痛快無比の姫君小説、登場

米村圭伍さんの『おんみつ蜜姫』を読んだ。米村さんといえば、『退屈姫君伝』などの「めだか姫」がおなじみで、元気で破天荒な姫君を描かせたら当代一の時代小説家。今回は、『退屈姫君伝』よりも四十年ほど前の享保時代が舞台である。

おんみつ蜜姫 (新潮文庫)

おんみつ蜜姫 (新潮文庫)

退屈姫君伝 (新潮文庫)

退屈姫君伝 (新潮文庫)

『おんみつ蜜姫』の主人公は、豊後温水藩藩主・乙梨利重の末娘・蜜。幼いころからやんちゃでいたずら好き。江戸に連れて行ったらいかなる騒動をまきおこすかわからぬと心配した利重が「病弱で長旅には耐えられません」と幕府に断りを出し、温水にとどめたほど。そのため、年ごろになり、豊後の暴れ姫と恐れられた蜜姫は、父が刺客に襲われたのを機に、事件の背景を探りに自ら隠密となり、国を出奔することに…。

以降のハチャメチャなストーリー展開がなんとも面白い。海賊に襲われたり、岡山藩の御前試合に出場したり、武田家の財宝を探しに行ったり、エンターテインメントの要素が満載である。米村さんらしく全編ユーモアたっぷりの筆致の中で、時代考証もしっかりと押さえているところが、時代小説ファンにはうれしいところ。

蜜姫のじゃじゃ馬なキャラクターもいいが、その母親の甲府御前のとぼけた姫君ぶりも和める。新春にドラマ化してほしい作品である。