江戸から明治へ移ろう時代を映す、本格時代ミステリの第2弾

『雪旅籠』

雪旅籠戸田義長さんの連作時代小説、『雪旅籠(ゆきはたご)』(創元推理文庫)を入手しました。

著者のデビュー作『恋牡丹』に続く、同心親子の推理が冴える、本格時代ミステリの第2弾です。

若き日より『八丁堀の鷹』と謳われてきた北町奉行所定町廻り同心の戸田惣左衛門と、芝居好きの息子清之介。同心親子が、江戸から明治へと移り変わる時代の波に翻弄されながらも、数々の事件に真摯に立ち向かう。大老井伊直弼が暗殺された桜田門外の変を題材にした「逃げ水」、雪に閉ざされた旅籠での密室殺人事件の謎を解く「雪旅籠」など、滋味溢れる全八編。文庫オリジナル。
(本書カバー裏紹介より)

戸田惣左衛門は、老齢の北町奉行所定町廻り同心で、『八丁堀の鷹』と謳われていました。若い頃から、悪人の捕縛や吟味に辣腕を振るい続け、優れた狩猟能力を持つ鷹になぞらえて渾名されていました。

厳しい二つ名とは別に、幼い頃から密かに園芸を趣味にし、植木師になることを夢見ることもあったほどで、最近は盆栽に熱中していました。

昌平坂学問所に通う息子の清之介は、剣術の稽古をさぼり、父に内緒で猿若町通いを続ける、大の芝居好きです。

「よもや右馬助殿に何か――」
「戸田様!」
 出し抜けに美輪が惣左衛門の足元に跪いた。惣左衛門を見上げる美輪の双眸から大粒の涙が溢れ出る。」
「どうか弟をお助けくださいませ。なにとぞお願い申し上げます「

(『雪旅籠』「逃げ水」P.53より)

短編「逃げ水」では、桜田門外の変をめぐり、駕籠周りで警固をしていた、彦根藩士今村右馬助に主君殺しの嫌疑をかけられました。右馬助の姉美輪からの懇請で、密かに想いを寄せる惣左衛門は、冤罪を晴らすべく動きました……。

幕末から明治へ、移り行く時代を背景に、犯行方法の再現や密室の謎など、推理が楽しい本格時代ミステリの登場です。

後書きによると、本作に収録された8編の短編は、『恋牡丹』に収録された4編、戸田惣左衛門・清之介の親子二代にわたる十五年の物語の間隙を埋めるような位置づけにあるそうです。

作品の世界をもっと味わいたく、『恋牡丹』と合わせて、時系列に読んでみたくなりました。

エラリー・クリーンの『Xの悲劇』以来、四十年来の本格ミステリ&創元推理文庫フリークという著者に大きな共感を覚えました。

雪旅籠

戸田義長
集英社 創元推理文庫
2020年7月22日初版

「島抜け」〈Webミステリーズ!〉(2018年10月24日)に初出。
「埋み火」「逃げ水」「島抜け」「出養生」「雪旅籠」「天狗松」「夕間暮」は文庫書き下ろし。

カバーイラスト:西山竜平
カバーデザイン:長崎綾(next door design)

●目次
埋み火
逃げ水
神隠し
島抜け
出養生
雪旅籠
天狗松
夕間暮

後書き

本文300ージ

■Amazon.co.jp
『恋牡丹』(戸田義長・創元推理文庫)(第1作)
『雪旅籠』(戸田義長・創元推理文庫)(第2作)

戸田義長|時代小説ガイド
戸田義長|とだよしなが|時代小説・作家 1963年、東京生まれ。早稲田大学卒業。 2017年、第27回鮎川哲也賞に投稿した『恋牡丹』が最終候補作となり、2018年、応募作を改稿した『恋牡丹』でデビュー ■時代小説SHOW 投稿記...