2020年文庫書き下ろし時代小説ベスト10、公開

師走になると、忠臣蔵

ジングルベルと第九のメロディーが聞こえてくる12月、師走になると、気になるのが「忠臣蔵」っていうのは、コテコテの時代劇ファン、時代小説好きくらいのものかなあ。そういえば、ジョン・レノンが射殺されたのも12月だった。ちなみに赤穂浪士討ち入りは元禄15年(1702)12月14日(旧暦)、レノンがマーク・チャップマンに撃たれたのは1980年12月8日。

毎年、この時期には忠臣蔵に関係した本を読みたいと思っている。今年は、森村誠一さんの『刺客の花道』を読んだ。この本は正確にいえば、忠臣蔵ものというよりは、忠臣蔵外伝といったところ。主人公の朽木主膳は、吉良家の用心棒ながら、正念場の赤穂浪士の討ち入り当夜、女のところで一夜を過ごし武士の面目を失った。死に損ねて女にも捨てられて自棄になった主膳は、賭場の主・小吉に拾われ、闇の刺客の道を歩き始めた……。

梶派一刀流、梶正左衛門から「吸い取りの剣」と評された秘剣をつかう剣客でもある主膳は、江戸の闇の顔役ながら義侠心をもった小吉の命で、天下の悪法、生類憐れみの令がはびこる元禄期を反映した悪を懲らしめるため、次々と強敵と闘っていく。主膳と同じように、快挙に乗り遅れ、世間の厳しい目にさいなまれる旧赤穂藩士たちが続々と登場するのも、忠臣蔵好きには興味を覚えるところか。

作者の森村さんには、独自の視点で正面から赤穂浪士討ち入り事件を描いた『忠臣蔵』や、吉良家の側から描いた『吉良忠臣蔵』など、読み応えのある忠臣蔵ものもある。こちらもおすすめだ。

刺客の花道 (講談社文庫)

刺客の花道 (講談社文庫)