『立つ鳥の舞 くらまし屋稼業』|今村翔吾|時代小説文庫
今村翔吾さんの文庫書き下ろし時代小説、『立つ鳥の舞 くらまし屋稼業』(時代小説文庫)を入手しました。
本書は、七箇条の掟を守れば、どんな人でも、何時でも、如何なる場所からでも、晦ませることを請け負う、「くらまし屋」稼業の痛快な仕事ぶりを描いた、人気エンタメ時代小説シリーズの第7弾です。
「葉月十二日、巳の刻。湯島天神内宮地芝居の舞台に、瀬川菊之丞を連れてきて欲しいのです」――濱村屋の年若い主人・吉次からこう切り出された平九郎は、驚きのあまり絶句した。希代の女形であった菊之丞は、吉次の義父で、五年前すでに亡くなっていた。そして実は、吉次は赤也の義弟であったのだ……。赤也の隠されたもうひとつの人生に渦まく陰謀。平九郎たちが仲間のため命を賭して闘う天下無敵の時代エンターテインメント。三十万部突破の書き下ろし大人気シリーズ、第七弾。
(本書カバー裏の紹介文より)
宝暦四年(1754)、文月。
くらまし屋の堤平九郎は、芝居の濱村屋の若き当主・二代目瀬川吉次より、不審な晦ましの依頼を受けました。
来月の葉月十二日、湯島天神で行われる宮地芝居の舞台に、瀬川菊之丞を連れてきて欲しい、あの世から晦ましてくれと、切り出されました。
吉次の義父である菊之丞は、寛延二年(1749)九月二日に世を去っていました。
吉次から訳を聞いた平九郎は、死人を連れ戻すことはできないと依頼を断りますが、その宮地芝居は幕閣も動いているらしい大掛かりなもので、その経緯が気になっていました。
「吉次さん……?」
赤也はぎょっとして振り返った。そこに立っていたのは、でっぷりと肉置き豊かな年増。?然として景色がゆっくりと流れる中、視線を下に落とすと酒の載った盆を手にしている。先程までは用でもあって奥に引っ込んでいたのだろう。この店で働いている者はまだ他にもいたのだ。
「ええと、この人は赤……」
「人違いじゃねえですか」
赤也は遮るように言った。(『立つ鳥の舞 くらまし屋稼業』 P.9より)
春木町の中間部屋の賭場が開くまで、時間つぶしに入った茅町の煮売り酒屋で、赤也は年増の女に、吉次と呼ばれ、いたたまれなくなって店を出ました。
実は、赤也は、くらまし屋の一人として平九郎と行動を共にする前、「吉次」と呼ばれ、人気を博した瀬川菊之丞の養子で、後々は濱村屋を継ぐとみられていました。
菊之丞の晦ましの依頼をした吉次は、赤也の年の離れた義弟でした。
赤也は何故、芝居の世界を捨てて、くらまし屋の一員となったのか、隠された過去が明らかになっていきます。
赤也は、くらまし屋の仕事を成し遂げ、窮地の義弟・吉次を救うことができるのでしょうか。
くらまし屋に対して、凄腕の刺客「虚(うつろ)」の一味の榊惣一郎・初谷男吏・阿久多に、御庭番の曽和一鉄、道中同心の篠崎瀬兵衛など、シリーズでおなじみの登場人物たちも絡んできて、痛快な時代エンターテインメントが繰り広げられていきます。
立つ鳥の舞 くらまし屋稼業
今村翔吾
角川春樹事務所・時代小説文庫
2021年2月8日第一刷発行
装画:おおさわゆう
装幀:芦澤泰偉
●目次
序章
第一章 濱村屋
第二章 芝居合戦
第三章 品川南本宿にて
第四章 お節介焼き
第五章 噂の濁流
第六章 おんなの矜持
第七章 菊之丞
終章
本文327ページ
文庫書き下ろし。
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『立つ鳥の舞 くらまし屋稼業』(今村翔吾・時代小説文庫)(第7弾)
『くらまし屋稼業』(今村翔吾・時代小説文庫)(第1弾)