スポンサーリンク

肩凝り将軍吉宗、江戸の湯屋で謎を解く。ユーモア小説第2弾

『いい湯じゃのう(二) 将軍入湯』|風野真知雄|PHP文芸文庫

いい湯じゃのう(二) 将軍入湯風野真知雄の時代小説、『いい湯じゃのう(二) 将軍入湯』(PHP文芸文庫)を紹介します。

肩凝りに悩まされる将軍徳川吉宗が、目安箱への投書をきっかけに、江戸市中の湯屋を訪れ、湯を堪能しながら謎を解く、ユニークな設定が光るシリーズ第2弾です。

目安箱への投書をきっかけに、徳川吉宗は身分を偽って町の湯屋を訪れる。温泉好きの吉宗は湯屋を堪能するも、なぜか市井で起こる謎を解決することに。一方、将軍お気に入りの熱海の湯は、山伏集団に襲われていた。お庭番・湯煙り権蔵とくノ一・あけびは、山伏らと戦いながらも、吉宗のかつての想い人の行方を追う。さらには「上さまの落とし胤」と噂される天一坊をめぐる陰謀が張り巡らされ……。ユーモア時代小説第二弾!

(『いい湯じゃのう(二) 将軍入湯』カバー裏の紹介より)

「将軍も江戸の湯屋に入ってみてはどうか」という目安箱への投書を目にした吉宗は、じっさいに湯屋へ赴くということから、家来たちはあらゆる事態に対処できるように、準備万端を整えることになりました。

ほめ殺しの老中水野忠之、おとぼけの老中安藤信友、ケチの勘定奉行稲生正武の、将軍お気に入りの三人組も、町の湯屋に入ったことがなく、頭を悩ませた末に、綿密な予行演習をすることになりました。

「われながら勿体ないとは思うのですが、この本丸の庭に〈富士乃湯〉を再現いたします。そこでしっかり稽古をしたうえで、じっさいの富士乃湯に行けば、つまらぬしくじりはしないで済むのではないでしょうか?」
「富士乃湯を再現!」
「それは大掛かりだな」
 稲生の策に、水野と安藤も驚いた。
 
(『いい湯じゃのう(二) 将軍入湯』P.13より)

湯屋の再現が了承され、大真面目にくつろぎの場である二階や湯屋の裏手の大きな釜まで再現するかどうかまで検討されるのが何ともおかしく、クスリと笑わされます。

吉宗は、江戸城の模擬富士乃湯を体験し、その三日後の巳の刻(午前十時)くらいに、常盤橋近くにある、本物の富士乃湯に入湯しました。

客たちとの交流を楽しみ、巷の湯屋を堪能した吉宗。
実に心地よく、大いに愉快で、近頃まれに味わう、気が清々するひとときでした。

「あ、青井さまじゃないですか。昨夜もここで、お噂をしていたんですよ。青井さまなら、また、この謎を解いてくださるに違ぇねえってね」
 丈次が、待ってましたとばかりにそう言った。
 吉宗は湯に身を沈めながら、
「なんじゃ。また、おかしなことが起きたのか?」
 と、訊いた。
「そうなんです。じつは昨夜、この湯舟のなかから小判が湧いたんですよ」

(『いい湯じゃのう(二) 将軍入湯』P.231より)

巷では青井新之助を名乗る吉宗は、町火消の纏持ちの丈次から、不思議な話を聞きました……。

第二巻では、肩こりに悩まされている吉宗が富士乃湯を堪能する話のほか、お庭番の湯煙の権蔵とくノ一のあけびは、吉宗の初恋の人の消息を尋ねて、紀州の龍神温泉に向かいます。

さらに、本書には、二代目村井長庵が登場します。
村井長庵は、大岡越前守の裁きを描いたといわれる「大岡政談」に登場し、娘を吉原に売った弟を殺害して金を奪い、その罪を患者の浪人者になすりつけるなど、悪の限りを尽くした人物。

悪漢・村井長庵を描いた時代小説には、筒井康隆さんの短編「村井長庵」(短編集『農協月へ行く』に収録)があります。
こちらもおすすめです。

いい湯じゃのう(二) 将軍入湯

風野真知雄
PHP研究所 PHP文芸文庫
2022年3月18日第1版第1刷

装丁:芦澤泰偉
装画:おとないちあき

●目次
第一章 湯屋の稽古
第二章 闇のなかの野望
第三章 将軍入湯
第四章 初恋の人
第五章 二人の娘
第六章 二度目の富士乃湯
第七章 善にも策略を
第八章 龍神の棲むところ
第九章 湯から小判が?
第十章 二代目村井長庵

本文274ページ

本書は2019年2月から2020年11月にわたって「河北新報」「新潟日報」「中国新聞」「福島民友新聞」「大分合同新聞」など各紙に順次掲載された作品を加筆修正したもの。

■Amazon.co.jp
『いい湯じゃのう(一)  お庭番とくノ一』(風野真知雄・PHP文芸文庫)
『いい湯じゃのう(二) 将軍入湯』(風野真知雄・PHP文芸文庫)
『農協月へ行く』(筒井康隆・角川文庫)

風野真知雄|時代小説ガイド
風野真知雄|かぜのまちお|時代小説・作家 1951年、福島県生まれ。立教大学法学部卒業。 1992年に、「黒牛と妖怪」で第17回歴史文学賞を受賞しデビュー。 2015年に、「耳袋秘帖」シリーズで第4回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を...