岡っ引きと下っ引きをつとめる、娘二人の大江戸バディ捕物帖

『寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖』

寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖倉本由布(くらもとゆう)さんの文庫書き下ろし時代小説、『寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)を献本いただきました。

ライトノベルで活躍されてきた、著者は、2016年より時代小説『むすめ髪結い夢暦』シリーズを発表されています。

隔月偶数月に新刊を刊行している、ハヤカワ時代ミステリ文庫から、また、新しいタイプの時代小説がリリースされました。

札差の娘にして岡っ引きの薫と、同心の娘なのに薫の下っ引きをする芽衣はともに15歳。ある日、芽衣が長屋の前に捨てられた赤子を見つけ、ふたりで親捜しを始めると、長屋の夫婦が育てたいと申し出てきた。そんな折、ある札差で赤子の神隠しがあり、寝床には榎の葉が一枚残されていたという不思議が。まもなくその札差の丁稚が米蔵で男の骸を見つけるという騒動があり……。ふたりで謎を解き明かす、薫と芽衣の友情事件帖。
(カバー裏の内容紹介より)

本書は、札差の十五歳の娘、薫が岡っ引きをつとめ、北町奉行所の定町廻り同心見習い内藤三四郎の妹・芽衣がその下っ引きとして助けるという、ユニークな設定です。

三四郎としてもそんなつもりはありませんでしたが、たまたま芽衣と薫が出会い、仲良くなり、あれやこれやある中で、気が付けばこういうことになっていました。

「この薫さんが、その岡っ引きです」
「はい?」
「薫さんは蔵前の札差・森野屋さんのお嬢さんなのですが、私の兄の手先でもあるのです」
 芽衣は、自慢げに薫を紹介した。
「そして私は薫さんの下っ引き。私たちは十五歳の若輩者ではありますが、充分にお上のお役に立っているとの自信があります」
 
(『寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖』P.17より)

芽衣が、神田須田町の長屋に暮らす小間物売りの家の前に置き去りにされた、振袖に包まれた裸の赤ん坊を見つけて番屋に届けました。

一方、浅草御蔵の米蔵の間で、男の骸が転がっているのが今朝、見つかりました。
致命傷となったのは、ひどく殴りつけられた後頭部の傷ですが、顔がめちゃくちゃに潰されていて、身元が簡単にわからないような状態でした。

 薫と猫は、ここにふたりで暮らしている。けれど、仲は悪い。薫が一方的に猫から嫌われているのだ。
 びっくりするほど、どこもかしこも真っ白な猫だ。この猫を連れてきたのも芽衣だった。猫は、忌々しいことに芽衣にはとてもなついていて、薫に見せるのとは違う甘えたしぐさで近寄っていく。
 
(『寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖』P.30より)

十五歳の娘と思われないような行動力と洞察力、度胸を兼ね備えた捕物好きの薫と、同心一家に生まれ、世話焼きの芽衣が、友情を育みながら協力して、どのように事件の謎を解き明かしていくか、大江戸ガールズ捕物小説が楽しみです。

寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖

倉本由布
早川書房 ハヤカワ時代ミステリ文庫
2020年6月15日発行
本書は、文庫書き下ろし

カバーイラスト:あわい
カバーデザイン:大原由衣

●目次
第一話 御米蔵の殺人
第二話 ゆらゆら幽霊
第三話 薫さん、嫁にいく
第四話 薫と芽衣

本文318ページ

■Amazon.co.jp
『寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖』(倉本由布・ハヤカワ時代ミステリ文庫)
『ゆめ結び むすめ髪結い夢暦』(倉本由布・集英社文庫)

倉本由布|時代小説ガイド
倉本由布|くらもとゆう|ライトノベル・作家 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。共立女子大学文芸学部卒業。 1984年、『サマーグリーン/夏の終わりに……』で第3回コバルト・ノベル大賞に佳作入選。 2016年、時代小説「むすめ髪結い...