薄毛のイケメン剣士が愛妻と、読売殺しの謎を追う

陰仕え 石川紋四郎ハヤカワ時代ミステリ文庫の創刊第2弾、冬月剣太郎(ふゆつきけんたろう)さんの文庫書き下ろし時代小説、『陰仕え 石川紋四郎』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)を入手しました。

著者は、カメラマン、ライター、マンガ編集者などを経験され、本書は時代小説のデビュー作です。

“陰仕え”として公儀の敵を闇から闇へやむなく斬ってきたという秘事を抱える薄毛の剣士・紋四郎は、好物の海苔弁を食しながら悶絶していた。愛妻さくらにもこのことは明かせぬ、苦悶の日々。そんな折、友の同心から助けを請われる。次々と起こる読売殺し――江戸を騒がす下手人の捕縛を手伝ってくれというのだ。紋四郎は勇んで引き受けるが、なんと好奇心に富みすぎる妻が自分も手伝うと言い出すから気苦労が増えて……
(文庫カバー裏の紹介文より)

本書の主人公、石川紋四郎は、平山行蔵に師事して講武実用流を学んだ剣の使い手。美食家(というかB級グルメ好き)で、美丈夫(イケメン)ながら、薄毛に悩むという設定がユニークです。
武家の当主は、髷が結えぬほど髪が薄くなった者は武士として疎まれて登城は好ましくないため、その時が来れば隠居をしなくてはなりません。

石川家は、初代が豊臣秀吉に奔った石川数正で、二代目が大久保長安事件に連座して改易された石川康長で、豊後佐伯に流されたとされるが、実際は江戸の近在に留まって、陰仕えの務めを果たしてきたという設定。

「紋四郎よ。われらが出自をかまえて忘れるな。そもそも御神君(家康)と、われらがご先祖箇三寺(石川数正)さまが交わした密約に始まる。箇三寺さまは裏切り者の汚名を甘んじて受け、太閤秀吉の内情を探るため家来となったのだ。(中略)」
「二代目(石川康長)も同じだ。将軍家のために、みずから罪に連座して闇の世界に通じることによって陰仕えの身となった。以後、石川家の家督を継ぐ者は、どんなことがあろうとも将軍家に絶対的な忠誠を誓ってきた」
(『陰仕え 石川紋四郎』P.115より)

紋四郎も父から、浪人でありながらも、公儀の“陰仕え”の役目を引き継いできました……。

時代は文政三年(1820)晩秋。秘事を抱える紋四郎が、商家の一人娘で好奇心いっぱいで天真爛漫な妻・さくらとともに、江戸で連続して起こった読売(瓦版)殺しの真相を追います。

ミステリーの結末とともに、髪に悩む、愛妻家という主人公の設定にも期待しています。

目次
第一章 霧の中
第二章 闇の中
第三章 陰仕え
第四章 十五夜
第五章 陰の声
第六章 陰の力
第七章 陰の男
第八章 陰の涙
第九章 闇の力
第十章 陰の罠
第十一章 陰の道をゆく

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『陰仕え 石川紋四郎』(冬月剣太郎・ハヤカワ時代ミステリ文庫)