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勇実が瀕死の重傷! 青春時代小説シリーズは笑顔の大団円へ

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『拙者、妹がおりまして(10)』|馳月基矢|双葉文庫

拙者、妹がおりまして(10)馳月基矢(はせつきもとや)さんの文庫書き下ろし時代小説、『拙者、妹がおりまして(10)』(双葉文庫)を紹介します。

本所相生町で手習所を営む御家人白瀧勇実と妹千紘、白瀧家の屋敷の隣にある剣術道場の師範代で跡取り息子の矢島龍治、家禄百五十石の旗本の娘・亀岡菊香。四人の若者の日常の出来事と恋を描く青春時代小説の第10弾。

毎回、四人の言動にドキドキしたり、胸がキュンとなったり、ときには何とももどかしい思いに駆られたりと、大いに楽しませてくれた大好きなシリーズが完結することに。
「笑顔の大団円」って、何? 文庫帯のコピーにギュッと心を掴まれて、読み始めました。

火牛党の襲撃に遭って勇実が斬られ、意識が戻らぬ状態が続いた。それにより琢馬は仇討ちへの執念を悲壮なまでに燃え上がらせ、菊香は身もやつれんばかりの看病の日々となる。千紘と龍治も深く己を見つめ直すことに。激動が過ぎた時、抑えきれぬ想いを言葉以上に伝えたのは、互いに強く握り交わした手と手であった。――拙者、兄思いの妹がおりまして。別々の道を歩むことになり申す。ただ、いつまでも笑い交わす、仲良き兄妹でありたい所存にござります。堂々のシリーズ完結巻!

(『拙者、妹がおりまして(10)』カバー裏の内容紹介より)

浅草を根城にして残虐非道の限りを尽くし、勘定奉行の遠山左衛門尉景晋の命を狙い、尾花琢馬の兄を殺めた凶悪集団・火牛党(かぎゅうとう)は、龍治や勇実らの活躍によって逃げ出したり、奉行所に捕らえられたりして、賭場から一掃されました。

文政六年(1823)も残り十日。
大川の百本杭に、火牛の彫物のある、手足も胴もばらばらな亡骸が流れ着きました。
火牛党が仲間割れを起こして、首領の権左も既にこの世にいないのでしょうか?

文政七年(1824)元日。
勇実は、勘定奉行の遠山から、初日の出を拝みに来てはくれぬか、差し向かいで話がしてみたいと、湯島の料理茶屋へ招かれました。
妹や友と連れ立ってくるとよいということで、千紘と龍治、菊香とその弟貞次郎の五人で昌平坂学問所そばの桃園亭へ出かけました。

勇実は桃園亭の庭のあずまやに誘われ、遠山と漢詩について論じ合い、世のために才を役立てないかと問われました。
残りの者たちは、茶屋の二階で歓談し、朝食のときを待っていました。

「いけない! 勇実さま、逃げて!」
 物静かな菊香が声の限りに叫んだ。
 千紘はあずまやのほうを見やり、息を呑んだ。恐ろしさに身がすくみ、悲鳴さえ出ない。
 
(『拙者、妹がおりまして(10)』P.59より)

大柄な暴漢が抜き身の刀を手に、あずまやの二人を襲っているのでした。
暴漢は隻眼で、五人の手下とおぼしき男を従えていました。
暴漢は火牛党の権左で、龍治は窓から離れ、跳び下りる勢いで階段を降りていき、貞次郎も後に続きます。

遠山をかばった勇実は権左に斬られて瀕死の重傷を負ってしまいました。
千紘は、勇実が傷を負ってからずっと、怖くて身がすくんでしまい、何の手伝いも何もできなくなってしまっていました。

 千紘は怖かったのに、菊香は何ともないのだろうか。
 菊香がまっすぐ千紘に向き直った。
「では、違う案を出しましょう。千紘さん、白瀧家でわたしを雇ってもらえませんか?」
 
(『拙者、妹がおりまして(10)』P.79より)

菊香は、代わりにつきっきりで勇実の看病をするために雇ってほしいと申し出ました。
住み込みで働く先を探していた菊香に、以前、勇実は嫁に来てほしい意味を込めて、白瀧家で働いてみたらと告げて、その安直なものの考え方にはねつけられたことがありました。

しかし、今回は、白瀧家に代わり、矢島家が菊香を雇う形で、住み込みで勇実の看病をすることになりました……。

二人の仲はどうなっていくのでしょうか?
ファンならずとも気になるところです。

さて、今回で最終巻ということからか、各賞のタイトルにはすべて「花(華)」の文字が入っています。

「月に叢雲、花に風」は、月には雲がむらがって隠し、美しく咲いた桜は風が吹いて散らすことから、 好事はじゃまが入り、長続きしないことのたとえです。

また、「桃之夭夭、灼灼其華(もものようようたる、しゃくしゃくたるそのはな)」は、『詩経』に収められていて、嫁いでいく娘の幸福を寿ぐ祝婚の詩で、本書の大団円の章を彩っています。

己の道を歩み始めることを決めた四人に、幸あれ!

文庫帯の裏面に新シリーズの予告が載っていました。

『拙者、妹がおりまして(9)』の第一話「拙者、妹ができまして」で、登場した大平将太と理世の新しい兄妹が主役とのことで、本年10月の刊行スタート、「妹おり」のシーズン2の開幕が待ち遠しいです。

拙者、妹がおりまして(10)

馳月基矢
双葉社 双葉文庫
2023年7月15日第1刷発行

カバーデザイン:bookwall
カバーイラストレーション:Minoru

●目次
第一話 月に叢雲、花に風
第二話 優曇華の花
第三話 折り枝の花
第四話 桃之夭夭、灼灼其華

本文262ページ

文庫書き下ろし

■Amazon.co.jp
『拙者、妹がおりまして(1)』(馳月基矢・双葉文庫)
『拙者、妹がおりまして(9)』(馳月基矢・双葉文庫)
『拙者、妹がおりまして(10)』(馳月基矢・双葉文庫)

馳月基矢|時代小説ガイド
馳月基矢|はせつきもとや|時代小説・作家 1985年、長崎県五島列島生まれ。 京都大学文学部卒、同大学院修士課程修了。 2019年、小学館第1回日本おいしい小説大賞に、「ハツコイ・ウェーブ!」(氷月あや名義)で最終選考に残る。 2020年、...