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将軍暗殺計画を探る魚之進、大奥潜入で珍奇な料理に遭遇

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『潜入 味見方同心(三) 五右衛門の鍋』|風野真知雄|講談社文庫

潜入 味見方同心(三) 五右衛門の鍋風野真知雄さんの文庫書き下ろし時代小説、『潜入 味見方同心(三) 五右衛門の鍋』(講談社文庫)を紹介します。

捜査中に不慮の死を遂げた兄の跡を継いで、江戸市中の食いものの動向を探る「味見方同心」に就いた月浦魚之進の活躍を描く、ユーモア捕物小説シリーズ「潜入」篇の第3巻です。

大泥棒たちが集まる秘密の会。そこで供される「五右衛門鍋」は驚くほどうまいらしい。これはただの懇親会なのか? 自分を手伝っていた下っ引きの万吉殺害で、将軍暗殺計画の捜査は急務だが、会も探り始めた「味見方」魚之進。鍋から導き出した驚天動地の悪事とは? 極上の謎と珍味あふれるシリーズ第三弾。

(『潜入 味見方同心(三) 五右衛門の鍋』カバー裏の内容紹介より)

南町奉行筒井和泉守の命で、江戸城で起こった将軍暗殺計画を捜査すべく、岡っ引きの麻次と江戸城中奥の台所へ出入りをするようになった魚之進。
御膳奉行の社家権之丞より、大奥の御使番の女中、八重乃を紹介され、大奥の台所も見聞することとなりました。

美人の八重乃の案内で女の園へ足を踏み入れる魚之進は、女たちの匂いや声だけで酔ったみたいな心持になってしまいました。見分を終えてそそくさと退出する魚之進。

「大奥の女中はさすがにきれいなものですねえ」
 と、麻次は言った。
「そうだな」
「福が来るような匂いをさせてましたね」
「福が来るような?」
「言うじゃねえですか、福来たる香りって」
「それを言うなら、馥郁たる香りだろう。ま、福が来るようなのほうが面白いか」

(『潜入 味見方同心(三) 五右衛門の鍋』P.23より)

大奥で天にも昇るような気分になっていた二人ですが、廊下を歩く女中たちが口にした「あんこ豆腐、まだ来ないかしら」という言葉を耳に留め、あんこ豆腐とはなんなのか、味見方として興味がそそられ、独自の捜索を始めることにしました。

本シリーズの面白さは、風変わりな料理が次々に登場し、美味の裏に謎ありという恐ろしい事件に関わっていくストーリー展開にあります。

本書では、「あんこ豆腐」のほかに、将軍家斉の側近中野石翁の命でオットセイの睾丸の効能を調べる「海たぬき」の話、居酒屋の主が〆の自慢料理であるおじやを止めた真相に迫る「おやじのおじや」、表題作にもなっている大泥棒たちが集まる秘密の会で供される「五右衛門鍋」にまつわる奇談を収録しています。

珍妙なる料理に妄想と食欲をそそられ、漫才のようなユーモアあふれる掛け合いと極上の謎解きが堪能できる、江戸料理捕物帖です。

潜入 味見方同心(三) 五右衛門の鍋

著者:風野真知雄
講談社文庫
2021年2月16日第1刷発行
文庫書き下ろし

カバー装画:宇野信哉
カバーデザイン:芦澤泰偉

●目次
第一話 あんこ豆腐
第二話 海たぬき
第三話 おやじのおじや
第四話 五右衛門鍋

本文248ページ

文庫書き下ろし

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『潜入 味見方同心(一) 恋のぬるぬる膳』(風野真知雄・講談社文庫)
『潜入 味見方同心(二) 陰膳だらけの宴』(風野真知雄・講談社文庫)
『潜入 味見方同心(三) 五右衛門の鍋』(風野真知雄・講談社文庫)

風野真知雄|時代小説ガイド
風野真知雄|かぜのまちお|時代小説・作家 1951年、福島県生まれ。立教大学法学部卒業。 1992年に、「黒牛と妖怪」で第17回歴史文学賞を受賞しデビュー。 2015年に、「耳袋秘帖」シリーズで第4回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を、『沙羅...