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江戸時代の京をガイドする時代小説―公事宿事件書留帳

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8月に京都に行ってから、断続的に澤田ふじ子さんの「公事宿事件書留帳」シリーズを読んでいる。第十三巻の『雨女』を読み終えた。このシリーズの魅力のひとつに、京の地理や町の成り立ちから、江戸時代の文化、人々の生活、風習まで、物語の中で興味深く読者に教えてくれることがあげられる。

雨女―公事宿事件書留帳〈13〉 (幻冬舎文庫)

雨女―公事宿事件書留帳〈13〉 (幻冬舎文庫)

『雨女』に収録された「牢屋敷炎上」は、六角牢屋敷に収監された罪人たちの解き放ちを題材にした人情話であるが、ここでも天明八年正月の発生した天命の大火のことに触れられている。四条堺町東入ルに住んでいた有名な画家・円山応挙が焼け出され、五条・鴨東の喜雲院に、高弟の松村呉春と同居を余儀なくされたことが紹介されている。

 長坂口のお土居の辺りは、京の町より相当高い位置になり、町並みが一望の許に見下ろせる。

 お土居のすぐ近くに、徳川幕府の手で営まれる公儀の「鷹峰薬園」があった。

 この鷹峰薬園の創設は寛永十七年(一六四〇)。医官藤林家によって代々維持され、明治維新までつづいた。

(『雨女』「冥府への道」P.191より)

江戸の「小石川薬園」についてはよく知られているが、鷹峰薬園のことはこの本で初めて知った。

この作品集には、「牢屋敷炎上」「京雪夜揃酬(きょうのゆきよそろいのむくい)」「幼いほとけ」「冥府への道」「蠎の夜(うわばみのよる)」「雨女」の6編を収録している。

――小さなことでもなんでもかまへん、世の中の人がよろこぶええことをうちらがしてたら、お父はんはそのうちきっと家に戻ってきはる。

「幼いほとけ」では、家を空けっぱなしのやくざな父親をもつ少年・清助が母親から言い聞かせられていることばを信じて、善行を重ねる姿が描かれている。清助のけなげさと無垢な純真さに胸を打たれる。このシリーズでは、われわれが忘れている、真っ当な人としての振る舞いや温かい人情に触れられて心地よい感動を覚える。