滝夜叉、酒吞童子、坂田金時、晴明。オールスター平安絵巻

『童の神』

童の神今村翔吾さんの長編時代小説、『童の神』(ハルキ文庫・時代小説文庫)を入手しました。

デビューから3年で、早くも著作累計100万部突破という、飛ぶ鳥を落とす勢いの著者。第10回角川春樹小説賞を受賞し、第160回直木賞の候補作となった、出世作が文庫化されました。

「世を、人の心を変えるのだ」「人をあきらめない。それが我々の戦いだ」――平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛……などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人から蔑まれていた。一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。そして遂に桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むが――。差別なき世を熱望し、散っていた者たちへの、祈りの詩。
(本書カバー裏紹介より)

単行本刊行時に読みました。
ワクワクドキドキが止まらないエンターテイメント性、史実を取り入れながらも物語性豊かな作品を堪能し、「2018年時代小説ベスト10」の第2位に推したことを覚えています。

2018年時代小説ベスト10 単行本部門
「時代小説SHOW」による、2018年単行本時代小説のベスト10を発表します。 対象は、奥付表記(一部Amazonでの発売日)が2017年10月1日から2018年9月30日発行の時代小説作品で、単行本として刊行されたものになります。 ...

「童(わらわ)を御存知ですか?」
「うむ……当家にはおらんが」
 童とは大陸から入ってきた言葉で、「雑役者」や「僕(しもべ)」を意味する。家で身の回りの世話をする奴(やっこ)をそう呼称すると同時に、本来は朝廷に屈するべきという意味合いを込めて、化外の民をそのように呼ぶこともある。
「土蜘蛛、鬼、夷……童と呼ばれる者たちを臣下に迎え、天下和同を目指します」

(『童の神』P.16より)

安和二年(969)、安倍晴明のもとに、左大臣・源高明の従者をつとめる、藤原千晴が訪ねてきました。左大臣は童も含めた民の一統を考えていて、晴明が伝手のあるという滝夜叉を通じて、大和葛城山の土蜘蛛、丹波大江山の鬼にも参陣を請うてほしいという話をもたらしました。

千以上の敵に対し、千晴に橘繁延、源連を含めて兵力は二百足らず、童を加えても劣勢が予想される情況に、勇将の源満仲・頼光父子が同心するといいました。

千晴らは蜂起して御所を目指しますが、味方の裏切りに遭って敗れました。後に「安和の変(あんなのへん)」と呼ばれる政変です。

「三十年前に夢を見た。その夢に今一度賭けたまで。こうなる危険は孕んでいても、機会とあらばやらぬ訳にはいかぬ。子の代までお預けになったようだがな」
「くくく……孫の代かもしれぬよ」

(『童の神』P.40より)

童たちの夢も破れましたが、しかし、諦めてはいません。
天延三年夏、日食が起こった日に、桜暁丸(おうぎまる)が越後で生まれました……。

初読時の興奮が甦ってきました。
桜暁丸の成長と活躍に目が離せません。

安倍晴明、滝夜叉、頼光の四天王(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)、酒呑童子、盗賊袴垂……、平安時代を代表するオールスターが登場する、スケールが大きな平安伝奇エンターテインメントを心行くまで楽しみたいと思います。

童の神

角川春樹事務所 ハルキ文庫・時代小説文庫
2020年6月18日第一刷発行

単行本『童の神』(2018年10月・角川春樹事務所刊)を文庫化したもの

装画:北村さゆり
装幀:芦澤泰偉

●目次
第一章 黎明を呼ぶ者
第二章 禍の子
第三章 夜を翔ける雀
第四章 異端の憧憬
第五章 蠢動の季節
第六章 流転
第七章 黒白の神酒
第八章 禱りの詩
終章 童の神
受賞の言葉
文庫版あとがき

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『童の神』(今村翔吾・ハルキ文庫・時代小説文庫)

今村翔吾|時代小説ガイド
今村翔吾|いまむらしょうご|時代小説・作家 1984年京都府生まれ。ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て、作家に。 2016年、「蹴れ、彦五郎」で第19回伊豆文学賞最優秀賞受賞。 2016年、「狐の城」で第23回九...