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凶悪な“髪切り魔”を捕まえろ!おけら長屋の面々が大活躍

『本所おけら長屋(十六)』|畠山健二|PHP文芸文庫

本所おけら長屋(十六)畠山健二(はたけやまけんじ)さんの人情時代小説、『本所おけら長屋(十六)』をご恵贈いただきました。

本所亀沢町にある、貧乏長屋「おけら長屋」の住人たちが巻き起こす、笑いと涙の珍騒動を描く本シリーズの最新刊第16巻です。
累計125万部突破という多くのファンをもつ人気シリーズです。

大人気の笑って泣ける時代小説シリーズ! 人情とお節介で名高い「おけら長屋」には、いつも騒動が舞い込んでくる。万造と松吉は記憶をなくした老人を“貧乏神”に仕立て上げ、金儲けを目論むが……「せいひん」。武病所が追う凶悪な“髪切り魔”が十年ぶりに現れた。次々と女が襲われるなか、聖庵堂のお満にも魔の手が。お満の危機に万造は……「くらやみ」など、爆笑&感動必至の四篇を収録。

(本書カバー裏の内容紹介より)

深川の霊巖寺の本堂に、三方に半紙に包まれた髪の束が七つと小判が三枚、何者かによって置かれていました。
その三両で髪の毛の主を供養してくれということでしょうか。

十年前、大川沿いの一体で女が殺される事件が起こっていました。
半年間で七人、いずれも絞め殺された上に、髪の卦を切られて持ち去られていました。

七人もの女を次々と殺した下手人は、“髪切り魔”と呼ばれ、江戸中を震撼させましたが、七人目の女が殺されてからは、姿を現さなくなり、事件はお蔵入りとなってしまいました。

ところが、つい最近、蛤町の雑木林で女の絞殺死体が発見され、死体は十年前の髪切り魔と同じように髪を切られていました。
十年前の事件も担当していた南町奉行所の同心、伊勢平五郎は、おけら長屋の島田鉄斎とお染、万造、松吉らに下手人探しを手伝ってくれるように依頼しました。

そんな折、万造と松吉、鉄斎は、女医者のお満が夜道で襲われて、聖庵堂に担ぎ込まれたという報せを受けました。
万造は話を聞き終える前に走り出して、聖庵堂に転がるようにして奥の座敷に走り込みました。

「ありがとう、来てくれて。私ったら、いつも万造さんを走らせてばかりだね」
「ああ、どこまでだって走ってやらあ」
 お満の目尻からひと筋の波だが流れた。
「怖かった……仙台堀近くの永堀町で往診した帰りに、突然後ろから首を絞められたの。声は出せなったけど、往診箱を落として大きな音がした。その音に気づいて近くの家から人が出てきた。気を失いかけたけど……。だれも出てきてくれなかったら、脇に引きずり込まれて殺されていたと思う」
 
(『本所おけら長屋(十六)』「その壱 くらやみ」P.53より)

連作スタイルの第一話の「くらやみ」は、サスペンスに満ちた捕物小説調で展開されていきます。

第三話の「せいひん」では、万造と松吉の万松コンビは、行き倒れで記憶をなくした老人を“貧乏神”に仕立て上げて、金儲けを目論みます。
万松のコミカルな破壊力が発揮されて、笑いながらホロリとくる、名人が語る落語のような人情噺を堪能できる一篇です。

 万造が老人に向かって手を合わせると、松吉も手を合わせた。
「わ、わしは、神様なのか……」
「そうです。あなたは神様です」
「何の神様じゃ」
 松吉は床に両手をついた。
「あ、あなた様は、び、貧乏神でございます」

(『本所おけら長屋(十六)』「その参 せいひん」P.197より)

笑って、泣けて、ジーンと胸に迫る。ハラハラもドキドキもスカッと痛快も詰め込んで、シリーズ16作目もその面白さは止まりません。

本所おけら長屋(十六)

畠山健二
PHP研究所・PHP文芸文庫
2021年4月6日 第1版第1刷

目次
その壱 くらやみ
その弐 ねんりん
その参 せいひん
その四 あいぞめ

本文316ページ

文庫書き下ろし。

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『本所おけら長屋(十六)』(畠山健二・PHP文芸文庫)

畠山健二|時代小説ガイド
畠山健二|はたけやまけんじ|時代小説・作家 1957年、東京都目黒区生まれ、墨田区本所育ち。 演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載など幅広く活動。 2012年、『スプラッシュ マウンテン』で小説家デビュー。 2013年、『本所...