ぎ、藩の留守居役次席を務める夫が隠居し松前へ帰ることを言い出したのを機に、今で言う熟年離婚を決意した妻。息子が母に課した離婚するための条件とは…。それは、現在でも通用しそうな特効策に思える。

「錦衣帰郷」最上徳内が、幕臣になり蝦夷地探索を務めた後、故郷の出羽国村山郡楯岡村に帰郷したときの話。

「柄杓星」許婚が彰義隊に身を投じた幕臣の娘の迎えた幕末維新。『幕臣たちの明治維新』を読んだ後なので、具体例みたいな感じがして興味深い題材だった。

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)

「血脈桜」藩主松前徳広の正室光子に仕えることになった六人の娘たちが遭遇した箱館戦争。光善寺の血脈桜(けちみゃくざくら)は実在する桜の名木だそう。

http://www.e-matsumae.com/sakura/meiboku.htm

「黒百合」浅草奥山の見世物小屋で撃剣会の舞台に立つ幕臣の娘と元松前藩士の恋を描く、ロマンチックな短篇。明治の新体制に適応できない、幕臣たちの姿が何ともせつない。