人よ、花よ、(上・下)|今村翔吾|朝日新聞出版
2025年5月24日(土)の東京新聞(中日新聞では5月25日)の朝刊・読書面「推し時代小説」のコーナーにて、本の紹介をさせていただきました。
「推し時代小説」は、書評家の細谷正充さん、文芸ジャーナリストの内藤麻里子さん、文芸評論家の木村行伸さん、そして私が週替わりで、おすすめの歴史時代小説を取り上げる連載企画です。
今回、私がご紹介したのは、今村翔吾さんによる歴史時代小説、『人よ、花よ、』(上・下、朝日新聞出版)です。
作品について
『人よ、花よ、』は、2022年8月15日から2024年3月31日まで、1年7カ月あまりにわたって朝日新聞に連載された長編小説です。そのため、単行本は上下巻に分かれて刊行されています。
本作は、南北朝時代に南朝方に仕えた、楠木正成の嫡男・正行(まさつら)の生涯を描いた歴史小説です。
楠木正行は、明治以降、御醍醐天皇に仕えて元勲とされた父・正成が「大楠公(だいなんこう)」と称されたのに対し、「小楠公(しょうなんこう)」と尊称された人物です。
注目したいのは、偉大な父を持ち、「忠義」とは何かに葛藤し、悩む若者として、多聞丸(後の正行)が描かれている点です。戦前の教育教材にされた英雄像とは異なり、南北朝の動乱を生き抜いた一人の若者としての姿が丁寧に描かれています。
民を思い、戦のない世を目指し、恋や冒険にも命を懸ける——そんな青春を生きる若者の姿を描いた、心に響く時代青春小説となっています。
今回取り上げた本

今村翔吾|時代小説ガイド
今村翔吾|いまむらしょうご|時代小説・作家1984年京都府生まれ。ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て、作家に。2016年、「蹴れ、彦五郎」で第19回伊豆文学賞最優秀賞受賞。2016年、「狐の城」で第23回九州さが大衆文学...
東京新聞「推し時代小説」バックナンバー

東京新聞掲載「推し時代小説」バックナンバー
東京新聞(中日新聞)読書欄「推し時代小説」コーナーの紹介東京新聞・土曜日(中日新聞は日曜日)の読書欄「推し時代小説」のコーナーを、細谷正充さん、内藤麻理子さん、木村行伸さんらと順番に担当しています。