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名作『峠』で描かれなかった、河井継之助の生き様

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河井継之助 近代日本を先取りした改革者歴史家の安藤優一郎さんの歴史読み物、『河井継之助 近代日本を先取りした改革者』が日本経済新聞出版社から刊行されました。

安藤優一郎さんは、『西郷どんの真実』『「絶体絶命」の明治維新』『徳川慶喜と渋沢栄一』など、幕末維新に関する歴史読み物を多数著作されている歴史家です。

 戊辰戦争の引き金となった大政奉還つまり幕府が倒れるまで、継之助は長岡藩の経済官僚として財政再建に取り組み、藩政立て直しに邁進する。薩摩・長州藩に象徴されるように、藩政改革により長岡藩の富国強兵を推し進める。国際事情に通じた開明派藩士として、長岡藩が近代化の旗手となることを目指した。

(『河井継之助 近代日本を先取りした改革者』「エピローグ 河井継之助とは何だったのか」P.231より)

戊辰戦争において新政府軍と旧幕府軍の間で、武装中立という第三の道を選び、結果的に無謀な戦いへと長岡藩を率いた河井継之助(かわいつぎのすけ)。

司馬遼太郎さんの名作歴史時代小説『峠』で描かれたことで、悲劇のヒーローとして、全国的に知られています。『峠』のイメージが強すぎるせいか、他の作家に取り上げられることが少ないように思います。

本書『河井継之助 近代日本を先取りした改革者』は、歴史小説ではありません。継之助の日記や評伝、研究書などの参考文献をもとに構築された歴史読み物です。
幕末維新を俯瞰した視点から、継之助の真の姿を浮き彫りにしていきます。

継之助を、「少年の頃から、剛毅で向こう意気が強かった」「自分の信ずるところは決して曲げない性格」「納得しなければ容易には人に屈しない性格」で、徹底したリアリストと分析し、短期間で藩政改革を実行して、成果を挙げることができた理由としています。

 新政府軍は城下に火を放ちながら、城を目指す。城下を守っていた長岡藩兵は総崩れとなった。
 新政府軍の攻撃を防ぎきれないと判断した長岡藩は自ら城に火を放つ。藩主忠訓や前藩主忠恭は家族とともに領内の栃尾郷に落ちていった。藩士たちも屋敷に火を放ち、その跡を追うが、激しい市街戦も展開されている。戦場と化した城下の町人たちは逃げ惑った。 この日の戦いで、城はほぼ全焼する。城下も家中の屋敷四百九十二軒、足軽屋敷五百二十二軒、町家千四百九十七軒が焼失した。城下は灰燼に帰す。

(『河井継之助 近代日本を先取りした改革者』「(3)長岡城の落城と奪還」P.200より)

長岡城炎上、そして敗走の事実が淡々と綴られていきます。
簡潔な文章ゆえにイメージが広がり、せつない気持ちになっていきます。

さらに、戦争に巻き込まれた領内の農民による一揆や、恭順派の長岡藩士たちによる投降も描かれていて、興味深く読むことができました。

河井継之助に興味をもち、もっと歴史時代小説を読みたいという人には、秋山香乃さんの『龍が哭く』を紹介します。

◎書誌データ
『河井継之助 近代日本を先取りした改革者』
著者:安藤優一郎
カバーイラストレーション:茂苅恵
ブックデザイン:アルビレオ

出版:日本経済新聞出版社
1版1刷:2018年3月16日
1,800円+税
239ページ

●目次
プロローグ 河井継之助が目指したもの
1 越後長岡藩に生まれる――大望を抱く
(1)河井家の家庭環境
(2)長岡藩主牧野家
2 生涯の師と出会う――諸国を遍歴する
(1)苦い藩政デビュー
(2)江戸への再遊学
(3)陽明学者山田方谷の藩政改革
(4)生涯の師との日々
3 藩主牧野忠恭の信任を得る――国政に背を向ける
(1)外様大名の国政進出
(2)京都へ向かう
(3)長岡に帰国する
4 藩政改革に取り掛かる――経綸の才を発揮する
(1)長岡藩の財政窮乏
(2)郡奉行に就任する
(3)財政再建の背景
(4)軍備強化と禄高の平準化
5 動乱の地京都へ――火中の栗を拾う
(1)藩主を奉じて上方へ向かう
(2)御所に参内する
(3)鳥羽・伏見の戦い、そして江戸へ
6 藩政のトップに立つ――危機が迫る
(1)江戸大騒動
(2)長岡藩、藩地に引き揚げる
(3)家老に昇格する
7 総督として政府軍を迎え撃つ―判断を誤まる
(1)新政府軍、長岡を目指す
(2)小千谷談判の決裂と緒戦の勝利
(3)長岡城の落城と奪還
8 その後の長岡藩――相反する評価
(1)継之助、死す
(2)長岡藩改易と再興
(3)長岡廃藩と河井家再興
エピローグ 河井継之助とは何だったのか
河井継之助関係年表
参考文献

■Amazon.co.jp
『河井継之助 近代日本を先取りした改革者』(安藤優一郎・日本経済新聞出版社)

『峠』(上)(司馬遼太郎・新潮文庫)
『龍が哭く』(秋山香乃・PHP研究所)

河井継之助記念館|幕末の越後長岡の風雲児