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思い悩む幼馴染みを救うため、悪の巣食う寺へ潜入する英之介

『おんな与力 花房英之介(三)』|鳴神響一|双葉文庫

おんな与力 花房英之介(三)鳴神響一さんの文庫書き下ろし時代小説、『おんな与力 花房英之介(三)』(双葉文庫)をご恵贈いただきました。

不慮の事故で亡くなった兄に成り代わって、男装して花房英之介として町奉行所与力となった妹の志乃を主人公にした、痛快時代小説シリーズの第三弾です。

町娘を虜にする美男与力・花房英之介。頭脳明晰、剣も達者な英之介の正体はなんと、十八歳の乙女――死んだ兄に成り代わって生きる花房志乃なのだった。命懸けの秘密を胸に北町奉行所で活躍する英之介は旧友から、寺社奉行の家臣である夫が何事かに思い悩み命を落としかねないとの相談を受ける。友を救うべく英之介は、娘姿になりを変え、寺社役付同心に探りを入れると思わぬ事実が明らかに。だが探索を進めるうち、裏で渦巻くどす黒い陰謀に巻き込まれていき……!? 華麗に痛快、大好評シリーズ第三弾!

(本書カバー裏の紹介文より)

ある日、非番の英之介のもとをに、御先手組与力で、いまは火盗改めの役に就いている、親友・熱田雄之進の妹・美緒がやってきた。

美緒の仲の良い友達滝代が、寺社奉行の御用人を務める夫のことを心配して悩んでいるので、相談に乗ってほしいと頼まれました。

英之介は、滝代と会って話を聞くことになりました。

「やはり志乃さまとよく似ておいででございますね」
 嬉しそうに滝代は言った。
 英之介の胸は収縮した。
「妹を……志乃の顔を覚えておいでですか」
 動揺を悟られぬように英之介は平板な声で訊いた。
「忘れるなんて……とんでもないですわ。わたくし、志乃さまに何度もお助け頂いているのです」

(『おんな与力 花房英之介(三)』 P.27より)

志乃は、滝代といっしょに琴の稽古に通っていて、何かと滝代を励ますことが多かったようですが、英之介に生まれ変わったときに、志乃時代の思い出をすっかり忘れてしまっていました。

 寺社奉行は全国の寺社と寺社領の犯罪を取り締まり、訴訟を管轄する重要な役職であった。さらに僧侶や神官、楽人、連歌師、陰陽師、古筆見(古筆の真偽や筆者などの鑑定家)、碁打ち、将棋指しなどを支配する。
 すぐれた能力を持つ大名から選ばれる奏者番の中から、さらに選び抜かれた能吏が就く職が寺社奉行であった。若年寄、老中へと続く出世街道とも言われている。

(『おんな与力 花房英之介(三)』 P.34より)

滝代の夫は、用人と納戸方の束ねだけでも大変に忙しく、寺社方のお役目は任じられていないと言います。

ところが、最近、「ほうしょうが、ほうしょうが」と寝言も何度か漏らしていると。「ほうしょう」とは何のことなのか、英之介は極秘に調べることにしました。

町に諜知に行くときの、辰巳芸妓の花吉、浮雲花魁から町の噂を聞くために吉原へ赴くときの町医者月岡夕庵、正体を隠して敵と戦うときの女武芸者清水雪緒と、華麗に変装する英之介。

なりきりの変身ぶりも板についていました。今回、英之介は富商の娘お花になりきって、不審で怪しげな寺に潜入します。

毎回、志乃のことをよく知る者も登場し、女であることが見破られないのか、ハラハラドキドキしながらも、痛快な活躍ぶりを楽しんでいます。

おんな与力 花房英之介(三)

鳴神響一
双葉社・双葉文庫
2021年10月17日第1刷発行

カバーデザイン:長田年伸
カバーイラストレーション:山本祥子

●目次
第一章 相談ごと
第二章 一攫千金
第三章 たくらみ
第四章 潜入
第五章 責務

本文283ページ

文庫書き下ろし。

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『おんな与力 花房英之介(一)』(鳴神響一・双葉文庫)
『おんな与力 花房英之介(二)』(鳴神響一・双葉文庫)
『おんな与力 花房英之介(三)』(鳴神響一・双葉文庫)

鳴神響一|作品ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家 1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。 2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。 2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。 ■...