足軽大将茂兵衛は、家康から密命を受け敵地甲斐に決死の潜入

『三河雑兵心得(六) 鉄砲大将仁義』|井原忠政|双葉文庫

三河雑兵心得(六) 鉄砲大将仁義井原忠政(いはらただまさ)さんの文庫書き下ろし戦国小説、『三河雑兵心得(六) 鉄砲大将仁義』(双葉文庫)をご恵贈いただきました。

東三河の百姓出身の若者茂兵衛が家康の家臣の足軽となって、戦を通じて出世を重ねていく「三河雑兵心得」シリーズの第6巻です。
シリーズの魅力の一つに、足軽と呼ばれる雑兵(下級兵士)の視点から武士社会と戦国時代を描いていくところが挙げられます。

4年に及ぶ国境の砦番を解かれ、浜松城に呼び戻された茂兵衛。俸給も配下も増え、押しも押されもせぬ足軽大将となった。が、出世を喜んでばかりもいられない。本多平八郎からは「今後おまんは殿から徹底的にこき使われる」と脅かされてしまう。程なく、いよいよ武田の息の根を止めんと、信長の号令一下、甲州征伐が開始された。茂兵衛は、内応を密約した武田の重鎮、穴山梅雪の妻子を奪還するため、敵の本国である甲斐に潜入するように命じられる。戦国足軽出世物語、肝大心小の第6弾!
(カバー裏の内容紹介より)

天正八年(1850)九月。
植田茂兵衛は、信濃との国境を守る高根城番を解かれて、四年ぶりに浜松城へ呼び戻されました。
同じ鉄砲頭のままながら、鉄砲の数が五十挺に増えて、百人余りを率いる立場となり、立派な足軽大将です。俸給も二百五十貫(約二千五百万円)に加増されました。

「でものう茂兵衛。今回の人事を出世と無闇に喜ぶな。今後おまんは殿から徹底的にこき使われる覚悟をしておけ」
 と、盃を置いた平八郎が、真面目な顔で茂兵衛の目を覗き込んだ。
「こき使われますするか?」
「うん。使われる」

(『三河雑兵心得(六) 鉄砲大将仁義』P.11より)

家康の旗本先手役で、気の置けない朋輩の本多平八郎から、五十挺の鉄砲は二万五千石の領主の軍役に相当すると言われ、吝な家康がそれだけの数の鉄砲を預けるからには「茂兵衛組を便利使いしないはずがない」というのです。

茂兵衛は、すぐに、大久保忠世麾下の足軽大将として百名の鉄砲隊を率いて、遠江国内の武田側の拠点の一つ、高天神城攻めに駆り出されました。
兵糧攻めをする家康軍だが、信長からは「決して、高天神城の降伏を許すな」と厳命されていました……。

天正十年二月。
茂兵衛に新たな密命が下されました。

徳川方に寝返らせた、武田家屈指の重鎮の穴山梅雪のため、兵二百を率いて甲斐下山に潜行して、穴山氏館に軟禁されている梅雪の正室見性院と嫡男勝千代を奪還せよと。

梅雪は、江尻城主にあって武田家の駿河経営と、小田原北条との外交交渉を担当していました。「あの梅雪様でさえ勝頼公を見限った」となれば、武田家内で離反者が続出し、勝頼の命運は尽きると。

そして、見性院の侍女に、茂兵衛と因縁浅からざる女性・綾女が隠密として潜り込んでいました。

梅雪の寄騎となって、甲斐への決死の潜行を果たす茂兵衛。
綾女と再会できるのでしょうか。
無事に使命を果たすことができるのでしょうか。

今回も、茂兵衛の敵地での冒険をはじめ、読みどころ満載で、戦国エンターテインメントを堪能できました。

三河雑兵心得(六) 鉄砲大将仁義

井原忠政
双葉社 双葉文庫
2021年9月12日第1刷発行

カバーデザイン:高柳雅人
カバーイラストレーション:井筒啓之

●目次
序章 茂兵衛のけじめ
第一章 奪還! 高天神城
第二章 甲斐下山、穴山氏館
第三章 武田滅亡
第四章 本能寺
終章 命をあずける

本文277ページ

文庫書き下ろし

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『三河雑兵心得(一) 足軽仁義』(井原忠政・双葉文庫)(第1作)
『三河雑兵心得(二) 旗指足軽仁義』(井原忠政・双葉文庫)(第2作)
『三河雑兵心得(三) 足軽小頭仁義』(井原忠政・双葉文庫)(第3作)
『三河雑兵心得(四) 弓組寄騎仁義』(井原忠政・双葉文庫)(第4作)
『三河雑兵心得(五) 砦番仁義』(井原忠政・双葉文庫)(第5作)
『三河雑兵心得(六) 鉄砲大将仁義』(井原忠政・双葉文庫)(第6作)

井原忠政|時代小説ガイド
井原忠政|いはらただまさ|時代小説・作家 神奈川県鎌倉市在住。会社勤務を経て文筆業に入る。 ■時代小説SHOW 投稿記事 amzn_assoc_ad_type ="responsi...