『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』の解題を担当しました。

鎌倉→室町→江戸。武士の歴史七百年が「将軍」で早わかり

『将軍の日本史』|榎本秋|MdN新書

将軍の日本史作家で文芸評論家、出版プロデューサーの榎本秋(えのもとあき)さんの歴史読み物、『将軍の日本史』(MdN新書)をご恵贈いただきました。

本書は、鎌倉、室町、江戸、それぞれの幕府における歴代将軍を一挙掲載して、どんな時代で、どんな将軍だったかを紹介する、歴史入門書です。

源頼朝は、武家政権樹立のために、「天皇の代理人」の権限を持つ「将軍」職を、二百五十年ぶりに復活させる。
以来、その本質は「皇帝」とほぼ同義となった。その座は足利氏、徳川氏に引き継がれ、およそ七百年にわたり、将軍は日本の支配者であった。
彼らは日本史をどう変えたのか。名公方から暗愚将軍まで将軍たちの知られざる実像を通じて読み解く日本史!
 
(『将軍の日本史』カバー帯の紹介より)

鎌倉時代(1185※~ 1333年)、室町時代(1336~1573年)、江戸時代(1603~1868年)と、武士の時代が700年近く続き、その中心にいたのが「将軍(=征夷大将軍)」でした。

※鎌倉時代の始まりは、昔、「いい国つくろう鎌倉幕府」と覚え、源頼朝が征夷大将軍に任じられた1192年ではなく、守護や地頭を各地に置くことを朝廷から認められた1185年が有力。語呂合わせも「いい箱つくろう鎌倉幕府」に変わっていました。

本書は、3つの幕府の征夷大将軍の総覧になっています。
室町幕府や江戸幕府の将軍については、歴代の将軍の名前ぐらいは知っていましたが、鎌倉幕府の四代以降の将軍については、全く知らなかったので勉強になりました。

 藤原頼経(よりつね)は摂関家の生まれである。生まれた翌年の承久元年(一二一九)、「三寅丸」と呼ばれていた赤ん坊の頃に鎌倉へ送られ、四代目の「鎌倉殿」になった。元服して頼経を名乗り、征夷大将軍の職に就くのはしばらく先のことである。

(『将軍の日本史』P.50より)

本来なら鎌倉幕府の四代目の将軍には親王が迎えられるところ、実朝が暗殺されたことで、源頼朝の姪の娘の子という遠縁をたどって、摂関家九条道家の三男、藤原頼経が四代目の鎌倉幕府将軍に擁立されました。

頼経は、元服した翌年征夷大将軍となり、その四年後に源頼家の娘、竹御所と結婚しますが、政治の実権は執権とその側近たちに移っていて、親政を行う余地はなかったそうです。

時代小説では、江戸時代や戦国時代(とくに信長、秀吉、家康が活躍する安土桃山時代)を舞台にした作品がほとんどで、鎌倉時代や戦国以前の室町時代を取り上げた歴史小説は多くはありません。

2022年のNHK大河ドラマでは、久々に鎌倉幕府の成立から、三代将軍源実朝の時代までが描かれるようですが、ドラマが始まるまでに源氏三代について予習をしておきたいところです。

また、戦国時代につながる室町時代を理解するのには、第二章、第三章の「【室町幕府篇】足利将軍の正体」が役に立ちます。

足利将軍の中には、名前だけでその事績が取り上げられることがない人物もいます。

近年の日本史研究の成果が反映されていて、かつ、読みやすく、マニアックになりすぎない歴史入門ガイドとなっています。
鎌倉~室町時代の歴史が苦手な方や、マンガやライトノベルから歴史に興味を持ち始めた方にもおすすめの一冊です。

将軍の日本史

榎本秋
発行:エムディエヌコーポレーション MdN新書
発売:インプレス
2021年6月11日初版第1刷発行

book belt design:tokyo synergetics

●目次
序章 将軍を知るための予備知識
第一章【鎌倉幕府篇】源氏将軍の正体
〈一〉鎌倉幕府初代将軍・源頼朝
〈二〉鎌倉幕府二代将軍・源頼家
〈三〉鎌倉幕府三代将軍・源実朝
〈四〉鎌倉幕府四代将軍・藤原頼経
〈五〉鎌倉幕府五代将軍・藤原頼嗣
〈六〉鎌倉幕府六代将軍・宗尊親王
〈七〉鎌倉幕府七代将軍・惟康親王
〈八〉鎌倉幕府八代将軍・久明親王
〈九〉鎌倉幕府九代将軍・守邦親王
〈総論〉鎌倉幕府と征夷大将軍
コラム 将軍になった? なれた? 二人の御曹司

第二章【室町幕府篇】足利将軍の正体 其ノ一
〈一〉室町幕府初代将軍・足利尊氏
〈二〉室町幕府二代将軍・足利義詮
〈三〉室町幕府三代将軍・足利義満
〈四〉室町幕府四代将軍・足利義持
〈五〉室町幕府五代将軍・足利義量
コラム 将軍だった後醍醐ブラザース

第三章【室町幕府篇】足利将軍の正体 其ノ二
〈一〉室町幕府六代将軍・足利義教
〈二〉室町幕府七代将軍・足利義勝
〈三〉室町幕府八代将軍・足利義政
〈四〉室町幕府九代将軍・足利義尚
〈五〉八代将軍夫人・日野富子
〈六〉室町幕府十代将軍・足利義材
〈七〉室町幕府十一代将軍・足利義澄
〈八〉室町幕府十代将軍・足利義稙
〈九〉室町幕府十二代将軍・足利義晴
〈十〉室町幕府十三代将軍・足利義輝
〈十一〉室町幕府十四代将軍・足利義栄
〈十二〉室町幕府十五代将軍・足利義昭
〈総論〉室町幕府と征夷大将軍
コラム 戦国乱世の将軍候補者

第四章【江戸幕府篇】徳川将軍の正体 其ノ一
〈一〉江戸幕府初代将軍・徳川家康
〈二〉江戸幕府二代将軍・徳川秀忠
〈三〉江戸幕府三代将軍・徳川家光
〈四〉江戸幕府四代将軍・徳川家綱
〈五〉江戸幕府五代将軍・徳川綱吉
コラム 徳川将軍になり損ねた殿様連中 壱

第五章【江戸幕府篇】徳川将軍の正体 其ノ二
〈一〉江戸幕府六代将軍・徳川家宣
〈二〉江戸幕府七代将軍・徳川家継
〈三〉江戸幕府八代将軍・徳川吉宗
〈四〉江戸幕府九代将軍・徳川家重
〈五〉江戸幕府十代将軍・徳川家治
〈六〉江戸幕府十一代将軍・徳川家斉
コラム 徳川将軍になり損ねた殿様連中 弐

第六章【江戸幕府篇】徳川将軍の正体 其ノ三
〈一〉江戸幕府十二代将軍・徳川家慶
〈二〉江戸幕府十三代将軍・徳川家定
〈三〉江戸幕府十四代将軍・徳川家茂
〈四〉江戸幕府十五代将軍・徳川慶喜
〈総論〉江戸幕府と征夷大将軍
コラム 「最後の将軍」の後継者たち

おわりに
参考文献

本文287ページ

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『将軍の日本史』(榎本秋・MdN新書)
『日本坊主列伝』(榎本秋・徳間文庫)

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榎本秋|歴史読み物リスト
榎本秋|えのもとあき(福原俊彦)|作家・文芸評論家・出版プロデューサー 1977年、東京都生まれ。書店員、編集者を経て、作家事務所・榎本事務所を設立。 2014年より、福原俊彦名義で時代小説を発表する。 ■時代小説SHOW 投稿...