山の者vs.武田、上杉、北条忍びの壮絶バトルロイヤル

嶽神伝 風花(上)長谷川卓(はせがわたく)さんの伝奇大河ロマン、『嶽神伝 風花(上)(下)(がくじんでん かざはな)』(講談社文庫)を入手しました。

戦国時代の甲斐から信州に暮らす、「山の者」が生きて死んでいく、著者のライフワークである、伝奇大河ロマンです。山の者たちを率いる傑出した人物を、ひとは「嶽神(がくじん)」といいます。

元亀三年、武田信玄は上洛を目指し動き出す。家康所領の城が次々に落ち、要衝の二俣城もついに陥落する。三方ヶ原の戦いで完膚なきまでに打ちのめされ、敗走する家康の窮地を救うべく、山の者が快刀乱麻、躍動する。時に家康に味方し、滅亡に向かう武田に影のように寄り添い、義のために戦う男たちの熱き姿。
(上巻の文庫カバー裏の紹介文より)

本書は、嶽神と呼ばれる《木暮衆の無坂(むさか)》を主人公とした四部作(『無坂』『孤猿』『鬼哭』『風花』)の、完結編です。

このシリーズでは、天文十一年(1542)に武田晴信(信玄)が父・信虎を追放して、諏訪侵攻を目論むところから始まり、天正十年(1582)に武田家の滅亡まで、実に四十年にわたる無坂を中心とした山の者たちの戦いが描かれていきます。

「無坂は、幾つに相なった?」
「六十六かと」
「まだ山の中を走っているのか」
「そのようでございます」
「何を食べていると、あのように走れるのかの」
「殿は、彼の者よりも一回り上にございます。恐らく皆、殿が何を食べているのか知りたがっているかと存じますが」
「覚えておくがいい。食わぬことだ。無駄に食えば、五臓六腑が疲れる」
「では、恐らく無坂も、そのようにしているのではないでしょうか」
(『嶽神伝 風花(上)』P.23より)

元亀元年(1570)十月。北条早雲の四男で、七十八歳の高齢ながら、小机城主として風魔忍びを束ねる北条幻庵と風魔の棟梁・小太郎の会話から、本書の物語は始まります。

木暮衆の無坂が高遠城の小見の方のもとに現れたことが、城に潜んでいる風魔の忍びより報告されました。
小見の方は、諏訪頼重の娘で、武田信玄の側室となり諏訪御料人と呼ばれました。四郎勝頼の実母で、このとき、高遠城城主であった勝頼とともに高遠城にありました。

物語は、武田家の興亡とともに、年老いた嶽神・無坂率いる山の者と、武田の忍び・かまきり、上杉の忍び・軒猿、北条の忍び・風魔との死闘が繰り広げられていきます。

二俣城の攻防、三方ヶ原の戦い、長篠の戦い、御館の乱……。壮絶なバトルロイヤルで、生き残るのは? 読みだしたら止まらない、戦国ロマンを堪能したいと思います。

目次
《上巻》

第一章 高遠城笹曲輪
第二章 犬
第三章 上杉景虎
第四章 逝く者
第五章 伊賀の牙牢坊
第六章 武田出陣
第七章 二俣城の戦い 一 信玄襲撃
第八章 二俣城の戦い 二 開城
第九章 三方ヶ原の戦い
《下巻》
第十章 信玄の最期
第十一章 信虎の死
第十二章 長篠の戦い
第十三章 御館の乱
第十四章 三郎景虎自刃
第十五章 落城
主要参考文献
あとがき

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『嶽神伝 風花(上)』(長谷川卓・講談社文庫)
『嶽神伝 風花(下)』(長谷川卓・講談社文庫)
『嶽神伝 無坂(上)』(長谷川卓・講談社文庫)(「嶽神伝 無坂」シリーズ第1巻)

長谷川卓|時代小説リスト
長谷川卓|はせがわたく|時代小説・作家 1949年、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科演劇専攻修士課程修了。 1980年、「昼と夜」で第23回群像新人文学賞受賞。 1981年、「百舌が啼いてから」で第85回芥川賞候補。 2...