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馬を自在に操り、凧作りが得意。岡っ引の痛快な活躍が始まる

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『岡っ引黒駒吉蔵』|藤原緋沙子|文春文庫

岡っ引黒駒吉蔵藤原緋沙子さんの文庫書き下ろし時代小説、『岡っ引黒駒吉蔵』を紹介します。

「黒駒の○蔵」と聞くと、清水の次郎長の好敵手として時代劇や股旅小説に登場する、侠客で尊皇攘夷派の志士でもある「黒駒の勝蔵」を想起します。

本書の主人公の黒駒吉蔵(くろこまのきちぞう)は、勝蔵とは関係がなく、甲斐国で黒駒を飼育している小さな牧で育ち、今は江戸に住む岡っ引です。『凧 黒駒屋』の主でもあります。

訳あって江戸で岡っ引をしている吉蔵は、元は甲斐国の生まれ。伝説の黒駒を乗り回し、本業のかたわら小さな「凧屋」を商う。ある日街なかを暴走する馬に咄嗟に飛び乗り騒ぎを治め、馬主の侍に怪我人がいないか調べるよう頼まれる。そして訪ねた小料理屋の板前・仙太郎が先日も肝をつぶす目に遭ったと聞き……。新シリーズ開幕!

(本書カバー裏の内容紹介より)

時代は文久元年(1861)秋。
吉蔵は、大伝馬町一丁目の大通りから南に入った横丁に『凧 黒駒屋』という小さな店を出しています。
店では、たてがみを靡かせて宙を飛んでいるような勇壮な真っ黒い馬の凧ばかりを扱い、店の屋号にもなっていました。

 茶の間に入って、吉蔵が神棚から十手を取り上げたその時だった。
「親分、大変だ!」
 家の中に駆け込んできた者がいる。
 金平という二十歳になったばかりの、吉蔵の手下だ。
 近くのおたふく長屋に、仕立物をする母親と二人暮らしだが、岡っ引になりたくて、吉蔵の手下にしてほしいと押しかけて来た男だ。
 
(『岡っ引黒駒吉蔵』P.15より)

金平が注進するには、近くにある初音の馬場から馬が逃げ出し、大通りをあっちに走り、こっちに走りと迷走していて、怪我人まで出ていて大変だと。

乗馬中に落馬して馬を暴走させてしまった侍から、吉蔵は、馬の暴走で怪我人がなかったかどうか調べてくれないかと依頼されました。

暴走した馬に蹴られそうになった老女を庇って怪我を負ったという小料理屋の板前、仙太郎に話を聞くと、五日前にも危ない目に遭ったと言います……。

少年時代に牧で暮らしていた吉蔵は、馬の世話や人に馴らすようにしつけることもでき、加えて御用聞きとしての腕も秀でていて、噂を耳にした甲府勤番支配だった坂崎大和守定勝の目に留まり、任期を終えて四年前に江戸に戻ってきた際に、坂崎家で中間として方向を始めていました。

その後、坂崎大和守の屋敷を訪れた、北町奉行所与力金子十兵衛に、江戸の岡っ引として働くことを勧められ、三年前から十手をもつことになりました。

本書には、暴れ馬をきっかけに探索を始める「第一話 凧たこあがれ」と、柳原土手で甘酒屋を営み、夜鷹たちに慕われている女主おていを描く「第二話 やぶからしのおてい」の二話を収録しています。

短編よりも文章量が多い中編が二話収録されていて、多彩な登場人物の紹介とともに吉蔵の捕物上手ぶりがじっくりと味わえる構成となっています。

旗本家での暮らしを経験した吉蔵が、町人と武家をつなぐ存在となっていて、人情味あふれる形で事件を解決していきます。読み味のよい捕物小説で、続編が待ち遠しくなりました。

岡っ引黒駒吉蔵

藤原緋沙子
文藝春秋 文春文庫
2022年1月10日第1刷

装画:蓬田やすひろ
装丁:野中深雪

目次
第一話 凧たこあがれ
第二話 やぶからしのおてい

本文284ページ

文庫書き下ろし。

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『岡っ引黒駒吉蔵』(藤原緋沙子・文春文庫)

藤原緋沙子|時代小説ガイド
藤原緋沙子|ふじわらひさこ|時代小説・作家 高知県生まれ。立命館大学文学部史学科卒業。 小松左京主宰「創翔塾」出身。脚本家を経て時代小説家に。 2013年、「隅田川御用帳」シリーズで、第2回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞。 時代小説S...