武人の魂を持ち、戦国を生きた絵師海北友松の生涯を描く

墨龍賦葉室麟さんの長篇時代小説、『墨龍賦(ぼくりゅうふ)』(PHP文芸文庫)を献本いただきました。

本書は月刊文庫『文蔵』に連載された後、2017年2月にPHP研究所から単行本として刊行された作品の文庫化です。

海北友松(かいほうゆうしょう)は、狩野派を率いた狩野永徳、『松林図屏風』を描いた長谷川等伯と並び、安土桃山時代を代表する絵師の一人。

とはいえ、美術に疎い私には、小説にも描かれた前出の二人に比べて、葉室さんの作品に触れるまでは友松の作品も事績を知りませんでした。

晩年に建仁寺の「雲龍図」を描いた男・海北友松の生涯とは。――友松が若くして心ならずも寺に入れられた後、近江浅井家に仕えていた実家・海北家が滅亡する。御家再興を願いながらも絵師の道を選択した友松だが、その身に様々な事件が降りかかる。安国寺恵瓊との出会い、明智光秀との片腕・斎藤利三との友情、そして本能寺の変へ。武人の魂を持ち続けた桃山時代最後の巨匠と呼ばれる絵師を描く歴史長編。
(文庫カバー裏の紹介文より)

友松は、浅井長政の家臣・海北善右衛門綱親の三男として、天文二年(1533)に近江国坂田郡に生まれ、十三歳のときに東福寺に入れられました。仏門に入っても還俗して武士に戻りたいと願い、武術の鍛錬を欠かしませんでした。

友松は、絵を幕府御用絵師の狩野永仙(元信)に学び、元信はその絵を評価していました……。

武人の魂を持ち、家の再興を願い続ける一方で、絵での自己表現を追求する友松の心の葛藤を描いていきます。元信の孫、狩野源四郎(永徳)も友松の前に現れます。

その一方で、東福寺で毛利家での出世を願う恵瓊と出会い、明智光秀の腹心・斎藤内蔵助利三と友情を深めていきます。

読みどころの一つは、本能寺の変の動機を提示し、ストーリーに組み込んでいるところです。

2020年大河ドラマ「麒麟がくる」で、明智光秀への関心が高まっている今、その時代を楽しむ歴史時代小説として本書をお勧めします。

目次
墨龍賦
解説「美しさ」を描く小説 澤田瞳子

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『墨龍賦』(葉室麟・PHP文芸文庫)

永徳、等伯に続く、桃山時代最後の巨匠海北友松の生涯を描く
葉室麟さんの歴史時代小説、『墨龍賦(ぼくりゅうふ)』がPHP研究所から刊行されました。 海北友松(かいほうゆうしょう)は、近江の大名浅井長政の家臣の子に生まれながらも京の東福寺に入れられ、絵師になった。若き日の安国寺恵瓊と好誼を結び、...
葉室麟|時代小説ガイド
葉室麟|はむろりん|時代小説・作家 1951年1月25日 - 2017年12月23日。 福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。 2005年、「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞。 2007年、「...