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子供たちの転機と成長を見守る「髪結い伊三次」シリーズ13作目

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髪結い伊三次捕物余話 名もなき日々を2015年11月7日に、乳がんのため亡くなられた、宇江佐真理さん。『髪結い伊三次捕物余話 名もなき日々を』(文春文庫)は、作者の代表作であり、大人気シリーズの第13作目です。

絵師を目指す伊三次の息子・伊与太は師匠歌川豊光が亡くなった後、新進気鋭の歌川国直に弟子入りが叶い、ますます修業に身が入る。北町奉行所臨時廻り同心不破友之進の娘・茜は、奉公先の松前藩の若君・良昌から好意を持たれたことで、藩の権力抗争に巻き込まれていく。伊与太の妹・お吉も女髪結いの修業を始める。若者たちがそれぞれ新たな転機を迎える。

宇江佐さんは、1995年「幻の声」でオール讀物新人賞を受賞してデビューします。その後「髪結い伊三次捕物余話」シリーズとして連作化され、『幻の声』は第117回直木三十五賞候補となります。

第1作発表から20年以上が経過し、作品の主人公たちも作中で年齢を重ねて行っています。本書では、伊三次とお文の子供・伊与太とお吉、不破友之進といなみの子・茜といったように、子供たちの世代を中心に物語が展開していきます。

伊与太が弟子入りする絵師の歌川国直については、「別れ雲」(『桜花を見た』収録)という短編で取り上げています。この作品は「幻の声」発表の前の4年前に、オール讀物新人賞にノミネートされていて、思い入れのある人物のようです。本書では、宇江佐さんを追悼しつつ、若者たちがどのように成長していくのか、見守っていきたいと思います。

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『髪結い伊三次捕物余話 名もなき日々を』
『髪結い伊三次捕物余話 幻の声』
『桜花を見た』