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「ぼろ鳶組」エピソード1。黄金世代の火消に刮目せよ

黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零今村翔吾さんの文庫書き下ろし時代小説、『黄金雛(こがねびな) 羽州ぼろ鳶組 零』(祥伝社文庫)を紹介します。

羽州新庄藩火消頭・松永源吾と彼の率いる火消組「ぼろ鳶組」が、江戸の火事に立ち向かう痛快時代エンターテインメントには、エピソード1と呼ぶべき、始まりの物語がありました。

英雄の若かりし日々を描く、零の物語―十六歳の新人火消松永源吾は、逸る心を抑えられずにいた。同世代には才気溢れる火消の雛たちが台頭していたのだ。そんな折、毒を吐く戦慄の炎が発生。熟練の火消すら生還叶わぬ毒煙に、若輩は出動を禁じられ…。反発する源吾は、加賀鳶の御曹司、最年少火消頭、町火消の新星等くせ者揃いの面々と共に命を救うため立ち上がる!
(文庫カバー裏の紹介文より)

『黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零』特別カバー
本書は、通常の文庫カバーの上に、もう一枚帯を兼ねた別バージョンの装画が描かれた特別カバーが巻かれていました。
北村さゆりさんによる装画(カバーイラスト)は、通常版が飯田町定火消頭取で源吾の父の松永重内で、特別版が少年時代の源吾でしょうか。

さて、シリーズの舞台となっている安永三年(1774)時点で三十三歳になっている源吾が十六歳のとき、宝暦六年(1756)が本書「零」の時代設定となっています。

『黄金雛』と呼ばれた飯田町定火消の源吾のほかに、定火消の進藤内記(菩薩)、加賀鳶の大音勘九郎(黒烏)、町火消よ組の秋仁(稚蝗)、い組の漣次(小天狗)、に組の辰一(空龍)といった、人気、実力飛びぬけた新人火消が豊作の年となっていました。

「黄金の世代登場の三年前(宝暦三年)、当時は火消頭の伊神甚兵衛が率いる、尾張藩火消組が江戸の火消ヒーローでした。

物語は、徳川宗春の置き土産とも言うべき、甚兵衛の火消組の消滅を企む男たちの謀計により、尾張藩火消組は目黒郊外に呼び寄せられて不可解な火事に立ち向かいます……。

火元の家族や救出に向かった熟練の火消たちが生還できない、正体不明の毒煙を吐き出す火事が発生しました。

父親たちの世代が江戸の火消界を牛耳るもとで、若き火消たちが時には衝突しながらも、困難に当たっては協力して、優れた火消ぶりの片鱗を見せて活躍していきます。

源吾のライバルであり敵役の進藤内記にもスポットが当てられていて、その生い立ちや人間性も描かれていて『菩薩花』での二人の関係が納得いくものになりました。

本書では、源吾と妻深雪の出会いや、鳥越新之助、武蔵、彦弥などぼろ鳶組の面々もチラッと登場します。どこに出てくるか楽しみに読んでいくのも一興です。

「羽州ぼろ鳶組」シリーズでは、これまでも火事の読売(瓦版)や火消番付などの付録を付けてきましたが、今回は登場人物の年表が付いていて、世代を引き継いでいく江戸火消たちの活躍した時代がわかりやすくなっていて感心しました。

目次
序章
第一章 炎聖
第二章 死の煙
第三章 ならず者たちの詩
第四章 親子鳶
第五章 火消の乱
第六章 鉄鯢と呼ばれた男
終章
解説 中本哲也

■Amazon.co.jp
『黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零』(今村翔吾・祥伝社文庫)
『菩薩花 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾・祥伝社文庫)

今村翔吾|時代小説ガイド
今村翔吾|いまむらしょうご|時代小説・作家 1984年京都府生まれ。ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て、作家に。 2016年、「蹴れ、彦五郎」で第19回伊豆文学賞最優秀賞受賞。 2016年、「狐の城」で第23回九...