双葉文庫の2025年5月の新刊をご紹介します。
今月は、北方謙三さんによる伝説の剣豪小説シリーズが第5巻『寂滅の剣』をもってついに完結を迎えます。
小杉健治さんの新シリーズ『市松お紺 下谷稲荷町自身番日月抄』もスタートしました。
風野真知雄さんの『わるじい義剣帖(五)ざまあみろ』は、シリーズ累計85万部を突破した人気作です。
また、佐々木裕一さんの『新・浪人若さま新見左近(十九)嘆きの凶刃』は、累計150万部突破の超人気シリーズの最新刊となっています。
『寂滅の剣 日向景一郎シリーズ(五)』
カバーデザイン:高柳雅人
カバーイラストレーションレーション:ゴトウヒロシ
あらすじ
ついに兄弟の対決が始まります。20年の歳月を経て、兄・景一郎と弟・森之助の勝負の時が迫っていました。そんな中、二人が身を寄せる薬種問屋の主・杉屋清六が、何者かに狙われます。どうやら杉屋の薬草園に、何かが隠されており、それを奪おうとする勢力が動いているようです。これまで以上に手練れの者たちが薬草園に集う中、弟に斬られることを望む日向景一郎は、20年間の想いにどう決着をつけるのでしょうか。
北方謙三さんの伝説的剣豪小説シリーズ、ここに堂々完結です。
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここに注目!
北方謙三さんといえば、『三国志』『水滸伝』、そして近年の『チンギス紀』など、中国史を舞台にした壮大な作品群で知られており、「中国小説の人」として認識されている方も多いかもしれません。広大な大地を舞台に、民族の存亡をかけて争う人々を描くその物語は、魂を揺さぶり、小説の醍醐味を再認識させてくれます。
北方さんが歴史小説を書き始めたのは1989年、日本の南北朝時代を描いた『武王の門』が最初です。以降、南北朝を舞台にした作品を精力的に執筆し、それらは「北方太平記」とも呼ばれています。剣豪小説「日向景一郎シリーズ」は、1993年に第1作『風樹の剣』を発表し、2010年に完結編となる『寂滅の剣』を上梓しました。
本シリーズは、かつてハードボイルド小説の旗手として数々の名作を世に送り出した北方さんならではの剣豪小説です。日向景一郎と日向森之助の兄弟がたどる壮絶な運命を描いた物語は、読者の根源的な感情にまで訴えかけてくる異次元の時代小説といえるでしょう。
時代小説にあまり親しみのない方にも、ぜひ手に取っていただきたい傑作です。
目次
第一章 兄弟
第二章 独楽
第三章 風裂
第四章 四囲
第五章 亀裂
第六章 刃筋
第七章 羅刹
第八章 父子
第九章 霖雨
第十章 無明
解説 池上冬樹
2025年5月17日 第1刷発行
本文479ページ
底本『寂滅の剣 日向景一郎シリーズ(五)V』(新潮文庫、2012年刊)を新装版刊行にあたり、加筆・修正をしたもの

『市松お紺 下谷稲荷町自身番日月抄』
カバーデザイン:重原隆
カバーイラストレーション:岡田航也
あらすじ
下谷稲荷町に住む辻六は、自身番の家主です。番人の元力士・朝松や元博徒・陣五郎らとともに、日々町内の雑事に取り組んでいます。ある日、町内の履物問屋・幕張屋に、柏木部屋の力士が怒鳴り込むという騒動が起こります。騒ぎを気にかけた辻六が幕張屋の若旦那から話を聞くと、女中と、将来を嘱望されながらも謎の死を遂げた柏木部屋の元力士との間に、何やら揉め事があったようです。
自身番を舞台に、さまざまな人間模様を描き出す、人情味あふれる時代小説シリーズの第一弾です。
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここに注目!
本作は、文化元年(1804年)三月から始まります。主人公の辻六は、下谷稲荷町にある自身番の大家で、45歳という設定です。下谷稲荷町は、唯念寺、成就院、宗源寺といった寺院が集まる寺門前町であり、稲荷町の名の由来となった下谷稲荷神社や、「恐れ入谷の鬼子母神」に続く「びっくり下谷の広徳寺」も近くにあります。
自身番の仕事は、町内の警備だけでなく、道や施設の補修、同心に捕らえられた者の一時収容・見張り、人別帳の管理など多岐にわたります。町の暮らしに密着し、時には騒動や揉め事にも巻き込まれる、非常に重要な役割です。
本作では、そんな自身番の活動を軸に、連作形式で多彩な人物たちの人間模様が描かれていきます。江戸の町人文化や人情に触れることのできる、味わい深い一冊です。
目次
第一話 市松お紺
第二話 愛犬シロ
第三話 文化元年九月十三日
第四話 吉原崩れ
2025年5月17日 第1刷発行
本文333ージ
文庫書き下ろし

『わるじい義剣帖(五) ざまあみろ』
カバーデザイン:國枝達也
カバーイラストレーション:室谷雅子
あらすじ
泥人形というわずかな手がかりから、お貞とおぎんを殺した下手人の正体を突き止めた愛坂桃太郎。しかし、その相手は大名ともつながりがある、そう簡単にはいかない人物でした。万が一にも孫の桃子に危険が及ぶようなことがあってはならないと、桃太郎は捕縛のために持ち前の悪知恵を働かせます。ところが、追い詰められた下手人は、予想を超える手を打ってきて――。
孫を背負って悪を斬る、大人気シリーズ第5弾です。
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここに注目!
愛坂桃太郎は、かつて幕府の腕利き目付として名を馳せ、現在は隠居の身です。孫の桃子にメロメロで、何よりも桃子の幸せを最優先に生きています。
事件は、八丁堀同心・雨宮五十郎が家主を務める貸家で起きました。女絵師・お貞が殺されたことで騒動が持ち上がります。桃太郎は推理力を駆使して下手人を突き止めますが、相手は在野の学者ながら大名に講義を行うほどの影響力を持ち、多くの弟子を抱える手強い存在でした。
桃太郎は悪知恵を巡らせて捕縛に挑みますが、逆に意外な反撃に遭います。果たして事件を解決できるのでしょうか。
桃子への溺愛ぶりが炸裂する桃太郎と、ユーモア満点のドタバタ劇が魅力の捕物時代小説。クセになる面白さを、ぜひご堪能ください。
目次
第一章 バカ高い湯銭を払う男
第二章 置いていく泥棒
第三章 馬は牛になれるか
第四章 亀は、ああも言う、こうも言う
2025年5月17日 第1刷発行
本文253ページ
文庫書き下ろし

『新・浪人若さま新見左近(十九) 嘆きの凶刃』
カバーデザイン:長田年伸
カバーイラストレーション:室谷雅子
あらすじ
宝永三年も夏を迎え、西ノ丸で紀州藩主となった徳川吉宗の訪問を受けた左近。徳川の治世にも新たな風が予感される中、お琴の店を訪れた左近は、城に戻る途上何者かに襲われる。小五郎が急ぎ駆けつけたことで難を逃れた左近には、刺客の太刀筋に覚えがあった。遠い過去の因縁を辿ろうとする左近だが、その相手はすでに亡くなっていたことを知り――。葵一刀流が悪を斬る! 大人気時代シリーズ第十九弾!!
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここに注目!
浪人新見左近を名乗り市中に出る、その正体は後の将軍徳川家宣。たびたび市中に繰り出しては、秘剣・葵一刀流でさまざまな悪を成敗してきました。五代将軍綱吉のたっての願い仮の世継ぎとして、西ノ丸に入り、平穏な日々を過ごしていました。
今回、新見左近こと徳川家宣は、昨年十月に第五代紀州藩主となり、名を改めた徳川吉宗と会いました。家宣は、紀州藩の改革を進めるという吉宗の話を聞いて、この国を背負う器だと感じたのでした。
この先、家宣と吉宗はどのような関係を築いていくのか、興味が湧いてきました。
その日も左近は市中のに出て、お琴の店を訪れた帰りに何者か襲われました。しかし、刺客に太刀筋には覚えがあり、かつて左近が悪事を暴いて成敗した旗本の剣術指南役だった剣客と同じものでしたが……。
目次
第一話 嘆きの凶刃
第二話 名刀の縁
第三話 他人の空似
第四話 秘剣・鬼突き
2025年5月17日 第1刷発行
本文275ページ
文庫書き下ろし
