国家プロジェクト、平城京造営に挑む青年を描く歴史エンタメ

『平城京』|安部龍太郎|角川文庫

平城京安部龍太郎さんの長編小説、『平城京』(角川文庫)を入手しました。

最近、戦国や江戸から離れた時代を描いた作品にも意識的に目を向けるようにしています。“江戸脳”に凝り固まった頭を少し解きほぐし。柔らかくしていこうと思っています。
本書は、遥か昔の奈良時代の平城京造営プロジェクトを描いた歴史時代小説です。

遣唐大使に逆らった咎で都を追放されていた阿倍船人(あべのふなびと)は、兄・宿奈麻呂(すくなまろ)から重大な任務を告げられる。3年のうちに長安にも負けない新たな都を造営せよ――。
新都造営は朝廷の権力者・藤原不比等による権力掌握計画の一環だった。計画が失敗すれば一族の命運は絶たれる。困難を極める工事に、政敵からの妨害工作。数多の試練を乗り越え、船人は計画を完遂できるのか?
平城京造営に挑んだ青年の姿を描く、規格外の傑作歴史長篇。

(本書カバーの紹介文より)

蝦夷平定に貢献し、白村江の戦いでは敗れた、水軍の将、阿倍比羅夫(あべのひらふ)を父に持つ船人は、二十二歳にして遣唐使船の船長に抜擢されました。

しかし、遣唐大使の粟田真人の命に背き、故障と称して勝手に船を港に引き返したという理由で、船人は腕に十文字の焼印を入れられて都から追放されていました。

五年が経った、慶雲四年(707)、難波・草香津(くさかのつ)の棟梁・草香蔵道の家で無聊を囲っていた船人のもとに、比羅夫の嫡男で異母兄の宿奈麻呂が訪れました。

宿奈麻呂は、奈良山のふもとに新たに都を造ることになったことを告げました。
都の中心に王宮を配した、今の藤原京は、唐にならった国造りをしているとは言うことができず、唐との和を図っていくには不都合がある、という粟田真人の奏上に、朝廷第一の実力者である藤原不比等はじめ、高位の者たちの賛成が多く、遷都すべしということになり、前の天皇もこれを認めたといいました。

「そこでこのわしに、造営の司をつとめるように内示があった。しかも三年後の春までに遷都できるよう、大枠だけで造り上げよというお申し付けだ」
「長安のような都を、たった三年で」
「いや、正味二年だ。工事にかかるのは、来年の春からになるであろう」
「そんなことが、本当にできるのでしょうか」
「やらねばならぬと、不比等さまがおおせなのだ。我が阿倍家にとっても、白村江での父の失策を挽回するまたとない機会となる」

(『平城京』 P.26より)

宿奈麻呂は、船人に現場の指揮をとってくれるように頼みました。

都を造るので手を貸せと言われても、今さら朝廷のために働く気にはなれず、世を拗ねたような日々を送っていた船人でしたが、やがて大役を引き受けることになりました。

しかし、建都に携わるようになると、無理な納期、立ち退き交渉、妨害工作と次々に難題が降りかかってきました。
そして、遷都に反対する勢力との対決へ。

プロジェクトX的な面白さと、息もつかせない展開で、古代史が苦手な私も大いに楽しめる歴史エンタメです。

平城京

安部龍太郎
KADOKAWA・角川文庫
2021年2月25日初版発行

カバーイラスト:ヤマモトマサアキ
カバーデザイン:原田郁麻

●目次
第一章 新しい都
第二章 建都の計画
第三章 新たな指令
第四章 葛城一族
第五章 見えざる敵
第六章 帝の行幸
第七章 奈良山の激闘
第八章 百済の泊
第九章 天智派対天武派
第十章 鳥部谷
第十一章 即身仏
第十二章 大極殿
エピローグ
解説 大矢博子

本文445ページ

単行本『平城京』(KADOKAWA・2018年5月刊)を文庫化したもの。

■Amazon.co.jp
『平城京』(安部龍太郎・角川文庫)

安部龍太郎|時代小説ガイド
安部龍太郎|あべりゅうたろう|時代小説・作家 1955年、福岡県生まれ。 1990年、『血の日本史』でデビュー。 2005年、『天馬、翔ける』で第11回中山義秀文学賞受賞。 2013年、『等伯』で第148回直木賞受賞。 ■時...