「居酒屋ぼったくり」作者による、絶品料理時代小説、登場

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『きよのお江戸料理日記』|秋川滝美|アルファポリス文庫

きよのお江戸料理日記秋川滝美(あきかわたきみ)さんの文庫書き下ろし時代小説、『きよのお江戸料理日記』(アルファポリス文庫)を入手しました。

著者は、東京下町にある居酒屋を舞台に、おいしい食べ物と人々のふれあいを描いた連作小説『居酒屋ぼったくり』シリーズが人気。同作は、BS12(トゥエルビ)でテレビドラマ化もされています。

『きよのお江戸料理日記』は、著者の初の時代小説となります。

逢坂の油問屋の子として生まれたきよは、とある事情から屋敷の奥でひっそりと暮らしていた。そんなある日、弟の清五郎が問題を起こし、逢坂にいられなくってしまう。両親は清五郎を江戸にやることにしたが、きよも弟の世話係として共に行くことに。ふたりが向かう先は、父の知人が営む料理屋『千川』。そこで清五郎は配膳係として、きよは下働きとして働くことになったのだが、ひょんなことからきよが作った料理が店で出されることに……。
(本書カバー帯の紹介文より)

文政六年(1823)師走。
年が明けると数えで二十三になるきよは、三つ違いの弟清五郎と、深川佐賀町の孫兵衛長屋に暮らしていました。

清五郎は、夕食後に突然、座禅豆を食べたいと言い出し、しかもきよの手作りのがいいと、座禅豆にするぶどう豆を買いに飛び出しました。

清五郎は閉店間際の乾物屋に飛び込んだ際に、侍に左側からぶつかってしまいました。
末っ子で迂闊なところがある弟に、侍からお金を払えとか、お咎めがなかったのか心配になるきよは、出来事の経緯を聞き出しました。

「――正直におっしゃい。なにをやらかしたの?」
「それが……。そのお侍、俺がぶどう豆を買いに来たのを知って、おまえが煮るのかって訊いてきたんだ。だから俺、つい、そうだ、俺は料理人だからな、って言っちまった。そしたら、その豆を食わせろって。どうやらそのお侍も、座禅豆が食いたかったみたいで……」

(『きよのお江戸料理日記』 P.11より)

しかも、清五郎は姉弟が奉公している料理屋『千川』の料理人だと言ってしまいました。『千川』は、富岡八幡宮の参道にある、評判がよい、大きな料理屋で、二人は働き始めて一年足らず。
清五郎は、できた料理を運ぶだけで、家でも自分で豆を煮たことがありません。

そのお侍は、清五郎に座禅豆を屋敷に届けろ、座禅豆が気に入ったら許してやる。『千川』も贔屓にしてやると、脅していました。

困った清五郎は、きよの作った座禅豆を届けることにしましたが、騒動はそれで決着とはなりませんでした。

本書の面白さは、面倒見の良く万事控えめな姉きよと調子が良くて見栄っ張り、でも憎めない弟清五郎の姉弟が物語にしっかりと描かれていること、物語の読み味を良くしています。

上方の逢坂出身のきよが作る料理もきらりと光ります。
料理時代小説には関西出身のヒロインが多く、いずれも江戸で成功しているのがちょっと不思議です。

座禅豆って知らなかったのですが、この本を読んで作って食べてみたくなりました。

きよのお江戸料理日記

秋川滝美
アルファポリス アルファポリス文庫
2020年11月25日初版発行

Illustration:丹地陽子
Design Work:AFTERGLOW

●目次
座禅豆の柔らかさ
萌木色の味噌
雛の日に……
七夕のご馳走
きよの覚悟

本文359ページ

文庫書き下ろし

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『きよのお江戸料理日記』(秋川滝美・アルファポリス文庫)
『居酒屋ぼったくり(1)』(秋川滝美・アルファポリス文庫)

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