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冬は寒紅。小間物商の看板姉妹が江戸の女にきれいを届ける

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『寒紅と恋 小間もの丸藤看板姉妹(三)』
寒紅と恋 小間もの丸藤看板姉妹(三)宮本紀子さんの文庫書き下ろし時代小説、『寒紅と恋 小間もの丸藤看板姉妹(三)』(時代小説文庫)を紹介します。

本書は、おてんば姉・里久と小町娘の妹・桃の看板姉妹が家業の小間物商をもり立てていく、江戸ガールズ小説の第3弾です。

冬晴れの続く十一月。小間物商「丸藤」の看板姉妹・里久と桃は、飾り職人の清七に、鷲神社の酉の市に案内してもらうこととなった。待ち合わせた社に着くと、清七は母娘らしきふたりを連れていた。愛想のよい母親と反対に、娘・お豊はつれないどころか、敵意むき出しである。その理由とは――。丸藤の品には手が出ない女たちを喜ばせたいと願う姉・里久。いつもまっすぐな姉にほだされ、少しずつ己に素直になっていく妹・桃。日本橋の老舗小間物商をもり立てる姉妹の物語。大好評第三作。
(本書カバー裏の紹介文より)

姉の里久は、日本橋伊勢町にある大店の小間物商「丸藤(まるふじ)」の総領娘です。
幼いころは体が弱く、養生のため、品川の漁師の網元に嫁いだ叔母のもとで暮らしていましたが、十七になった今年のはじめ、実家の丸藤に戻ってきました。
この土地と大店の暮らしに馴染むため、店に立つようになってそろそろ一年が経とうとしていました。

「あんたたちみたいになんでも手にはいれば、誰だってきれいになるるわよ。それなのに、なにさ、これみよがしに見せつけて……」
 お豊は悔しそうに唇をぎゅっと噛んだ。
 そのお豊にさっきと同じ違和感をおぼえた。
「なにじろじろ見てるのよ」

(『寒紅と恋 小間もの丸藤看板姉妹(三)』P.24より)

「丸藤」に出入りしている飾り職人の清七に誘われて、下谷の鷲神社の酉の市に、妹・桃らと出かけた里久は、そこで、かつて清七が世話になった飾り職人の親方のおかみさんとその娘のお豊を紹介されました。

里久は、同じような年のお豊から言われた一言が気になり、「できることなら町家の娘さんやおかみさんにも丸藤の紅をさしてもらいたい」と考え、どうにかして丸藤の紅を大勢の女の手に届けられないものか、と思い悩み始めました。

桃はそんな里久に「巻き込まないでね」と先手を打ちましたが、里久はお構いなしに一緒に考えてくれと請いました……。

本書では、寒の入りに丸藤から売り出される寒紅(かんべに)が題材になっています。
「紅一匁(もんめ)金一匁」と言われるほど紅は高価でした。

また、桃は酉の市に出かけた際に、小袖に黄色い格子柄の半纏羽織に、当時流行った紅の塗り方「笹紅」をして装っています。こちらも注目です。

酉の市がやってきます。
11月の最初の酉の日に酉の市が行われます。
2020年は、「一の酉」が11月2日(月)、「二の酉」が11月14日(土)、「三の酉」が11月26日(木)となります。

寒くなっていきますが、冬ならではのささやかな楽しみを、この江戸ガールズ小説で見つけたいと思います。

寒紅と恋 小間もの丸藤看板姉妹(三)

宮本紀子
角川春樹事務所 時代小説文庫
2020年10月18日第1刷発行

文庫書き下ろし

装画:おとないちあき
装幀:アルビレオ

●目次
第一章 寒紅
第二章 紅さし指
第三章 丸藤の板紅
第四章 時の音
第五章 桃の含め煮
第六章 過ぎし日
第七章 行方
第八章 子守唄

本文251ページ

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『跡とり娘 小間もの丸藤看板姉妹』(宮本紀子・時代小説文庫)(第1弾)
『妹の縁談 小間もの丸藤看板姉妹(二)』(宮本紀子・時代小説文庫)(第2弾)
『寒紅と恋 小間もの丸藤看板姉妹(三)』(宮本紀子・時代小説文庫)(第3弾)

宮本紀子|時代小説ガイド
宮本紀子|みやもとのりこ|時代小説・作家 京都府生まれ。市史編纂室勤務などを経て、2012年、「雨宿り」で第6回小説宝石新人賞を受賞してデビュー。 ■時代小説SHOW 投稿記事 『始末屋』|花魁を守るため、客から借金を取り立てる、始末屋登場...