江戸目明かし総元締を継いだ元侍が、とことん悪を追い詰める

『初めての梅 船宿たき川捕り物暦』

初めての梅 船宿たき川捕り物暦樋口有介さんの長編時代小説、『初めての梅 船宿たき川捕り物暦』(祥伝社文庫)を入手しました。

前作『変わり朝顔』では、浪人真木倩一郎(まさきせいいちろう)は、奥州白河藩主松平定信からの仕官要請を断りましたが、定信と老中田沼意次との暗闘に巻き込まれてしまいました。

その渦中で、堀江町の船宿〈たき川〉の女将お葉の危難を助けたことから、武士を捨てて〈たき川〉へ婿入りし、二代目米造を襲名しました。

奥州白河の武家の道を捨てて船宿〈たき川〉に婿入りし、二代目を襲名した米造の裏の顔は、江戸の目明かし三百の総元締。法外な値をつけると噂の料理屋〈八百善〉の娘お美代の不審死について相談を受けた米造だったが、調べに差し向けた手下清次が何者かに斬られてしまう。折しも白河藩主松平定信が砒毒を盛られ……。田沼との暗闘が激しさを増す、シリーズ第二弾。
(カバー帯の内容紹介より)

本書は、その3カ月後から始まります。
船宿の亭主といっても、米造には、江戸の治安を守る、目明かし三百人を束ねる総元締の役目がありました。

「赤城忍軍と?」
「ご承知のとおり、我が遠祖滝川一益はもともと甲賀の忍び。赤城忍軍は甲賀流滝川派の術を受け継ぎます、一族の傍系なのでございますよ」
「なんと……」
 
(『初めての梅 船宿たき川捕り物暦』P.19より)

たき川の米造の遠祖は、織田信長の武将・滝川一益という、隠居して美水と名乗る先代は、二代目米造に、〈たき川〉の飯炊き権助が、上州国定村に住する赤城忍軍の頭目であることを打ち明けました。

根来忍者の頭目である、老中田沼の動きに目を配るために、江戸へ呼び寄せました。

「八百善という料理屋のことでしたら、私も噂ぐらいは聞いております」
「さようでございましょう。なにせ茶漬け一杯に一両も二両もふんだくるという、まるで追剥みた様な商売で」
「茶漬け用の湯を多摩川まで汲みに行ったとか、梅干は太閤家の遺品だとか」
「やれ大根は十五の未通娘にひと晩抱かせて味を出したの、やれ烏賊は十日も生簀に飼って酒で酔わせてあるだの。そんなゴタクはどうせ下手な戯作者の入れ知恵、ですが近年は十八大通とか申すバカどもがはびこりまして、そんな八百善をもてはやす始末。手前などとんと縁はございませんが、蔵前の札差やお大名の重役方などがおかよいになって、相当に繁盛している、と聞いております」
 
(『初めての梅 船宿たき川捕り物暦』P.32より)

美水は、米造に八百善の娘・お美代が不審な死を遂げました……。

青春小説の名手で、往年の捕物小説のファンという著者が、満を持して2009年に発表した捕物シリーズの第2弾です。

初めての梅 船宿たき川捕り物暦

著者:樋口有介
祥伝社文庫
2020年5月20日初版第1刷発行
本作は、『初めての梅 船宿たき川捕物暦』(2009年1月、筑摩書房刊)を改稿・修正したもの

カバーデザイン:フィールドワーク
カバーイラスト:卯月みゆき

●目次
初めての梅 船宿たき川捕り物暦
あとがき

本文371ページ

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『変わり朝顔 船宿たき川捕り物暦』(樋口有介・祥伝社文庫)(第1作)
『初めての梅 船宿たき川捕り物暦』(樋口有介・祥伝社文庫)(第2作)

樋口有介|時代小説ガイド
樋口有介|ひぐちゆうすけ|作家 1950年7月5日、群馬県前橋市生まれ。 國學院大學文学部哲学科中退。様々な職業を経験後に、昭和63年(1988年)、『ぼくと、ぼくらの夏』が第6回サントリーミステリー大賞の読者賞を受賞し、作家デビ...