連続爆破事件に挑む夏希らに、新しい仲間、情報係美夕が加入

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『脳科学捜査官 真田夏希 ストレンジ・ピンク』|鳴神響一|角川文庫

脳科学捜査官 真田夏希 ストレンジ・ピンク鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし現代ミステリー、『脳科学捜査官 真田夏希 ストレンジ・ピンク』(角川文庫)をご恵贈いただきました。

本書は、神奈川県警で心理職特別捜査官をつとめる、真田夏希が難解な事件に遭遇して活躍する警察小説「脳科学捜査官 真田夏希」シリーズの第9弾です。

神奈川県の茅ヶ崎署管内で爆破事件が発生した。人的被害はなかったものの、直後に容疑者と思われる人物からSNSに犯行声明が出された。心理職特別捜査官の真田夏希は捜査本部に招集され、ネット上で容疑者との接触を開始した。以外にも、容疑者は夏希の呼びかけに反応するが……。一方、通信契約から容疑者に迫る加藤刑事たちは、該当人物に大きな違和感を覚えていた。一致しない犯人像と容疑者。夏希はその真相に迫る!

(本書カバー裏紹介より)

物語は、誘拐事件がとんでもない国際的な事件に発展してしまった事案の翌月に始まります。
その大事件については、前々作『デンジャラス・ゴールド』、前作『エキサイティング・シルバー』に詳述されています。

夏希は、茅ヶ崎警察署の「管内生産緑地爆破事件指揮本部」に招集されました。
事件は、警察署管内の人気のない畑地で夜間、玩具花火をもとにした簡易的な爆弾で、いたずら程度のものでしたが、犯行後すぐに犯人と思わしき者からSNSに脅迫メッセージが投稿されたことから、指揮本部の設置となりました。

 ――午後一〇時五分に高座郡寒川町倉見の畑地で小規模爆破を起こした。我々の目的を達成するため、これから県内の狙ったポイントで爆破を繰り返してゆく。これは警告である。警告はやがて明らかになる。 ハッピーベリー!

(『脳科学捜査官 真田夏希 ストレンジ・ピンク』P.22より)

犯人はなんらかの信念に基づき、目的遂行のために爆破を起こした確信犯でありながら、現場は畑地の隅でほとんど被害が出ておらず、メッセージも抽象的すぎるものとなっています。

ターゲットが明らかでないため、被害者の人間関係を洗い出して同期を持つ者を捜し出していく捜査である鑑取りも困難な状況。現場付近で不審者の目撃情報や被害者の争う声などをの情報を聞きまわる捜査、地取りも難航していました。

そんな指揮本部に、捜査一課情報係の巡査部長の別所美夕が派遣されて、夏希の助手につけられます。
秘書役兼雑用係をしながら、夏希のもつネット上の対話能力を学ばせようというのが、現場を指揮する一課長らの狙いです。

「正直言って捜査一課のそのあたりのノウハウはゼロに近い。SISの連中は、犯人との電話などのやりとりにはじゅうぶんな訓練を受けている。だが、メールやダイレクトメッセージなど、テキストベースでの対話にはいまだ習熟していないと言わざるを得ない。そこで、別所を真田につけて、少し勉強させようと思っているんだ」

(『脳科学捜査官 真田夏希 ストレンジ・ピンク』P.31より)

いまどきのアイドルっぽい顔立ちをした美夕が指揮本部に加わり、若者らしい物怖じしない性格で溶け込んでいくことで、物語は新しい味を醸し出していきます。

犯人の目的は何なのか?
夏希たちは、連続爆破事件を止められるのか?

著者の警察小説には、神奈川県内を舞台にしている作品が多いのですが、土地勘がないのでGoogleマップで、物語の舞台を辿りながら、妄想を膨らませながら読んでいます。
(時代小説を江戸切絵図をかたわらに置いて読むように)

茅ヶ崎というと海の町のイメージが強いですが、それだけでない、地元に生活する人の目線での別の面も描かれていて興味深いです。
著者の神奈川県愛が止まらない。

カバーを外した本紙表紙カバーを外すと現れる本紙の表紙デザインが少し変わっていたことに、今回初めて気づきました。(迂闊なことですが)

角川文庫の特徴だったざらつき感がある地色のピンク色が、薄いサーモンピンクに変わり、両側に並んでいた花のカットがセンタリングされていました。
目にもしっくりと馴染む、このデザイン変更を支持します。

脳科学捜査官 真田夏希 ストレンジ・ピンク

鳴神響一
KADOKAWA 角川文庫
2021年7月25日初版発行

文庫書き下ろし

カバー写真:Satoshi-K/ Getty Images
カバーデザイン:舘山一大

●目次
序章 函館の丘
第一章 ハッピーベリー
第二章 見えぬ正義
第三章 失ったこころ
第四章 新たな出発

本文265ページ

■Amazon.co.jp
『脳科学捜査官 真田夏希』(鳴神響一・角川文庫)(第1弾)
『脳科学捜査官 真田夏希 デンジャラス・ゴールド』(鳴神響一・角川文庫)(第7弾)
『脳科学捜査官 真田夏希 エキサイティング・シルバー』(鳴神響一・角川文庫)(第8弾)
『脳科学捜査官 真田夏希 ストレンジ・ピンク』(鳴神響一・角川文庫)(第9弾)

鳴神響一|作品ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。■時代小説SHOW 投稿...