2023年時代小説SHOWベスト10、発表!

2018年時代小説ベスト10 単行本部門

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「時代小説SHOW」による、2018年単行本時代小説のベスト10を発表します。

対象は、奥付表記(一部Amazonでの発売日)が2017年10月1日から2018年9月30日発行の時代小説作品で、単行本として刊行されたものになります。

1 信長の原理
信長の原理

垣根涼介
KADOKAWA
発売日:2018/8/31

♪ 神仏さえ恐れていなかった信長が、蟻の行列を見ていて、“この世を支配する何事かの原理”に気付き、やがてその原理に囚われていきます。「パレートの法則」として知られる組織構造の原理を戦国に援用した視点が独創的です。確率論に着目した『光秀の定理』に続く、論理的でかつ現代的という斬新な手法で信長の生涯をトレースしたエンターテイメント戦国小説。原理から導かれた、信長の人物像や織田軍団の武将たちの働き、本能寺の変など、納得感のある帰結であり、知的興奮を覚えます。

2 童の神
童の神

今村翔吾
角川春樹事務所
発売日:2018/9/28

♪ 平安の時代、鬼、土蜘蛛、滝夜叉、山姥と呼ばれ、京人から蔑まれていた者たち「童(わらべ)」がいました。越後の豪族の家に生まれた桜暁丸(おうぎまる)は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓い、童たちとともに朝廷軍と戦います。安倍晴明、源頼光とその四天王、怪盗袴垂など、平安オールスターキャストで繰り広げられるエンターテイメント絵巻に血沸き肉躍る大興奮で一気読みする面白さです。

3 襲来(上・下)
襲来(上)

帚木蓬生
講談社
発売日:2018/8/1

♪ 日蓮の従者として、対馬で蒙古襲来の惨劇を目撃した男、見助(けんすけ)の生涯を描いた歴史時代小説。戦国から明治初頭までの隠れキリシタンを描く大河小説『守教』に続いて、苦難に遭う人々と宗教のかかわりという重いテーマを扱いながらも、読み味のよい作品になっています。安房の漁村に孤児として育った見助が無私に日蓮を慕い、幾多の困難に前向きに立ち向かいます。日蓮をはじめ、周りの人たちに愛されていくのが何とも魅力です。

4 星夜航行(上・下)
星夜航行(上)

飯嶋和一
新潮社
発売日:2018/6/29

♪ 豊臣秀吉の朝鮮出兵を描いた歴史時代小説。主人公の沢瀬甚五郎は、家康に背き一向一揆に加わった家に生まれ、その後許され嫡男の三郎信康に小姓として仕えますが、罪なく徳川家を追われます。商人となり、堺、薩摩、博多、呂宋と海外交易で成功を収めながら、秀吉の天下統一、朝鮮出兵という歴史の波に翻弄されていきます。物語では朝鮮での戦いが克明に記されています。侵略される側の苦難と悲惨さ、侵略する武将たちの無力感、秀吉の老醜ぶりが浮き彫りになっていく、圧巻の歴史小説です。甚五郎の凛とした生き様が一服の爽快感を与えます。

5 葵の残葉
葵の残葉

奥山景布子
文藝春秋
発売日:2017/12/13

♪ 幕末の尾張藩主徳川慶勝や会津藩主松平容保ら、分家の高須藩出身の四兄弟(前述のほかに徳川茂栄・松平定敬)の目を通して、激動の時代を描いた歴史時代小説。幕府側や新政府側といった一方的な視点からではなく、四者四様の性格や考え方、置かれている立場の違いが描き分けられていて、複眼的に幕末維新を俯瞰することができます。

6 大友の聖将
大友の聖将

赤神諒(あかがみりょう)
角川春樹事務所
発売日:2018/7/12

♪ 『大友二階崩れ』に続く、豊後国大友家を描いた戦国時代小説です。柴田治右衛門(後の天徳寺リイノ)は大友宗麟の近習となり順調に出世をしていきますが、愛する女性マリアのために主君を裏切ります……。近習時代の治右衛門は類まれな槍の腕と美貌を持ちながらも、平然と人を殺す「悪鬼」と呼ばれる存在でした。欲望のままに生きてきた治右衛門ですが、やがてマリアとキリスト教の司祭トルレスと出会い、幸せと真の信仰に触れます。二十年後、苦境に陥った大友家のために戦う、後半の戦闘シーンも見どころの歴史エンターテイメントです。

7 影ぞ恋しき
影ぞ恋しき

葉室麟
文藝春秋
発売日:2018/9/13

♪ 『いのちなりけり』『花や散るらん』に続く咲弥と蔵人三部作最終巻です。赤穂浪人の吉良邸討ち入りから四年が経ち、妻咲弥と娘香也とともに鞍馬山で静かに暮らしていた雨宮蔵人のもとに、吉良家の家人が訪れます。家人の主人を思う心に打たれた蔵人は、吉良左兵衛の配流先の諏訪へ向かい、次第に幕府の暗闘に巻き込まれます……。蔵人と咲弥の夫婦愛や武士らしい生き様に爽快感を覚えます。史実と虚構が融合して物語となり、上質なエンターテインメント小説に昇華する、そんな葉室ワールドが堪能できます。

8 大和維新
大和維新

植松三十里
新潮社
発売日:2018/9/21

♪ 堺県議のち大阪府議を務めながら私財を投じて故郷・奈良県の独立運動に尽くした、今村勤三の生涯を描いた長編小説です。明治の廃藩置県にともない廃県となった奈良県のため、勤三の命と誇りを懸けた独立運動に強い感動を覚えていきました。独立運動の中で、さまざまな人々に会って粘り強く交渉し、松方正義、伊藤博文、山県有朋ら、新政府の元勲たちとも対峙します。読みどころの一つです。

9 がいなもん 松浦武四郎一代
がいなもん 松浦武四郎一代

河治和香
小学館
発売日:2018/6/8

♪ 「北海道の名付け親」として知られる、松浦武四郎を描いた時代小説です。老境に入って益々精力的な武四郎が、絵師河鍋暁斎の娘・豊を相手に、少年時代からの破天荒な半生を回顧する形で綴られていきます。奇人ながらも、傑物で、周囲の人を惹きつけずにはいられない魅力的な人物、松浦武四郎の実像に触れることができる興味深い作品です。

10 火定(かじょう)
火定

澤田瞳子
PHP研究所
発売日:2017/11/21

♪ 天平の世、平城京を襲った天然痘によるパンデミックを描いた長編時代小説です。施薬院に勤務する官人の名代と元典薬寮の医師・諸男、二人の主人公を追っていくことで、次第に物語の世界に没入していけます。気が付くと、天平九年の平城京にいて、疫病が蔓延していく様にハラハラし、病に罹った人々を救う手立てはないのかヤキモキし、主人公の活躍にドキドキとしていきます。

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