戦国大友家を揺るがす御家騒動と重臣吉弘兄弟の義と愛を描く

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『大友二階崩れ』

大友二階崩れ赤神諒(あかがみりょう)さんの長編歴史小説、『大友二階崩れ』(講談社文庫)を入手しました。

著者は、法学博士、弁護士で、上智大学教授のかたわら、2017年に「義と愛と」(単行本刊行時に『大友二階崩れ』に改題)で、第9回日経小説大賞を受賞して、作家デビューしました。

天文十九年、九州の大国・大友家を揺るがすお家騒動が勃発した。当主・義鑑が嫡男・義鎮(後の宗麟)を廃嫡しようとした「二階崩れの変」である。権謀術数、保身、裏切り、野望が渦巻く政変の中で、ひたすら亡き前当主への義を貫こうとする吉弘鑑理と、弟鑑広の運命は……。日経小説大賞受賞の本格歴史小説。
(本書カバー裏の紹介文より)

「二階崩れの変」は、天文十九年(1550)に、豊後の戦国大名・大友家で起きた御家騒動のこと。当主の大友義鑑(よしあき)が嫡男の五郎義鎮(よししげ。後の宗麟)を廃嫡して愛妾奈津の子・塩市丸を世継ぎに据えようとして起きた政変です。

本書の主人公は、大友家の重臣吉弘左近鑑理(よしひろあきただ)と吉弘右近鑑広(あきひろ)の兄弟です。

「お気の毒な話よ。されど、左近。あの御館様がお許しになるまい。必ずや五郎様のお命を所望されようぞ」
 義鎮の実姉を妻とする鑑理は、義鎮の義兄にあたる。若い義鎮は昔から義鑑を怖れ、父との橋渡しを温厚な鑑理に頼んだものだった。もとより親が無辜の我が子の命を奪うなど、天道に背く所業である。
「何ら咎なき子を撃つは不義の極み。わしは何があろうと五郎様をお守りする。さようにお答え申し上げた」
 
(『大友二階崩れ』 P.12より)

鑑理は、廃嫡による身の危険を感じ取った義鎮から出家をしたいという話を伺い、義鎮をお守りするために、義鑑に翻意するように諫めますが、逆に義鎮を討つよう命じられてしまいます。

主命には逆らえず、懊悩しながらも兵を動かしますが……。

当主義鑑への「義」を貫こうとする鑑理に対して、弟の鑑広はひと目惚れした姫に「愛」を貫く漢でした。対照的ながら固い絆で結ばれた兄弟が描かれていきます。

著者は、『大友落月記』『大友の聖将』と、大友家を舞台にした三部作※を発表されています。
※「大友サーガ」は、その後さらに充実して6作となっています。(2020/8/22追記)

著者名の「神」は、正しくは「神(示+申)」ですが、環境依存文字のため「神」と表記しております。

大友二階崩れ

赤神諒
祥伝社 講談社文庫
2020年8月12日第1刷発行

単行本『大友二階崩れ』(2018年2月、日本経済新聞出版社刊)を文庫化にあたり、一部加筆修正したもの。

カバー装画:大竹彩奈
カバーデザイン:芦澤泰偉

●目次
第一章 大友二階崩れ
一、大友館
二、主命
三、貴船城
四、戸次川
五、先主の遺臣
六、二人の軍師
第二章 天まで届く倖せ
七、星野谷
八、天念寺
第三章 一本道
九、比翼の鳥
十、義と愛と
第四章 反転
十一、初めての嘘
十二、誰がために
第五章 鑑連の手土産
十三、秋百舌鳥
十四、義は何処にありや
解説 辻原登

本文340ページ

■Amazon.co.jp
『大友二階崩れ』(赤神諒・講談社文庫)
『大友落月記』(赤神諒・日本経済新聞出版)
『大友の聖将』(赤神諒・角川春樹事務所)

赤神諒|時代小説ガイド
赤神諒|あかがみりょう(赤神諒)|時代小説・作家1972年京都市生まれ。同志社大学文学部卒。法学博士、上智大学法科大学院教授。弁護士。2017年、「丹生島城の聖将」(単行本時のタイトル『大友の聖将(ヘラクレス)』)で第12回小説現代長編新人...