用心棒真一郎に人殺しの疑い。浅草六軒長屋の仲間たちが奔走

『江戸は浅草3 桃と桜』|知野みさき|講談社文庫

江戸は浅草3 桃と桜知野みさきさんの文庫書き下ろし時代小説、『江戸は浅草3 桃と桜』(講談社文庫)を入手しました。

江戸・浅草六軒町にある「六軒長屋」は、銀座町の両替商を隠居して浅草に引っ越した久兵衛が家主兼大家をつとめる長屋です。

久兵衛の用心棒兼雑用係の真一郎、小柄童顔の笛師・大介、面打師で日中は矢場で矢取り女として働く出自不明の美女・多香、盲目の胡弓弾きの鈴、錠前や鍵作りだけでなく開錠もする錠前師・守藏といった、一癖も二癖もある住人が住んでいます。

橋場町の川沿いで猫の桃を探していた真一郎に人殺しの疑いがかけられた!? 番屋に囚われるなか、疑いを晴らすべく仲間と奔走する(「桃と桜」)。矢師兼用心棒の真一郎や笛師の大介、謎めいた美女・多香など、江戸下町の人情と色恋が事件となって顔を出す――。共感必至の筆致で描かれる人気時代小説シリーズ!

(『江戸は浅草3 桃と桜』講談社文庫 表紙カバー裏の紹介文より)

久兵衛と久兵衛が浅草今戸町の別宅に囲っている梅が、飛鳥山へ花見に行くというので、真一郎は梅の飼い猫の桃の世話を頼まれました。

六尺を超える大男の真一郎ですが、犬猫には何故かもてて、三毛の雌の桃にも気に入られていました。

猫守の手間賃は一日一朱(一両の1/16、約四百文)で、振り売りの一日の売り上げの1/3ほどですが、暮れ六ツから明け六ツまで桃の面倒をみて、昼間は自由にでき、別宅にある米、味噌、鰹節、煮干しは食べ放題です。

三日間のお気楽な「猫守り」のはずが……。

「いい日和だな」
「にゃあ」
「煮干しもうめぇや」
「にゃあ」
 桃と煮干しを分け合いつつ、真一郎はのんびりと黄表紙を繰った。
 やがて傍らで寝入った桃につられるように、真一郎も舟を漕ぎだしたのだが――
「てっ!」
 思い切り胸を蹴られて真一郎が飛び起きると、庭に飛び出す桃の背中が見えた。

(『江戸は浅草3 桃と桜』P.24より)

突然逃げ出した桃を探しに出た真一郎は、橋場町の川沿いで人が突っ伏しているのを見つけて、駆け寄って抱き起したところ、「人殺し!」の声がかかりました。あれよあれよという間に、真一郎に人殺しの疑いがかかり番屋に行く羽目になりました。

番屋に囚われる真一郎の嫌疑を晴らすために、六軒長屋の仲間たちが奔走します。

思いがけない展開に、ハラハラドキドキが楽しめて、おなじみの六軒長屋の住人たちの活躍が痛快のシリーズ第3作。
今回は、江戸の女らしい情と凛とした美しさをもつ多香と鈴に注目して読みたいと思います。

江戸は浅草3 桃と桜

知野みさき
講談社 講談社文庫
2020年10月15日第1刷発行

カバー装画:村田涼平
カバーデザイン:岡孝治

●目次
第一話 桃と桜
第二話 花残月
第三話 掏摸たち
第四話 青行灯

本文442ページ

文庫書き下ろし

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『江戸は浅草』(知野みさき・講談社文庫)
『江戸は浅草2 盗人探し』(知野みさき・講談社文庫)
『江戸は浅草3 桃と桜』(知野みさき・講談社文庫)

知野みさき|時代小説ガイド
知野みさき|ちのみさき|時代小説・作家 1972年生まれ。ミネソタ大学卒業。現在はバンクーバー在住、銀行の内部監査員を務める。 2012年、『鈴の神さま』でデビュー。同年、『妖国の剣士』で第4回角川春樹小説賞受賞。 ■時代小説SH...