金銀と塩硝が眠る、飛騨の“幻の城”に織田信長の魔の手が…

『天離り果つる国 上』

天離り果つる国 上宮本昌孝さんの長編歴史時代小説、『天離り果つる国(あまさかりはつるくに)』(PHP研究所)の上下巻をご恵贈いただきました。

『剣豪将軍義輝』『ふたり道三』など、伝奇色豊かで夢中で読める、戦国時代エンターテインメント小説を発表してきた著者の最新作で、『文蔵』に連載中から、単行本になったら、一気読みしようと心待ちにしていた作品です。

戦国武将が喉から手が出るほど欲しいもの……金銀と、鉄炮火薬に欠かせない塩硝。それらは天離る地で豊富に産するという。
天下の覇者へと邁進する織田信長に送り込まれたのは、津田七龍太(しちろうた)。天才軍師・竹中半兵衛の愛弟子だ。
白川郷では、七龍太の出生に関わる思いがけない出逢いが待っていた。
(本書カバー帯の紹介文より)

舞台は、越中と加賀に国境を接する飛騨の白川郷です。
雲があたって帰されてしまうほどの高山に築かれた城、「帰雲城(かえりくもじょう)」がありました。飛天の城とも呼ばれ、山紫水明の地でした。

領主は、内ケ嶋氏理(うちがしまうじまさ)で、愛娘の紗雪のほか、正室茶之との間に夜叉熊と亀千代の二人の男子がいました。

茶之は、北国の一向一揆の重要拠点である越中礪波郡井波の瑞泉寺の息女で、内ケ嶋氏は一向宗との共存共栄を図ってきました。

白川郷は、金山、銀山が複数存在し、鉄炮に必要な黒色火薬の原料となる塩硝を取れる地でした。内ケ嶋氏は、その大半を本願寺と全国の一向一揆衆に密かに提供していました。

「どのような城だろうなあ……」
 美男が、澄んだ山の気をたっぷり吸ってから、期待感に満ちた一言を、一緒に吐き出した。
「かような天離る鄙の地に、まことに城など築かれているのだろうか」
 十助の言う“天離る鄙の地”とは、空の彼方に遠く離れた辺境の地という意である。
 
(『天離り果つる国 上』 P.30より)

物語は、天離る鄙の地・白川郷に、廻る国修行中の若き日の竹中半兵衛と家臣の喜多村十助がやってくるところから始まります。

二人はそこで、刺客に襲われて母を殺された赤子を助けました。

それから十余年が経った永禄十三年の二月。
将軍足利義昭を奉じて上洛し、畿内・近国の支配圏拡大を続ける織田信長から、二十一カ国の大名・国衆へ上洛要請の触状が送られ、白川郷の内ケ嶋家にも届きました。

風雲急を告げる中、白川郷に秀吉の軍師竹中半兵衛の愛弟子、津田七郎太が、信長の使者としてやってきました……。

これまで歴史時代小説で取り上げれることがなかった、戦国時代の飛騨・白川郷が舞台
信長と本願寺の対立に巻き込まれる、内ケ嶋家。
今宵は、ワクワクドキドキ、読み始めたら止められない、エンターテインメント時代小説にどっぷりとはまりたいと思います。

天離り果つる国 上

宮本昌孝
PHP研究所
2020年10月22日第1版第1刷発行

装幀 芦澤泰偉
装画 大竹彩奈

●目次
上巻
飛天の城
紅菊の女
覇者の手
政教の罅
信長の使
恋風の起
叡山の怨
安土の猜
風雲の会
辺土の虚
共生の郷
父娘の謀
艶絶の笑
怨笛の譜
雪裡の談
師表の卒
離愁の刻

本文413ページ

初出:月刊文庫『文蔵』2016年7月号から2019年12月号の連載に、加筆・修正したもの。

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『天離り果つる国 上』(宮本昌孝・PHP研究所)
『天離り果つる国 下』(宮本昌孝・PHP研究所)
『剣豪将軍義輝 上 鳳雛ノ太刀 新装版』(宮本昌孝・徳間文庫)
『ふたり道三 上』(宮本昌孝・祥伝社文庫)

宮本昌孝|時代小説ガイド
宮本昌孝|みやもとまさたか|時代小説・作家 1955年、静岡県生まれ。日本大学芸術学部卒業。手塚プロ勤務などを経て、執筆稼働に専念。 1995年、『剣豪将軍義輝』で一躍脚光を浴びる。 2015年、『乱丸』で第4回歴史時代作家クラブ賞...