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日本政府とGHQの息詰まる攻防、日本国憲法の誕生秘話

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『ゴー・ホーム・クイックリー』

ゴー・ホーム・クイックリー中路啓太(なかじけいた)さんの昭和史小説、『ゴー・ホーム・クイックリー』(文春文庫)を入手しました。

日本国憲法の誕生の物語というと、2009年にNHKで放送されたテレビドラマ「白洲次郎」の白洲次郎さんが立役者として想起されます。
英語が堪能で、裕福な家庭で育ち、実業界に身を置いて商談で渡英することも多かった次郎は、GHQに「従順ならざる唯一の日本人」などと呼ばれてました。

本書にも、吉田茂の側近で、終戦連絡中央事務局参与の白洲次郎は登場します。

ドラマで次郎を演じたのが、先日大麻取締法違反で逮捕された伊勢谷友介さんでした。
白洲次郎もそうですが、演じる役柄は、彼でないと成立しないと思わせるものが多く、映像の中で異彩を放つ役者さんの一人です。
逮捕の報を聞いて、驚き、残念で、なんと愚かなと思いました。

終戦後の昭和二十一年二月、内閣法制局の佐藤達夫は突然、憲法問題担当大臣に呼び出された。新憲法の日本政府案をGHQとの折衝を命じられた彼は、白洲次郎らと不眠不休で任務に当たる――。日本国憲法の成立までを綿密に描く熱き人間ドラマ。
(本書カバー裏の紹介文より)

連合国軍最高司令官の総司令部(GHQ)は、ポツダム宣言の降伏条件にしたがって、政府に「民主化」を求めていました。

そこで、政府は明治二十二年(1889)の公布以来、一度も改正されていない帝国憲法に手を入れるため、昭和二十一年(1946)一月下旬、憲法問題調査委員会で憲法改正が話し合われました。

そして、委員長で国務大臣松本烝治の草案でまとまりましたが、その草案が毎日新聞にスクープされ世の中は大騒ぎになり、GHQにより憲法改正案は拒否されました。

二月二十六日、法制局で憲法改正を担当する官僚の佐藤達夫は、松本大臣より大臣室に突然呼び出されました。

「このあいだの憲法改正案のことだがね、総司令部に拒否された」
「拒否、ですか……」
「その代わりに、向こうはこういう案を寄越してきたんだ。『これに基づいて、至急に日本案を起草して持ってこい。字句の調整はしていいが、基本原則と根本形態は厳格に準拠してくれ』とのことだ」
 
(『ゴー・ホーム・クイックリー』P.27より)

GHQ案の内容と変てこな文章に唖然としている佐藤に、大臣は三月十一日までに、役所の部内に対しても厳重に秘密を守って、極秘で日本の法律らしくまとめることを命じられました。

 吉田は背を向けて、出口へ歩き出した。かと思えば、振り返る。
「ところで、GHQとは何の略だか知ってるかね?」
「GHQ? 総司令部ですか……General Headquaters……」
 質問の意図がわからず、戸惑いつつ佐藤はつぶやいた。
「違う。ゴー・ホーム・クイックリー(Go Home Quickly)だ。『さっさと帰れ』だよ」
 
(『ゴー・ホーム・クイックリー』P.57より)

ある日、総理大臣官邸の放送室に籠ってGHQ案をベースにした「日本政府案」の作成を続ける佐藤の前に、吉田茂外相がやってきて励ました。

ここ数年、日本国憲法の改正が盛んに叫ばれて、政治の世界を中心に議論も交わされています。
日本国憲法がどのように誕生したのか、そこに込められた関係者の思いとは?
日本人なら、もっと広く知ってもよいことと思いました。

ゴー・ホーム・クイックリー

中路啓太
文藝春秋 文春文庫
2020年9月10日発行

単行本『ゴー・ホーム・クイックリー』(2018年11月、文藝春秋刊)を文庫化したもの。

イラスト:遠藤拓人
デザイン:城井文平

●目次
第一章 放送室の面々
第二章 総司令部初訪問
第三章 ジェリービーンズ
第四章 天皇機関説の二人
第五章 憧れ
第六章 シビリアン
第七章 自己欺瞞
第八章 スノードロップ
解説 大矢博子

本文395ページ

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『ゴー・ホーム・クイックリー』(中路啓太・文春文庫)

中路啓太|時代小説ガイド
中路啓太|なかじけいた|時代小説・作家 1968年、東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を単位取得の上、退学。 2006年、『火ノ児の剣』で第1回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞し作家デビュー。 2015年、『もののふ莫迦』で...