2024年時代小説(単行本/文庫書き下ろし)ベスト10、発表!

【新着本】双葉文庫2025年6月発売の新刊。「関ケ原合戦」目前

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双葉文庫の2025年6月の新刊をご紹介します。
今月は、井原忠政(いはら・ただまさ)さんの『三河雑兵心得 関ケ原仁義(中)』と、坂岡真(さかおか・しん)さんの『はぐれ又兵衛例繰控(十一) 八丁念仏』の2冊が登場します。

『三河雑兵心得 関ケ原仁義(中)』は、関ケ原合戦に向けて準備を進める家康とその家臣団を描いた、シリーズ第16弾です。
『はぐれ又兵衛例繰控(十一) 八丁念仏』は、銘刀がもたらす災禍をめぐる、痛快時代小説シリーズの第11弾です。

『三河雑兵心得 関ケ原仁義(中)』

三河雑兵心得 関ケ原仁義(中) (双葉文庫)井原忠政
双葉社・双葉文庫

カバーデザイン:高柳雅人
カバーイラストレーション:井筒啓之

あらすじ
家康の危機を身を挺して救い、九死に一生を得た茂兵衛。ようやく傷が癒えたころ、会津征討の陣触れが諸大名に下されます。上杉景勝の戦支度を質した家康の書状に、家老・直江兼続が無礼千万な返書を寄こしたのです。
江戸を経て会津へ迫ろうとした矢先、石田三成挙兵の報が舞い込みます。家康は進軍を中止し、畿内に引き返して三成を討つことを決意します。茂兵衛率いる鉄砲百人組は、先鋒の福島正則、黒田長政らとともに東海道を西へ進軍。戦国足軽出世物語、いよいよ佳境の第十六弾です。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

ここに注目!
本シリーズの魅力は、歴史を動かす戦国武将ではなく、一人の雑兵を主人公に据えている点です。読者は主人公・茂兵衛の視点を通じて、歴史を追体験することができます。戦場の最前線で槍を振るう場面では、泥にまみれ、血と汗が飛び散る臨場感の中、敵と対峙する恐怖と興奮がリアルに伝わってきます。

また、主君の重大な決断がもたらす影響も、雑兵の立場から描かれることで、私たちにも身近な出来事として感じられ、戦国時代をよりリアルに体感できます。

文庫書き下ろし時代小説では、戦国時代を舞台にした作品はきわめて少なく、これは武将を主人公とした場合、その言動を史実に準拠させねばならず、物語としての自由度が制限されるためです。

その点、本シリーズのように雑兵に焦点を当てることで、史実の“余白”に創作の余地が生まれ、フィクションならではの魅力が加わります。

近刊では、主人公・植田茂兵衛が出世して鉄砲百人組の侍大将となり、家康との距離が近づいたことで、歴史の大局にも深く関わるようになってきました。史実との整合をどのように図りながら物語を紡ぐのか、今後の展開と作者の手腕に注目です。



目次
序章 直江状
第一章 上杉を討て!
第二章 茂兵衛、派遣される
第三章 竹ヶ鼻城の戦い
第四章 鎧袖一触
終章 小馬印

2025年6月14日 第1刷発行
本文268ージ

文庫書き下ろし

井原忠政|時代小説ガイド
井原忠政|いはらただまさ(経塚丸雄)|時代小説・作家神奈川県出身、神奈川県鎌倉市在住。会社勤務を経て文筆業に入る。2016年、経塚丸雄のペンネームで『旗本金融道(一) 銭が情けの新次郎』で時代小説デビュー。2017年、同作で、第6回歴史時代...

『はぐれ又兵衛例繰控(十一) 八丁念仏』

はぐれ又兵衛例繰控(十一) 八丁念仏 (双葉文庫)坂岡真
双葉社・双葉文庫

カバーデザイン:鳥井和昌
カバーイラストレーション:村田涼平

あらすじ
斬られた男が、八丁(約872メートル)も歩いたのちに両断されたという逸話を持つ銘刀“八丁念仏”。水戸家所蔵のこの刀が盗賊に奪われて以降、毎年の暮れに大名家の御金蔵破りが相次ぐようになりました。
その刀が質屋に持ち込まれたとの情報を得た又兵衛は、火盗改の鮫島らとともに、刀を預けた浪人を捕らえに向かいますが、その浪人はすでに屍となって発見されます――。
怒りに燃える又兵衛が許せぬ悪を影裁く、痛快時代小説シリーズ第十一弾です。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

ここに注目!
本書のタイトルの「八丁念仏」という銘刀にちなんだ話は、夜に念仏を唱えながら歩く僧侶を斬った男の逸話に由来します。袈裟斬りされた僧侶が、そのまま念仏を唱えながら八丁も歩き続け、やがて両断されて倒れたという伝説です。その斬った男は、織田信長に敵対し、石山合戦で名を馳せた「雑賀衆」の頭領・雑賀孫一であったとも言われています。

表題作はこの逸話をベースに、御金蔵専門の盗賊団と、病の母を抱えた貧しい夫婦の運命が交差する物語です。曰くつきの銘刀がもたらす禍と、それに挑む又兵衛の死闘に注目です。

また、又兵衛が家族と紅葉狩りに訪れた海妟寺での出来事を描いた「闇撃ち」、武骨で不器用な蹲踞(つくばい)同心の純愛を描く「つくばい」の2編も収録。蹲踞同心とは、奉行所の白洲で犯罪者や訴訟人の出入りを取り次ぐ役目の同心のことです。


目次
闇撃ち
つくばい
八丁念仏

2025年6月14日 第1刷発行
本文328ぺーじ
文庫書き下ろし

坂岡真|時代小説ガイド
坂岡真|さかおかしん|時代小説・作家1961年、新潟県生まれ。早稲田大学卒業。2022年、「鬼役」「鬼役伝」シリーズ(光文社文庫)、「はぐれ又兵衛例繰控」シリーズ(双葉文庫)で、第11回日本歴史時代作家協会賞「シリーズ賞」を受賞。■時代小説...