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温泉の露天風呂で密室殺人。温泉旅館の娘春菜が真相に挑む

『神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜2 湯煙の蹉跌』|鳴神響一|幻冬舎文庫

神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜2 湯煙の蹉跌鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし警察小説、『神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜2 湯煙の蹉跌』(幻冬舎文庫)をご恵贈いただきました。

女子高生と見まごう童顔の美人警察官、細川春菜が、捜査協力員=「ヲタク」の知識を借りて、不可解な殺人事件の謎を解く、警察小説シリーズの第2弾です。

県警刑事部の捜査指揮・支援センターに所属する細川春菜に捜査の応援要請が入る。ヤマは二ヶ月ほど前に温泉旅館で発生。被害者が露天風呂で全裸のまま凍死するという何とも奇妙な殺人事件。捜査一課の浅野が温泉宿の娘である春菜を見込んで依頼してきたのだが、二人が頼った「登録捜査員」(温泉ヲタク)は一癖も二癖もある人物ばかりで……。

(『神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜2 湯煙の蹉跌』カバー裏の紹介文より)

本書の主人公、細川春菜巡査部長が所属する、刑事部捜査指揮・支援センター専門捜査支援班は、各分野の専門知識を持っている専門家から、捜査の参考になる専門知識を収集するセクションです。

その中で、春菜が担当している登録捜査協力員は、神奈川県民で登録制の各分野のヲタクばかりです。

そんな春菜のもとを、捜査一課強行七係主任の浅野康長警部補が訪れてきました。
箱根の貸切露天風呂の脱衣小屋で、フリーのトラベルライター田丸が、全裸で凍死しているのが見つかるという奇妙な殺人事件で、二ヶ月以上経っても、地取りも鑑取りも成果なしで、解決への手掛かりが見出せない奇妙な事件でした。

「単刀直入に訊こう。今回の事件の全容を聞いて、温泉旅館の娘としてなにか気づいたことはないか」
 予想もしなかった質問だ。
「そんな無理ですよ。いくら温泉旅館の娘だといっても……」
 春菜がとまどいの声を上げると、康長はにやりと笑った。

(『神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜2 湯煙の蹉跌』P.29より)

富山県砺波市の庄川温泉郷の旅館の娘で、春菜が温泉について詳しいのではないかということと、温泉ヲタクの登録捜査協力員の協力が得られるのではないかということが、浅野の訪問の目的でした。

死んだ田丸は、ダイアリに「トマム」という謎の文字が残されていて、事件とのかかわりもありそうでした……。

「あら、浅野さん、箱根の温泉にいらっしゃるんですか?」
 大友が身を乗り出して訊いてきた。
「ああ、二月三日に起きた殺人事件の捜査で、仙石原温泉の貸切露天風呂の現場に行ってくるんだ」
 康長の言葉に大友は目を輝かせた。

(『神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜2 湯煙の蹉跌』P.35より)

専門捜査支援班の同僚で、工学系の学者担当の大友正繁巡査部長が、二人の温泉現場観察に協力したいと申し出ました。大友は大の温泉ファンで、箱根の温泉にも詳しいということで同行することになりました……。

春菜の同僚ながら、第1作では登場シーンが少なかった大友が、博覧強記ぶりと意外な行動で、今回は重要な役割を演じます。

大学でチアリーディング部だった春菜のアクションシーンも見逃せません。

本書を読むまでは、温泉ヲタクの世界を知りませんでした。鉄道ヲタクほど細かいジャンルに分かれていないが、入湯数ヲタク、成分ヲタク、効能ヲタク、秘湯ヲタク、野湯ヲタク、廃湯ヲタク、温泉史ヲタク、宿ヲタクなどがあるそうです。

今回のヲタクたちの温泉に関するうんちくを楽しみ、物語を読み進めて事件の真相に近付いていくとともに、コロナ禍でしばらく遠ざかっていた箱根の温泉へ行ってみたいという思いにも駆られました。

時代小説ファンが高じている私も、人から見れば、時代小説ヲタクと言われてもおかしくないので、「ヲタク」たちの存在に注目した、この警察小説シリーズには親近感と切なさを感じました。

神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜2 湯煙の蹉跌

鳴神響一
幻冬舎 幻冬舎文庫
2021年12月10日初版発行

カバーデザイン:舘山一大
カバーイラスト:田中寛崇

●目次
第一章 マーベラスなヲタク
第二章 温泉ヲタクたち
第三章 トマユの悲劇
第四章 箱根カルデラ劇場

本文286ページ

文庫書き下ろし

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『神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜』(鳴神響一・幻冬舎文庫)
『神奈川県警「ヲタク」担当 細川春菜2 湯煙の蹉跌』(鳴神響一・幻冬舎文庫)

鳴神響一|作品ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家 1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。 2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。 2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。 ■...