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不正建築と時代小説

一級建築士が構造計算書を偽造したことによる、耐震性が基準の1/4というマンションのことが連日ニュースをにぎわせている。マンションの居住者や建築関係者には、生活や人生がかかっているので、なんとも傷ましい思いがするが、あきらめずにがんばってほしい。

江戸時代の庶民の住まいは、火事が多かったこともあり、安普請の長屋がほとんどで、不正な建築が問題になるようなことはないと思っていた。しかし、平岩弓枝さんの『鬼女の花摘み 御宿かわせみ』の中に収録された「招き猫」で大工の手抜き普請を描いた話があった。初春の大雪でつぶれる家が何軒もでて、それらが五年前の大火の後に、大工の手が足りずに安かろう悪かろうの普請をした家だという。

甲州から江戸に出てきたちっぽけな材木屋大月屋彦市は、火事の後、自分の在所へ行って木材を買い集め、それをむこうで細工して江戸へ運んで、あっという間に家を建てた。大工や職人の組合を無視して、木材の規格を守らず、現場で組み立てられるまでに下ごしらえのできたのを運んで来て、それを図面通りに建てるのだから、腕のいい大工職人がいなくてもでき上る。つまり、在所から木材を運んで来た百姓などがにわか大工になって力仕事をこなすので、普通の建築に比べると圧倒的に早く完成するという。

逆にお金をふんだんにかけて豪奢なつくりで家を建てても、火事で灰燼に帰すことが少なくない。『いっぽん桜』に収録された「そこに、すいかずら」を読むと、火事との付き合い方を考えさせられる。

御宿かわせみ (30) 鬼女の花摘み (文春文庫)

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いっぽん桜 (新潮文庫)

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