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前火盗改役と仲間たちが、深川で娘たちを殺める悪を炙り出す

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『江戸の雷神 死化粧』|鈴木英治|中公文庫

江戸の雷神 死化粧鈴木英治さんの文庫書き下ろし時代小説、『江戸の雷神 死化粧』(中公文庫)を紹介します。

本書は、火付盗賊改役をつとめる、伊香雷蔵(いこうらいぞう)を主人公にした、痛快時代小説『江戸の雷神』『江戸の雷神 敵意』に続く、シリーズ第3作です。

深川で娘が惨殺された。もう四人目だ。続いて刺殺された男の死体が吾妻橋近くで見つかる。その頃、前火盗改役の伊香雷蔵は、わけありの剣の達人・安斎六右衛門、元盗賊の玄慈、幼馴染みで拳法使いの女医・長飛とともに、「よりよい江戸」をつくらんとしていたが……。個性的な仲間たちが奮闘する痛快時代小説シリーズ!

(『江戸の雷神 死化粧』カバー裏の紹介文より)

伊香雷蔵はその勇猛さから「江戸の雷神」と呼ばれて町人に人気でしたが、その後罷免されました。今は今枝道場で師範代をつとめています。
(その経緯を詳しく知りたい方は、『江戸の雷神 敵意』をお読みください)

雷蔵は、陸奥五本松仁和家で使番をつとめていた浪人の安斎六右衛門を、元盗賊の匠小僧で今は牛込改代町にある帆縷寺(はんるじ)の重職玄慈(げんじ)に引き合わせました。
(架空の藩ですが、陸奥二本松丹羽家がモデル)

「あのときの怖さは心に染みつき、いつまでたっても消えなかった。俺はあの日を境に、盗人から足を洗う決意をした。だから、あんたは恩人といえる」
「わしの剣が、おぬしの役に立ったということならなによりだ。ところでおぬしは、よりよい江戸をつくるための仲間だと聞いたが」
「その通りだ」
 肩を張って玄慈がうなずいた。
 
(『江戸の雷神 死化粧』P.42より)

ところが、六右衛門と玄慈は既に面識がありました。
玄慈は、かつて匠小僧という名の盗賊だったころに両替商に忍び込み、そこで鉢合わせしたのが真明眼流の達人で用心棒の六右衛門でした。
二人は、雷蔵から、雲に乗り、両手にバチを持ち太鼓を打ち鳴らしている雷神の根付をもらい、「よりよい江戸をつくための仲間」となりました。

同じ時期、深川三間町の狭い路地で若い娘の骸が発見されました。
四人目の犠牲者となった娘は、袈裟懸けで一刀のもとに斬り殺されて、ほかの娘たちと同様に、仰向けにされ、丹念に死化粧(しにげしょう)を施されていました。
娘の身元はすぐに判り、同じ町内にある味噌醤油問屋の奉公人で、おようという十八の娘だといいます。

おようは孤児のときに帆縷寺に来て、玄慈によって育てられました。やがて面倒見がよくて明るい娘となり、どこに出しても恥ずかしくない娘に育ち、奉公先でも働き者で性格も明るく皆から好かれていました。

玄慈は、おようを殺した下手人を挙げるために独りで探索を始めました。
一方、雷蔵と六右衛門は、吾妻橋近くの川端で男を刺殺したという嫌疑がかけられて入牢した、蕎麦切りを得意にする若者枡吉を救うことを誓い、聞き込みをします。
やがて、玄慈の探索は進展し、下手人に迫りますが……。
物語はミステリータッチで進み、雷蔵、六右衛門、玄慈は、それぞれの形で、相次いで起こった事件に関わっていきます。

本書では、「鬼平」こと長谷川平蔵を想起させる魅力的な火付盗賊改役、「江戸の雷神」と町人から呼ばれて敬愛される、雷蔵の人物造形が圧巻で、大いに惹きつけられます。

鮫ヶ橋谷町で富士診庵という医療所を開く、若い蘭方の女医、長飛(ちょうひ)を加えた「よりよい江戸をつくらんとする」仲間たちも個性的に奮闘していきます。

時代小説を面白くする要素がギュッと詰まっていて、読み出したら途中で止められない、痛快さが癖になる本シリーズから目が離せません。刮目の時代小説です。

江戸の雷神 死化粧

鈴木英治
中央公論新社 中公文庫
2023年2月25日初版発行

カバーデザイン:五十嵐徹(芦澤泰偉事務所)
カバーイラスト:おおさわゆう

●目次
第一章
第二章
第三章
第四章

本文357ページ

書き下ろし

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『江戸の雷神』(鈴木英治・中公文庫)
『江戸の雷神 敵意』(鈴木英治・中公文庫)
『江戸の雷神 死化粧』(鈴木英治・中公文庫)

鈴木英治|時代小説ガイド
鈴木英治|すずきえいじ 1960年、静岡県沼津市生まれ。明治大学経営学部卒業。 1999年、「駿府に吹く風」(『義元謀殺』に改題して刊行)で第1回角川春樹小説賞特別賞を受賞。 2011年、第11回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞。 時代...