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桃太郎と桃子に平穏な日々は訪れるのか、驚愕、感動の完結巻

『わるじい慈剣帖(十) うそだろう』|風野真知雄|双葉文庫

わるじい慈剣帖(十) うそだろう風野真知雄さんの文庫書き下ろし時代小説、『わるじい慈剣帖(十) うそだろう』(双葉文庫)を紹介します。

元目付で隠居の身の愛坂桃太郎は、息子が芸者・珠子に作らせた外孫の桃子の可愛さにメロメロ。孫可愛さのあまり、家を出て。孫と同じ長屋に引っ越して暮らすまでに。孫を溺愛するじいじが、市井の悪を斬る、痛快時代小説の第十弾。
残念ながら、今回が完結編となります。

仔犬の音吉を退け、久しぶりに愛する孫の桃子と思う存分に触れあうことができた愛坂桃太郎。しかし、そんな桃太郎のもとに、今度は刺客を放った黒幕である東海屋千吉が思惑ありげに訪ねてくる。江戸の町を取り巻く騒乱の元凶たる千吉との因縁に決着をつけないことには、真の平穏は訪れない。愛する孫が笑って暮らせる日常を取り戻すため、わるじいが一世一代の大勝負に臨む! 大人気時代小説シリーズ、感動の完結巻!

(『わるじい慈剣帖(十) うそだろう』本書カバー帯の紹介文より)

刺客の仔犬の音吉が捕まり、久しぶりに孫の桃子を連れて近所を散策している愛坂桃太郎は、大家の卯右衛門から、奇妙な話を聞きました。

「ところで、妙なことがありましてね」
「おいおい、イカがタコになったとか言い出すんじゃないだろうな」
 この大家の周辺では、しょっちゅう奇妙なことが起きるのである。
「そんなんじゃないんです。あたしがもらって育て始めたのは、一匹だけだったんですが、いつのまにか二匹、三匹と増え始めたんです」
「そんな馬鹿な」

(『わるじい慈剣帖(十) うそだろう』 P.11より)

卯右衛門が古びた大きな樽に入れて飼っていたタコが、桃太郎が数えると四匹に増えていました。自然に増えるわけがなく、誰かが入れたのでしょうか?
タコが増えても桃子に危険が及ぶわけがなく、首を突っ込む気がなかった桃太郎でしたが、事件は意外な展開を見せました。

ある晩、桃太郎が長屋で友人の朝比奈留三郎と将棋を指していると、やくざの東海屋千吉が突然訪ねて来ました。
千吉は仔犬の音吉を使って、桃太郎の命を狙ったことがありましたが、音吉は捕まっても何も吐かず、千吉の罪を問うことはできません。

千吉は、思惑ありげに桃太郎に腹を割って話したいと。

「東海屋。わしは、あんたに対して腹の中身など、なんにもないのだ。これは断じて、嘘偽りではない」
「そうですが。そのわりには、いくつかの謎を解かれて、愛坂さまがおられなければ、明らかにならなかったこともあるはずと聞いていますが」
 千吉の目が光った。
「それは、図らずも目の前で起きた謎を解いただけのこと。だいたい、わしはやくざの世界のことなど、なんの興味もない」

(『わるじい慈剣帖(十) うそだろう』 P.57より)

思惑ありげに単身で桃太郎に近づいてきた千吉。
自らをどんどん死に追いやる方へと突き進んでいくのか。
桃太郎は、孫との日常を守るため、やくざの抗争を抑えて江戸の平安を取り戻すために、町名主の喜多村彦右衛門と同心雨宮の上司の与力の松島に、ある案を提案しました。

本書は完結巻ということで、物語は一気に大団円へと向かっていきます。
著者らしいユーモアにあふれ、勧善懲悪の痛快な物語も本書で終幕を迎えます。

秘剣を編み出そうと剣の修練に取り組んでいた雨宮と桃太郎は、「最後に会得する剣捌きというのは、命を慈しむためのもの」と開眼します。
この剣捌きは、本シリーズのタイトルとなっています。

読後の快い余韻に浸りながら、わるじいの桃太郎と孫・桃子の話の新章の始まりを期待しながら、本を閉じます。

わるじい慈剣帖(十) うそだろう

風野真知雄
双葉社・双葉文庫
2022年11月13日第1刷発行

カバーデザイン:國枝達也
カバーイラストレーション:室谷雅子

●目次
第一章 増えるタコ
第二章 窓辺の男女
第三章 変な音の男
第四章 いい縁起売ります

本文239ページ

文庫書き下ろし。

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『わるじい慈剣帖(一) いまいくぞ』(風野真知雄・双葉文庫)
『わるじい慈剣帖(二) これなあに』(風野真知雄・双葉文庫)
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『わるじい慈剣帖(七) どこいくの』(風野真知雄・双葉文庫)
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『わるじい慈剣帖(九) ねむれない』(風野真知雄・双葉文庫)
『わるじい慈剣帖(十) うそだろう』(風野真知雄・双葉文庫)

風野真知雄|時代小説ガイド
風野真知雄|かぜのまちお|時代小説・作家 1951年、福島県生まれ。立教大学法学部卒業。 1992年に、「黒牛と妖怪」で第17回歴史文学賞を受賞しデビュー。 2015年に、「耳袋秘帖」シリーズで第4回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を...