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隠居した大殿の面が割れたら、藩消滅!?高岡藩に新たな危機

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『おれは一万石 大殿の顔』|千野隆司|双葉文庫

おれは一万石 大殿の顔千野隆司(ちのたかし)さんの文庫書き下ろし時代小説、『おれは一万石 大殿の顔』(双葉文庫)をご恵贈いただきました。

本書は、崖っぷちの一万石小大名、下総高岡藩井上家に婿入りをした正紀の奮闘を描く文庫書き下ろし時代小説「おれは一万石」シリーズの第18巻です。
前作の『金の鰯』に続き、井上家の先代藩主正森が物語の鍵を握ります。

銚子の〆粕を巡る騒動の末、わずかばかりの利益を得た高岡藩。だが八月の参府の費用にはまだまだ足りず、正紀は再び金策に奔走することになる。一方、小浮森蔵こと高岡藩先代藩主井上正森と正紀たちによって企みを阻止された波崎屋の主五郎兵衛と銚子の郡奉行の納場帯刀は、復讐を果たすべく、小浮の正体を探り始める――。人気シリーズ第18弾!

(本書カバー裏の紹介文より)

寛政二年(1790)四月。
銚子の漁師、泰造は、鰯漁に出たところ、海上で侍と町人が乗った舟に襲われ、侍が抜いた刀で斬殺されました。死体を発見した漁師の末吉は銚子役所に知らせましたが、目撃者はない状態でした。

その日、高岡藩の世子井上正紀は、藩主正国の正室和と、妻女の京、江戸家老の佐名木源三郎ら一部の重臣と、井上家の菩提寺丸山浄心寺で先々代藩主正鄰(まさちか)の法要を行っていました。

その法要には、隠居した先代藩主の正森も深編笠姿で現れました。
正森は、正鄰の実弟で、兄の跡を継いで、高岡藩五代藩主となりましたが、三十年前の宝暦十年(1760)に五十一歳で隠居していました。
今は八十一歳で、病のため国許高岡で療養していると公儀に届け出ていました。

しかし、実際は小野派一刀流の達人で身体堅固。江戸には孫ほどの歳の女房代わりのお鴇、下総銚子には千代と世話をする女子がいて、江戸と銚子の間を単身で行き来していました。

 正森は、小浮森蔵と名乗って松岸屋の〆粕と魚油商いに関わっている。しかし小浮森蔵が井上正森であるとは、知らないはずだった。
「小浮森蔵が何者が、知ろうとしてつけてきて、浄心寺へ来たのか。あるいは他の意図があったのか、気になるところだな」

(『おれは一万石 大殿の顔』 P.29より)

前作で、〆粕魚油問屋・波崎屋と高崎藩郡奉行の納場帯刀のたくらみを阻止するのに活躍した小浮森蔵と松岸屋は、納場らの大きな怒りと恨みを買っていました。

小浮と松岸屋への遺恨を抱く敵は、卑劣な手段を講じて、高岡藩の最大の秘密である、大殿の正体を探ろうとします。

本来は国許の陣屋にいなければならない正森が、江戸と銚子を行き来しているという事実は、藩として極秘のことで、小浮森蔵が大殿正森であることも絶対にばれてはいけません。

今回も高岡藩に危機が迫り、ハラハラドキドキの展開に目が離せません。

ちなみに、高岡藩井上家の家紋は八つ鷹の羽車紋ということがわかりました。

 八つ鷹羽の家紋のついた提灯を下げている。調べれば分かることだから、これについては中間を責めるつもりはなかった。

(『おれは一万石 大殿の顔』 P.26より)


●井上家の人々
井上正紀:高岡藩井上家世子。美濃今尾藩竹腰家藩主睦群(むつむら)の弟
井上正国:高岡藩井上家当主。尾張徳川家八代藩主宗勝の十男
井上正森:高岡藩井上家先代藩主(五代藩主)
和:正森の娘で、正国の正室
京:正国の娘で、正紀の妻

おれは一万石 大殿の顔

千野隆司
双葉社 双葉文庫
2021年8月8日第1刷発行

カバーデザイン:重原隆
カバーイラストレーション:松山ゆう

●目次
前章 法事の客
第一章 〆粕商い
第二章 国許療養
第三章 探る若侍
第四章 顔見知り
第五章 祠の篝火

本文266ページ

文庫書き下ろし

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『おれは一万石 大殿の顔』(千野隆司・双葉文庫)(第18作)
『おれは一万石 金の鰯』(千野隆司・双葉文庫)(第17作)
『おれは一万石』(千野隆司・双葉文庫)(第1作)

千野隆司|時代小説ガイド
千野隆司|ちのたかし|時代小説・作家 1951年、東京生まれ。國學院大學文学部文学科卒、出版社勤務を経て作家デビュー。 1990年、「夜の道行」で第12回小説推理新人賞受賞。 2018年、「おれは一万石」シリーズと「長谷川平蔵人足寄場」シリ...