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天保の改革の暗部を探る、女狂言師の活躍を描く

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杉本章子さんの『お狂言師歌吉うきよ暦』を読んだ。お狂言師とは、大名家の奥向きへあがって狂言を披露する者のこと。

ヒロインの歌吉こと、中橋広小路町にある駕籠屋赤松の娘・お吉は、京橋桶町で踊りの師匠をしている三代目水木歌仙に弟子入りしていた。美人の聞こえが高い歌仙は、本名を粂といい、娘の時分は、名女形の五代目瀬川路考に生き写しで、路考お粂と騒がれていた。四十路を迎えた歌仙は、尾張大納言家をはじめ、伊達家、藤堂家、毛利家などのお抱えのお狂言師としてご扶持を頂戴していた。以下は、歌仙が嫁入りする元弟子に語ったことば。

「お狂言師は、江戸の女役者ともてはやされるけれど、なに、お大名衆の奥御殿だけに咲く一夜かぎりのあだ花さ。きれいだけれど、しぼめがそれっきり……。おまえは亭主を持って、子を生んで、実のある花を咲かせればいいじゃないか」

(『お狂言師歌吉うきよ暦』P.215より)

物語は、その歌仙のもとへ六つの齢に弟子入りして、「仮名手本忠臣蔵」の立役の勘平で、お狂言師としての初舞台を控えた歌吉が、公儀の小人目付の日向新吾と岡本才次郎により、密偵を命じられるところから始まる。姉弟子の歌津代という名取が、榊原主計頭という七百石取りの旗本に妾として囲われている。主計頭は、日向らが仕えるお方と同役の目付ながら、妖怪こと、鳥居耀蔵らの仲間だという。歌吉は、その歌津代と付き合いを深めて、主計頭の汚職にかかわる手証をつかむように命じられた…。

お狂言師という芸道の世界に、公儀の暗闘を探るスパイものもつスリリングな展開が加わり、第一級のエンターテインメント時代小説になっている。嫉妬した相弟子に小鋸で頬に一生消えない傷をつけられながらも、けなげに芸にまい進する、主人公の歌吉の江戸娘の矜持が魅力的。歌吉の次なる活躍が読みたい。第二作『大奥二人道成寺 お狂言師歌吉うきよ暦』の文庫化まで待てそうにない。

大奥二人道成寺 お狂言師歌吉うきよ暦

大奥二人道成寺 お狂言師歌吉うきよ暦

おすすめ度:★★★★☆☆(★=20、☆=5)

現在の読みかけ:『柳生陰陽剣』(荒山徹著・新潮文庫)

柳生陰陽剣 (新潮文庫)

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