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酒呑みの元花魁が、吉原で起きた殺人事件のからくりを解く

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『姉さま河岸見世相談処 未練づくし』|志坂圭|ハヤカワ時代ミステリ文庫

姉さま河岸見世相談処 未練づくし志坂圭(しざかけい)さんの文庫書き下ろし時代小説、『姉さま河岸見世相談処 未練づくし』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)をご恵贈いただきました。

元は大見世の花魁で今は吉原の場末で局見世・千歳楼を営む楼主の、七尾姉さんが、吉原で起こった難事件を解決する吉原捕物シリーズの第2弾です。

人情に厚く酒好きの元花魁、七尾姉さんは、なにかと吉原の騒動に巻き込まれがち。ある日、妓楼で客がなんと首を?ぎ取られて怪死した! 胴体がこっちで、首玉があっち、人間業とは思えぬが、客と寝ていた女郎がしょっ引かれそうになる。細腕でそんなことができるはずがない、このからくり暴いてみせましょう。七尾姉さんが「火のない場で起きた火事騒動」「道中差しでの不可解な刺殺事件」などの謎に挑む吉原事件帖。
(『姉さま河岸見世相談処 未練づくし』カバー裏の内容紹介より)

七尾姉さんの身の回りの手伝いや小間使いをしていた抱え娘のたまきが風邪をこじらせて亡くなり、成仏できないで七尾姉さんの前に現われるようになっていました。
たまきの姿は、他の人の目には留まりません。

ある晩、千歳楼で独りで晩酌を楽しんでいた七尾姉さんのところに、四日前に亡くなった女郎の牧穂が、たまきと一緒に訪ねてきました。

「姉さん、何とかしてください。わっち、このままでは成仏できんせん。わっちの骸はどうなった思いますか? 浄閑寺ですよ。筵に巻かれて投げ込まれてそれっきりですよ」
「まあ、そうじゃろうな。犬や猫のように葬ることで祟らんようにするわけじゃからな」「祟りますよ。わっちの骸見ましたか?」

(『姉さま河岸見世相談処 未練づくし』P.32より)

浄閑寺は、吉原からほど近い三ノ輪にある浄土宗の寺で、吉原で不浄の死を遂げた遊女の「投げ込み寺」として知られています。
七尾姉さんの古い友達もたくさん眠っていて、年末に近づく師走に参拝に行くようにしていました。

浄閑寺|トップページ
浄土宗榮法山清光院浄閑寺の公式ホームページです。

牧穂は、寝ているところを顔に着物を被せられて首を絞められたうえに、火事の火で焼かれました。
ところが、誰に殺められたかわからず、成仏できない牧穂が、七尾姉さんに下手人を見つけてくれるように依頼されました。

牧穂本人によると、欲張りで意地汚く、そのせいで他の女郎衆とたびたび諍いがあり、「わっちを恨んでいる人を数えると両手でも足りんせん」と自慢げに言うほど、嫌われていました。

誰が女郎を殺して、なぜ火を付けたのか。
殺しから火が出て大騒ぎになるまでなぜ一時もかかったのか。
その時間に火元にはほとんどだれも近づかなかったはずなのに……。
次々に謎が出てきました。

七尾姉さんは、吉原を縄張りに、お上から十手を預かる文吉親分からも知恵を借りられます。

吉原近くの日本堤の草むらで六十半ばの爺さんが道中差で刺された骸が見つかった事件では、不審なことに、爺さんの腕や足に紐で縛られたような痕がありました。

また、回し部屋で女郎を待っていた客の男が首をもぎ取られて死んでいる猟奇的な事件も起こりました。
知り合いの女郎が下手人として、文吉親分にしょっ引かれそうになり、七尾姉さんが事件の真相に挑戦することに……。

吉原で次々に起こる事件には、アリバイ崩しや消えた凶器捜しなど、さまざまなからくりが仕掛けられていました。

七尾姉さんは大好きな酒を呑むと、不思議と推理が冴え、知恵が湧いてきますが、いつも飲み過ごしてしまい武勇伝と失敗に事欠きません。
しかし、アラフォーながら二十代にしか見えない美貌に加え、その言動は憎めず、負けん気が強くて人情味もあり、魅力的なヒロインです。

七尾姉さんと文吉親分の関係も見ものです。狐と狸(いや猿でしょうか)の化かし合いのように、お互いに相手の力を借りようとする駆け引きと、丁々発止の掛け合いの妙が楽しめます。

本書で登場する女郎の生まれが安房勝山(千葉南部)で、父親が鯨組の頭領だったという話を聞いて、著者の『沖の権左』の舞台を想起しました。
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姉さま河岸見世相談処 未練づくし

志坂圭
ハヤカワ時代ミステリ文庫
2021年6月15日発行

カバーイラスト:合田里美
カバーデザイン:大原由衣

●目次
嫌われ女郎の焼き骸ひとつ
日本堤に男骸ひとつ
首?げ男の骸ひとつ
居続けの客さまの骸ひとつ

本文375ページ

文庫書き下ろし作品。

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『姉さま河岸見世相談処』(志坂圭・ハヤカワ時代ミステリ文庫)(第1弾)
『姉さま河岸見世相談処 未練づくし』(志坂圭・ハヤカワ時代ミステリ文庫)(第2弾)
『沖の権左』(志坂圭・ディスカヴァー文庫)

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