サムライの時代の終焉に、天はこの男・河井継之助を選んだ

龍が哭く 河井継之助秋山香乃さんの長編歴史時代小説、『龍が哭く 河井継之助』(PHP文芸文庫)を入手しました。

河井継之助(かわいつぎのすけ)は、幕末の越後長岡藩の家老でした。
その半生は、司馬遼太郎さんの『峠』でドラマティックに描かれたことにより、全国的に知られるようになりました。

戊辰戦争の際、官軍と奥羽列藩同盟の間で武装中立を目指した長岡藩家老・河井継之助は、「英雄」として語られることが多い。しかし、彼は本当にそうだったのか――。半を救うために諸国を巡った若き日、妻・すがとの絆、会津藩公用方・秋月悌次郎や仙台藩隠密・細谷十太夫、そして武器商人エドワード・スネルとの親交を通して、動乱の時代を峻烈に生き抜いた人間・河井継之助の、真の姿に迫る感動の長編歴史小説。
(本書カバー裏の紹介文より)

物語は、継之助の長岡を戦場に変えて最期を遂げた四年後、妻すが子が義母と故郷長岡を追われて三国街道の峠を超えるプロローグから始まります。

 それにしても、自分の夫、河井継之助とはいったい何者だったのだろう。死んでなお、すが子を翻弄し続ける男だ。
 英雄だったのか、とんだ大戯けだったのか。
 そのどちらの評判も耳にした。いまさらながら、すが子は夫の真実がたまらなく知りたくなった。

(『龍が哭く 河井継之助』P.9より)

安政六年(1859)七月、三十三歳の継之助は備中松山藩の財政を立て直した山田方谷(ほうこく)を訪ねて弟子入りを請います。

ペリー来航時に、部屋住みの身の継之助は、長岡藩主牧野忠雅に、藩政改革の建白書を提出し、家老を補佐する評定方随役に大抜擢され、「殿の期待に応えて藩政改革を行い、長岡の柱石になろう」と誓ったにもかかわらず、何の力も発揮できないまま、あっという間に辞職に追い込まれる失敗を犯していました。

「私がこの備中松山に施した具体的な政策はみな、お教えいただしましょう。されどそれは三日もあればすべてお伝えできようのう」
 それを土産に藩へ戻りなさいという方谷に、継之助は首を左右に振った。。
「いいえ。先生に教えていただいた方策を用いて我が藩で改革を行おうとしても、拙者自身が変わらねば、今のまま藩へ戻っても、だれも我が言葉に耳を貸さぬでしょう」

(『龍が哭く 河井継之助』P.29より)

継之助が方谷のもとで何を学び、二十三万両にものぼる借財を抱え瀕死の重傷である長岡藩を救うことができるのでしょうか。やがて、藩政改革にまい進する継之助を、激動の歴史が呑み込みます……。

710ページにも及ぶ大長編ながら、一気読みできそうなリーダビリティのある作品です。

河井継之助の生涯を知るには、安藤優一郎さんの歴史読み物『河井継之助 近代日本を先取りした改革者』もおすすめです。

●目次
プロローグ
第一章 月白の目覚め
第二章 乱の兆し
第三章 赤き心
第四章 如くは無し
第五章 王城に吹く風
第六章 藩政改革
第七章 憎まれ継之助
第八章 戦、勃発
第九章 天が哭く
エピローグ
あとがき

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『龍が哭く 河井継之助』(秋山香乃・PHP文芸文庫)
『峠』上巻(司馬遼太郎・新潮文庫)
『河井継之助 近代日本を先取りした改革者』(安藤優一郎・日本経済新聞出版社)

秋山香乃|時代小説ガイド
秋山香乃|あきやまかの|時代小説・作家 1968年、北九州市生まれ。活水女子短期大学卒業。 2002年、『歳三 往きてまた』で作家デビュー。 2018年、第6回野村胡堂文学賞受賞。 ■時代小説SHOW 投稿記事 ...