「庭」に秘められた不思議と悲しみを、庭師の娘が解きほぐす

『鬼呼の庭 お紗代夢幻草紙』|三好昌子|PHP文芸文庫

鬼呼の庭 お紗代夢幻草紙三好昌子(みよしあきこ)さんの文庫書き下ろし時代小説、『鬼呼の庭(おによびのにわ) お紗代夢幻草紙』(PHP文芸文庫)を入手しました。

著者は、2017年、『縁見屋の娘』で第15回『このミステリーがすごい!大賞』優秀賞を受賞してデビューし、『むじな屋語蔵 世迷い蝶次』をはじめ、江戸時代の京都を舞台にした、時代小説を次々と発表している、気鋭の作家です。

幕末でない京都を描いた時代小説は、多くないので惹かれます。

庭師「室藤」は、薬種問屋から、暴風雨で荒れた庭普請の依頼を受ける。職人たちの世話をする、室藤のお紗代はある日、垣根で隔てられた今は使っていない離れの庭から、子供の声がすることに気がつく。つられて足を運ぶと、そこには真っ赤な鶏頭の花が咲き乱れていた……。家族の確執から遺った念、紛れ込んだあやかしなど、庭に関わる不思議な事件を、お紗代が解決する感動の時代小説。
(カバー裏の内容紹介より)

時代は、明和五年(1768)八月。
庭師「室藤(むろふじ)」の十八歳になる娘・お紗代が主人公です。
小さなころから、お紗代は人よりも霊感が強く、よく誰かに呼ばれることがありました。
薬種問屋の下鴨村にある寮が暴風雨で荒れたため、「室藤」に庭普請の依頼があり、お紗代は、職人の清造、孝太、庄吉とともに手伝いに行きました。

夕暮れ近くなり、皆が片付けを始めたときに、お紗代はどこからか子供の声を聞きました。声は垣根で隔てられた寮の離れ屋から聞こえてきました。

「きっきり舞うて来い」
 突然、鶏頭の茎が揺れて、子供の声が近くで聞こえた。
「きっきり舞うて、こう」
 驚くお紗代の眼前で鶏頭の群れが左右に割れ、子供の顔が覗いた。
 頭の上に髷を乗せた、十歳かそこらの男の子だ。再び、「きっきり舞う、きっきり舞うて来い」と言って姿を消した。
 
(『鬼呼の庭 お紗代夢幻草紙』P.21より)

「きっきり舞う」は、逃げる子供たちを一人の鬼の役の子供が追っかけて捕まえる子供の遊び、鬼ごっこです。
お紗代は、満開の鶏頭(ケイトウ)の花で埋め尽くされた離れ屋の庭で、子供に出会いました。

それは不思議なお話の始まりです。

このお話のタイトルに使われた「韓藍(からあい)」は、鶏頭の古名です。
色彩豊かな京都の自然の美しさの中で、悲しくも優しさに満ちた物語が綴られていきます。

鬼呼の庭 お紗代夢幻草紙

三好昌子
PHP研究所 PHP文芸文庫
2020年11月19日第1版第1刷

装丁:こやまたかこ
装画:加藤木麻莉

●目次
其の一 韓藍の庭
其の二 時迷の庭
其の三 人恋の庭
其の四 魂消の庭
其の五 鬼呼の庭
其の六 言祝の庭

解説 高橋敏夫

本文322ページ

「韓藍の庭」(PHP文芸文庫『もののけ』所収。それ以外は書き下ろし

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『鬼呼の庭 お紗代夢幻草紙』(三好昌子・PHP文芸文庫)

三好昌子|時代小説ガイド
三好昌子|みよしあきこ|時代小説・作家 1958年、岡山県生まれ。 嵯峨美術短期大学洋画専攻科卒業。 『京の縁結び 縁見屋の娘』で、第15回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、2017年にデビュー。 ■時代小説SH...